＜堀山の尾根道の紅葉＞
山麓の紅葉と富士山が素晴らしい丹沢；塔ノ岳（今年24回）
（単独山行；花立山荘まで）
２０１５年１１月２１日（土） 晴
■２週間振りの塔ノ岳
毎週土曜日には塔ノ岳に出掛けるようにしているが，先週土曜日はあいにくの雨のために塔ノ岳に出掛けるのをサボってしまった．
このところ雨の憂鬱な日が続いているが，今日から始まる3連休は，今日，土曜日だけが晴で，明日の日曜日と祝日の月曜日のお天気は思わしくないとのことである．
”ならば，今日，出掛けるしかない…”
ということで，2週間ぶりに，塔ノ岳に出掛けることにする．
やっと右膝のリハビリ期間の終末期を迎えている私は，外傷はほぼ癒えたものの，約半年間のブランクの間に体力の減退は覆うべくもない．最近は，何とか塔ノ岳山頂まで登れるようになったものの，渋沢から塔ノ岳山頂までの所要時間は3時間10分から3時間30ほども掛かる始末である．怪我をする直前まで2時間40分前後で登っていたので，その差は歴然たるものがある．
そうは言っても，ただでさえ加齢による体力減退も甚だしく，私の前途には言いしれぬ暗雲が垂れ込めている．こんな暗雲を少しで吹き飛ばすために，今日は是非とも塔ノ岳詣でをしなければならない．でも，例によって，家を出発するまでには，何時ものように，”行く”，”行かない”の葛藤を何回も繰り返してから，4時10分，漸く自宅を出発する．
大船駅までの道のりは山下りで約40分．さすがにこの時期になると辺りは真っ暗．つい先日まで細々と啼いていたコーロギの気配ももう全くない．
何時ものように大船5時10分発東海道本線下り1番列車に乗車する．これまでは小田原に着く頃には明るくなっていたが，今は真っ暗．小田原で小田急電鉄の電車に乗り換え，電車が新松田に到着する頃，ようやく東の空が明るくなり始める．
■今日のバスは大混雑
渋沢駅で大倉行のバス乗り場に向かう．
何時もの土曜日だと，私が列の前から2～3番になるが，今日はどうしたことか10人目ぐらいである．今日は登山者が随分と多そうである．そういえば，下りの東海道本線の電車も，いつになく混雑していた．
バス待ちの列は，これまで経験したことがないほど，長くなっている．私は7時45分発臨時バスに乗車する．勿論，超満員である．定時のバスで来られた方の話を伺うと，乗り切れなくて，次のバス待ちになった方々も沢山居たとのこと．
「こんなに混雑するには初めての経験だ…」
とその方は言っておられた．
■バス停近くの紅葉
7時10分，私は一人で歩き出す．
最近の私の体力では，到底常連の皆様と一緒には登れないからである．歩き出して早々に，今日は，やっぱり自分の身体が何時もより重いことに気がつく．
”今日は無理しないようにしよう…大倉から歩き出して3時間10分で塔ノ岳山頂まで到着できそうもないときは，途中から下山しよう”
と心に決める．今の私には，絶対に無理は禁物だからである．
気温はこの時期にしては随分と高そうである．でも，久々の天気で太陽が眩しいので気分は晴れやかである．
歩き出して早々に．沢山の登山客に追い抜かれる．
大倉バス停付近の紅葉も色付き始めたが，見頃を迎えるのはもう少し先のようである．
この辺りの標高は約290メートル．それでも，鎌倉の最高峰，大平山より約150メートルも標高が高い．大倉の紅葉を見ても，鎌倉の紅葉が見頃を迎えるのは，まだまだ先になることが容易に想像できる．
＜バス停大倉付近の紅葉＞
■観音茶屋
今日は身体が重いので，どうも気勢が上がらない．私は自分の体調に逆らわずに，歩行速度を一段と遅くする．
沢山の登山客に追い抜かれながら，7時53分，ようやく観音茶屋を通過する．観音茶屋前のベンチでは沢山の登山客が衣服調整をしている．
観音茶屋周辺の紅葉も，少し色付きはじめた程度である．
＜観音茶屋＞
■見晴階段
観音茶屋から先はジグザグの登り坂になる．昨日までの雨のために，路面は濡れていて滑りやすくなっている．
7時56分，雑事場ノ平を通過する．ここのベンチも休憩を取る登山者で一杯である．
7時58分，見晴茶屋に到着する．繁茂するススキの向こうに相模湾が見えている．
すぐに見晴階段に差し掛かる．
例によって定点観測の写真を撮る．階段を見上げると登山客が数珠繋ぎになっているのが見える．明るい日光が木の間を通して真横から射し込んでいる．
