<塔ノ岳山頂に雲が湧く>
山麓の雪景色と富士山の眺望を楽しむ丹沢;塔ノ岳(今年2回目)
(ご常連と一緒)
2014年1月22日(水) 晴
■雨上がりの朝
諸般の事情から,私はもう18日間も塔ノ岳登頂から遠ざかっていた.
昨日(1月21日)の夕方から.
“明日(1月22日)こそ塔ノ岳に登るぞ…”
と決心していた.
今朝(1月22日),予定通り3時30分に起床する.天気予報では夜半から明け方までは雨が降るかもしれないが日中は晴とのことである.まだ外は真っ暗である.でも,どうやら雨は降っていなそうだ,
“ならば,出掛けよう…!”
4時10分に家を出発する.家の玄関から外へ出る.外は今さっきまで雨が降っていたのか,ビショビショに濡れている.ただ,気温はそれほど下がらなかったらしく,路面は全く凍結はしていない.もちろん降雪の気配も全くない.
濡れた路面を見て,出掛けるのを躊躇ったが,結局は,
“今日行かなければ,また1週間塔ノ岳へ出掛けるチャンスはないぞ…”
という“天の声”(実は,私の体内に潜む悪魔の声)に後押しされて,塔ノ岳に出掛けることにする.
東海道本線下り始発電車に乗って,真っ暗な中,小田原へ.早朝にもかかわらず結構乗客が居る.小田原駅で小田急線6時03分発の急行新宿行電車に乗り換える.私が乗った車両の乗客はたった5名,車内は寒々と冷え込んでいる.
6時20分,電車は渋沢駅に到着する.
電車から外に出る.途端に余りの寒さに身が凍える.少し明るくなりかけた駅前にはかなり濃い霧が掛かっている.そちこちの残雪すら見える.
通勤時間帯に入ったのか,奥さんの運転で駅に駆けつけるサラリーマンが結構多い.申し合わせたように車の屋根やボンネットには雪が積もっている.海岸沿いの鎌倉辺りに比較すると,渋沢は随分と寒い所だなと実感する.
■凍結したアスファルト道
私は大倉バス停に一番乗りである.遠くの鎌倉に住んでいるのに一番乗りとは…ちょっと話が変である.
私は,ストレッチ体操をしながら,時間を潰す.やがて,三々五々と登山客が集まり始める.
今日は平日.1番バスの乗客は10名にも満たない,その大半は顔見知りの常連である.KMさん,TDさん,MT女史,H女史,SSKさん,それに韋駄天のNMさんとSTさんの面々が顔を揃えている.ただ,どうしたことか毎日登山のTGさんの姿が見えない,まさに画竜点睛に欠くし,居られるべき方が不在だと,何とも落ち着かない気分になる.
バスは6時68分に大倉に到着する.
辺りが明るくなってきたので,周囲を見回す.なんと一面の雪景色である.丹沢の山々にも雪が積もっている.バス停周辺の建物の屋根にもかなりの降雪である.
韋駄天のNMさんとSTさんは,バスから下車したまま直ぐに塔ノ岳山頂を目指して歩き始める.MT女史,H女史,TDさんも次々に歩き出す.私はSSKさん,NM女史と3人でビリカス,7時05分に大倉から歩き出す.
一見濡れているだけのように見えるアスファルト道は凍結してとても滑りやすい.まさに“ありゃりゃ”とビックリだ.
<深い霧の渋沢駅前> <バス停大倉付近は雪景色>
■山麓から雪景色
凍結した舗装道路を登山口目指して,ソロリソロリと歩く.
前方には朝日を浴びて薄紅色に輝く雪の大倉尾根の木々が見えている.
“今日は富士山が良く見えそうだな…”
と期待しながら歩き始める.
ただ,前回,塔ノ岳に登った日から数えて,今日は18日のブランクを空けての登山である.しかも雪道が予想される.果たして山頂まで無事に辿り着けるかどうかすら不安になっている.