階段を少し登ったところで，ＴＧさん，ＳＳＫさん，ＴＮさんの3人の常連に追い越される．
「…今日は3時間ぐらい…？」
とＴＧさんが私に話しかける．
「…3時間10分位を目標にします…」
と一応返事する…が，こんな体調では，果たして山頂まで行けるかどうか分からない．
＜見晴階段＞
■モミジ坂の紅葉
見晴階段を登り切ってモミジ坂に差し掛かる．この辺りの紅葉は，大分綺麗に色付き始めたところである．
モミジ坂は結構長い登り坂である．今の私には登り続けるのが結構シンドイ．そこで私は，色付き始めた紅葉を楽しみながら，超ユックリペースで登り続ける．
＜モミジ坂の紅葉＞
■一本松の紅葉
8時16分，ようやく一本松を通過する．大倉からの所要時間は1時間06分．この頃，一本松まで1時間で登れなくなったのが寂しい．私がもっとも元気だった頃は，1時間で小窓メチャｙまで登っていたのに…今はこの体たらくである．
一本松近くに見事に紅葉し始めた紅葉がある．すかさず，立ち止まって写真を撮る．
＜一本松の紅葉；右下に一本松の道標が見える＞
■駒止階段
8時28分，駒止階段に差し掛かる．
毎度のことながら，この階段に差し掛かると，ため息が出る．
”これ登るの…”
と．特にからだが重い今日はなおさらである．
私は疲れないように細心の注意をしながら，一段，一段，実にゆっくりと登り続ける．
8時33分，漸く駒止茶屋を通過する．大倉からの所要時間は，1時間23分．この自分の足の鈍さに，正直，言葉もない． 
＜駒止階段＞
■久々の富士山
堀山の尾根道に差し掛かる．ここまで登ると気分も晴れ晴れとしてくる．ここの平坦な道は，リラックスした気分で歩くことができる．大倉尾根の魅力はここにあると言っても過言ではないような期がしている．逆に，この尾根道歩きの楽しさがあるから，駒止階段を登る気になるとも言えそうである．
8時43分，富士山が良く見える場所に到着する．今日は，久々に富士山が良く見えている．早速，富士山の写真を撮るが，どうも富士山がよく写らない．結果は下の写真の通りである．よく写らないのはカメラが悪いことにしておこう．
8時45分，堀山の道標の前を通過する．
＜久々の富士山＞
■堀山の尾根は紅葉の見頃
尾根道の下り坂に差し掛かる．この辺りは正に紅葉の見頃である．写真を撮りながら，ユックリと歩く．
途中で，紅葉の写真を撮っているカメラマンのＭＭさんとバッタリ会う．私もＭＭさんの脇に立って，ＭＭさんお真似をして，10枚ほどの写真を撮る．その中の二枚が下の写真である．
＜堀山の尾根道から表尾根方面を望む＞
＜堀山の尾根道標付近の紅葉＞
■小草平
8時56分，ようやく小草平に到着する．小草平のベンチで沢山の登山客が休憩を取っている．相変わらず富士山が良く見えている．
堀山の家は丁度開店した所のようである．堀山の家の入口にぶら下げてある温度計は16℃を指している．温かい．
ここで休憩を取ると，続けて登るのがイヤになるので，休憩を取らずにそのまま登り続ける．
＜小草平；相変わらず富士山が良く見えている＞
■再び富士山の写真を撮る
小草平を通過して坂道に差し掛かる．坂道を少し登ったところは，登山道両側の斜面の崩落が進んでいる．何時も，危ないなと思いながら通過していたが，2週間，私が来ない間に，綺麗に補修されている．有り難い，これで安心して歩ける．
崩落箇所を通過して，長いガレ場に入る．
ガレ場の途中，富士山が良く見えている．早速立ち止まって富士山の写真を撮る．今度はいくらかマシな写真が撮れたようである．でも，構図的にちっとも面白くない写真である． 
＜再び富士山の写真を撮る＞
■萱場平
急階段を登り続ける．毎度のことながら，戸沢分岐手前辺りに差し掛かると，とてもシンドくなる．基壇道だと，どうしても登るピッチが速くなってしまうからである．
9時15分，やっと萱場平に到着する．大倉を歩き出してから2時間05分．元気な頃だったら花立山荘を通過して花立山に向かっている時間である．この大差，残念至極だが，これも致し方ないこと．でもそうは言っても，何だかやる気が失せてくる．
こんなときに，もうそろそろ下山しようかと，私の怠惰な心が蠢動し始める．
”でも，ここで止めるんじゃ何とも情けないじゃないか…”
私は自分の怠惰な心を説得して，もう少し登ることにする．
定点観測用の写真を撮る．暖かな日差しが一杯で，まるで春のようである．
＜萱場平＞
■花立階段下からの富士山
一向に気勢が上がらないまま，ノソノソと惰性で登り続ける．
途中でカメラマンのＭＭさんに追い抜かれる．情けない．さらに沢山の若者に追い抜かれながら，9時43分，後七分坂（花立階段のこと）にやっと辿り着く．何人もの登山者が階段下の岩に腰掛けて，休憩を取っている．
階段下からの富士山の眺望が素晴らしい．私はデジカメを取り出して，数枚の写真を撮ってから9時44分，やっと急階段を登り始める．
＜花立階段下からの富士山＞
■花立山荘
超ユックリペースでのろのろと階段を登り続ける．登りながら，身体の限界を感じ始める．
後もう少しで花立山荘というところで，常連のＳＴさんに追い抜かれる．
9時57分，やっと花立山荘に辿り着く．
後七分坂を，13分掛けて登ったことになる．大倉からの所要時間は2時間44分．これはひどい記録である．小草平からは平素40分で登っていたが，今日は1時間01分もかかっている．この現実，この数値を見て，私はまたもやガックリ．この調子だと，花立山荘から塔ノ岳山頂まで登るまで後40分はかかるだろう．すると，塔ノ岳山頂到着は10時30分ぐらいで，大倉からの所要時間は3時間20分程度になる胸算用する．
”山頂まで登っていたら，下山時間が遅くなるな…どうしよう”
＜花立階段＞
■花立山荘
建物脇のベンチで，ＳＴさんが休憩を取っている．私も釣られるようにＳＴさんの隣にヘタヘタと座り込む．
ＳＴさんは，塔ノ岳山頂まで登らずに，ここから下山するという．
このＳＴさんの言葉を伺って，私も山頂まで登ろうという気持ちが一気に萎む．
「私も，ここから下山します．私の下山速度は遅いので，少し先に下山します…」
とお断りして，ＳＴさんより先に下山することにする．ＳＴさんが，
「多分，どこかでＩＩＪさんが，誰か下山してくるのを待っていますよ…」
と教えてくれる．
＜花立山荘から富士山を望む＞
■素晴らしい眺望
10時15分，花立山荘から下山開始．
前方には素晴らしい眺望が広がっている．
急階段の下りが鬼門である．私はストック2本を使って，体重を分散させながらユックリ慎重に花立階段を下るる．
階段を過ぎても，さらに長居ガレ場が連続する．そして再び階段が連続する．ガレ場を降りているときに．ＭＧさんに追い抜かれる．
「…あれっ！ 山頂まで以下なかってんですか？」
と私に話しかける．
「何だか疲れたので，花立山荘で聞き返しました…」
「そうですか，無理しない方が良いですね」
ということで，ＭＧは疾風のように私を追い抜いていく． 
＜花立階段からの素晴らしい眺望＞
■萱場平
10時33分，ようやく萱場平に到着する．
萱場平の写真を撮りながら，木道をノソノソ歩いていると，いきなり，
「…ＦＨさん！」
と誰かが私を呼び止める．ＩＩＪさんである．
私ビックリ．今日のＩＩＪさんは登りは萱場平までにして，ここから下山するとのこと．ＩＩＪさんと 立ち話をしていると，ＳＴさんが私に追い付く．
ここからはＳＴさん，ＩＩＪさんと３人一緒で下り続ける．私は，
”こうして，色々な方と一緒に歩けるのも登山の楽しみの一つだな…”
と思う．
戸沢分岐を過ぎたところで，山旅スクール5期のＴＢさんとそのお仲間の方とすれ違う．私のほうを見ながら，
「…この方，ウン十三歳ですよ．（高齢なのに山に登るって）凄いでしょう…」
とお仲間の方に私を紹介する．私は内心で，
”また，年の話か…折角，忘れかけていたのに…好い加減にしてよ”
と焦れったくなる．
これまで，色々なところで，年齢の割には元気ですねという話題を，耳にたこができるほど繰り返し繰り返し聞かされている．だから聞く度にウンザリする．
＜萱場平＞
■堀山の家
次から次へと切れ目なく登山者が登って来る．今日は物凄い人出である．すれ違うのに苦労しながら下り続ける．
10時57分，小草平に到着する．小草平のベンチは相変わらず登山者で溢れている．
丁度そのとき，堀山の家からＩＭＩさんが出てくる．今日はＩＭＩさんも，萱場平まで登ったそうである．私は，
「どうです，もう一度．堀山の家に入りませんか…」
とお誘いする．
「だって，今出てきたばっかりですよ…」
とＩＭＩさんが困惑する．
”そりゃそううだ…困惑するのは当たり前だ”
と私は内心で納得している．
一方，私はこの所何時も堀山の家を通過しているので，多少義理を感じている．そこで，一寸だけ立ち寄って，と冷たい物でも飲もうと思う．ＩＭＩさんはＳＴさんやＩＩＪさんと一緒に下山していく．