<前方に朝日に輝く大倉尾根が見える>
■雪の殿堂
7時09分,登山口に到着する.克董窯のすぐ先から山道になる.路面は残雪で真っ白である.登山道の囲む林には雪が降り積もっている.そこへ真横から朝日が当たっている.実に幻想的で素晴らしい風景である.
“いやぁ…!! 凄いね,綺麗だね…”
私たちは辺りの風景にみとれながら,ユックリと登り続ける.
観音茶屋を通過する頃,ようやく身体が温まってくる.
<木の枝に残る雪がとても綺麗だ>
■雪景色の見晴茶屋
8時丁度に見晴茶屋に到着する.
今日は随分とユックリしたペースで歩いているが,このペースでも,18日間のブランクがある私には,付いて行くのが精一杯の限界速度である.
雑事場ノ平を通過する.前方には久々に雪景色の見晴茶屋が見えている.
<見晴山荘>
■モミジ坂
見晴階段に差し掛かる.私は先頭を行くSSKさんに,ヤットコサットコ付いていく.正直,実にシンドイ.
階段を登るのに夢中になり,うっかり定点観測用の見晴階段の写真を撮るのを忘れる.それほど今日の私には心のゆとりがない.それでも,どうやらこうやら,同行のお二方にくっついて登り続ける.
一本松を通過してモミジ坂に差し掛かる.
新雪が降り積もったモミジ坂は,実に素晴らしい.思わず立ち止まって,写真を何枚も撮る.
<雪化粧のモミジ坂>
■堀山の尾根道からの富士山
シンドイ堀山階段を何とか登って,8時22分にやっと駒止茶屋に到着する.大倉を歩き出してから1時間17分経過している.かなり遅いラップだが,今日の私にはやっとの速度である.それでも,私は相変わらずSSKさん,NMさんと一緒に登っている.
やがて堀山の尾根道に差し掛かる.滑りそうな木道に気を遣いながら歩き続ける.
8時31分,富士山が良く見える場所に到着する.雪化粧した鍋割山の山裾の向こうに山麓まで真っ白な富士山が良く見えている.私のバカカメラで上手く撮れるかどうか分からないまま,とにかくシャッターを押す.
<堀山の尾根道からの富士山>
■萱場平
8時41分,堀山の家に到着する.
平素は,堀山の家から花立山荘まで,40分掛けて登るようにしているが,今日は雪があることと,体力に自信がないこととを勘案して,50分ほど掛けてユックリ登ることにしたい.でも,取りあえずは,同行のお二人にあわせて登り続けることにする.
正直なところ,今日の私はどうも身体が重い感じがして,調子が出ない.おここまで来ても,二人に付いていくのがやっとの状態が続いている.
9時03分,漸く萱場平に到着する.私は内心で,
“9時03分か! 体調が良ければ後7分坂を3分の2ぐらい登っている時間だな…”
と思いながら,定点観測の写真を撮る.
SSKさんとNMさんが,萱場平のベンチで給水休憩を取るという.そして,私に先にどうぞと促す.
“では…,私はシンドイので速くあるけませんので,ユックリペースで登っています”
ということで,ここから暫くの間,一人旅になる.
<萱場平>
■後7分坂
9時19分,大岩(この頃,私たちは勝手に“高崎岩”と呼んでいる)の手前で下山してくる韋駄天のNMさんとすれ違う.何時もなら後7分坂(花立階段のこと)を3分の2ほど登ったところですれ違うのに…まあそれだけ今日の私はスタミナ切れで遅いということだろう.
9時23分,後7分坂に到着する.ここで,私より30分後のバスで来られたTTさんが私に追い付く.
「さっき,この下でSSKさんとNMさんに会いましたよ…」
とTTさんが言う.これを切っ掛けに1〜2分立話,そして,
「ではお先に…尊仏山荘で待っています」
でTTさんは,高速で後7分坂を登っていく.そして,TTさんの後ろ姿が瞬く間に遠ざかる.