私1人で堀山の家に入り，オレンジジュースを所望する．冷たくて美味しい．
ジュースを飲みながら女主人のなっちゃんと取り留めのない雑談をする．
＜堀山の家＞
■紅葉を愛でながら…
11時08分，堀山の家を出発する．出発間際に，なっちゃんから，
「…義理を感じて立ち寄って頂き，何時も有難うございます」
と図星の挨拶を受ける．
堀山の尾根道をノンビリ歩く．にうまい具合に太陽が尾根道に射し込んでいる．日光を透かして眺める紅葉はまた格別である．
私は，紅葉の写真を撮りながら，尾根道歩きを楽しむ．
＜堀山の尾根道の紅葉＞
＜堀山の尾根道の紅葉＞
■杉林の中を下る
11時22分，駒止茶屋を通過する．その柵の駒止階段を転倒しないように慎重に降りる．
平坦な道を抜けて，11時38分，一本松を通過する．
紅葉の見頃には少し早いモミジ坂と見晴階段を慎重に下って，11時53分，見晴茶屋を通過する．
雑事場ノ平を過ぎてから，杉林の中の下り坂を少し急ぎ足で下り続ける．すると．前方にＳＴさんとＩＩＪさんの後ろ姿が見え始める．
間もなく，お二人に追い付く．そしてまた，３人で一緒に下り続ける． 
＜杉木立の道＞
■観音茶屋
12時10分，観音茶屋に到着する．
先ほど堀山の家で入れ違いになったＩＭＩさんが観音茶屋に立ち寄っている．私も釣られて立ち寄ろうかと思ったが，大倉発12時40分のバスに乗りたいので，観音茶屋の女主人に，
「すみません，パスします」
と挨拶して通過する．
その後も，ＳＴさんＩＩＪさんと一緒に下り続ける．
＜観音茶屋＞
■無事大倉に下山
丹沢ベースを過ぎる頃，このままの速度で下り続けたら，12時40分のバスに乗れるかどうか怪しくなる．そこで，お二人には申し訳ないないが，私は歩行速度を速める．すぐにお二人の話し声が後ろに遠のいていく．
かなり急ぎ足で下り続けて，12時31分，バス停大倉に到着する．
バス停大倉の待合室から，
「…ＦＨさん…」
と私を呼び止める声がする．ＭＧさんである．
「（編集長の）ＹＫさんもここに居られますよ…」
私は，申し訳ないけど，自宅でやらなければならない業務が山積しているので，今日は早く帰宅します…ということで，
「…すみません．あのバスに乗ります…・」
洗い場で．大急ぎで登山靴の泥を洗い流す．そして，停車中のバスに飛び乗る．
バスは立ち席が少し出るほどの混雑である．もし，下山が15時頃になったら，それこそ沢山の登山客で大混雑だろう．
■少々早めに帰宅
バスは12時55分に渋沢駅に到着する．
タイミング良く，12時58分発小田原行急行電車に間に合う．
小田原からも小田原始発の電車にタイミング良く乗り継ぐ．例によって4人掛けの1ボックスを1人で占領する．
塔ノ岳山頂まで登っていれば，電車の中でも気分は最高だろうが，花立山荘で下山してしまったので何となく後ろめたい．喜びも80パーセントという所だろう．
でも，まあ，無事に下山できて良かったナと自己評価する．
”近々，リベンジしなければ…”
＜ラップタイム＞
７：１０ 大倉歩きだし
７：５３ 観音茶屋
７：３８ 見晴茶屋
８：３３ 駒止茶屋
８：５６ 小草平
９：１９ 萱場平
９：５７ 花立山荘着
１０：１５ 〃 発
１０：３３ 萱場平（１０：４０まで立ち話）
１０：５７ 小草平（堀山の家；１１：０８まで）
１１：２２ 駒止茶屋
１１：５５ 見晴茶屋
１２：１０ 観音茶屋
１２：３１ 大倉着
[山行記録]
■水平歩行距離 5.4km
■累積登攀高度 1,059m
■累積下降高度 50m
■登り所要時間（休憩時間を含む）
大倉発 7:10
花立山荘着 9:57
（所要時間） 2時間47分(2.78h)
水平歩行速度 5.4km/2.78h＝1.94km/h
登攀速度 1,059m/2.78h＝381m/h
■下り所要時間（休憩時間を含む）
花立山荘発 10:15
大倉着 12:31
（所要時間） 2時間16分(2.27h)
水平歩行速度 5.4km/2.27h＝2.38km/h
下降速度 1,059m/2.27h ＝467m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/0d5ff61e2af805be71aea84e90e485cc
「丹沢の山旅」の次回の記事
（なし）