今日の私は,後7分坂を9分掛けて登る積もりである.
<雪の後7分坂;TTさんの後ろ姿が瞬く間に遠ざかる>
■花立山荘
後7分坂を3分の2ほど登ったところで,下山してくるSTさんとすれ違う,何時もは花立山手前ですれ違うのに…マイッタナ!
後7分坂を登り切る頃,萱場平で休憩を取っていたSSKさんとMNさんが私に追い付く.私はもう追い付かれたかと少々無念な気もするが,安全第一と自分に言い聞かせる.
9時32分,ようやく花立山荘に到着する.大倉から花立山荘までの所要時間は2時間15分.条件の良いときに比較すると,10〜15分の遅れである.堀山の家からの所要時間は実に51分.いくら雪道とは言え,これは少々掛かりすぎだなと思う,
花立山荘前の新雪には,2〜3人の足跡が残っているだけ.辺りには人の気配は全くない.ここからも相変わらず富士山が良く見えている.
富士山の写真を撮っている間に,私とSSKさん達の間がさらに開いてしまう.もうお二人には追い付けないなと諦める.花立山手前の登りを歩いている内に,さらにその差がジワリジワリと開いていく.
<花立山荘>
■花立山からの眺望
引きつづき,SSKさんたちの後ろ姿がすぐそこに見えているのに,なかなか追いつけないのがもどかしい.
9時44分,ようやく花立山山頂に到着する.相変わらず富士山から南アルプスの山々が良く見えている.お二人から遅れているのが少々気になるが立ち止まって辺りの写真を撮りながら,真冬の凛とした富士山の姿に感動する.
<花立山からの富士山>
■塔ノ岳山頂から大山を望む
花立山山頂で,軽アイゼンを装着しようかと思ったが,
“ままよ…,もう少し様子を見よう…”
ということで,ノーアイゼンで先へ進む.
馬の背で,立話をしているSSKさん達に,漸く追い付く.
9時56分,3人揃って金冷シを通過する.
その後も調子が上がらないまま,SSKさん達の後をやっとの思いで追い続ける.
10時07分,漸く塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温は,外の温度計でマイナス5℃.無風.さほど寒くはない.
大倉からの所要時間は3時間02分,いくら雪道とは言え,3時間を越えるとは,少々不甲斐ない記録だが,安全第一を標榜する以上,まあ,こんなものと諦めざるを得ない.
今日も儀式として山頂からの写真を一通り撮りまくる.
暖かい日射しによって,平野部の気温が上がったのか,あちらこちらから活発な雲が沸き上がっている.大山の上にも三角形の雲が湧いている.
<雲が湧く大山>
■富士山の眺望
尊仏山荘に入る前に,富士山の写真を撮る.山裾に雲が棚引き始めているが,素晴らしい眺望である,相変わらず南アルプスの山々も見えている.
山頂からの一通りの写真を撮ってから,尊仏山荘に向かう.
<尊仏山荘前から富士山を望む>
■尊仏山荘
私は山頂で写真を撮っていたこともあって,SSKさんたちより一呼吸遅れて尊仏山荘に立ち寄る.
今日の小屋番はW田さん.300円也のお茶を所望する.窓際の席に先着のご常連が鎮座している.相変わらず長閑な風景である,
お茶の飲みながら,暫くの間,雑談を楽しむ.
<尊仏山荘にて>
■一等席はミャ〜君
冬になると,尊仏山荘の一等席は,この石油ストーブの前である.
華伊達美弥雄さんこと猫のミャ〜君が,この一等席で香箱を作って,すやすやと眠っている.ミャ〜君は,御年13歳(14歳だったかな?).猫界のご長老で,仙人のように孤高を楽しんでいる.
すやすやと寝ている猫を眺めていると,見ている方の私も何となく癒される.そんなわけで,ミャ〜君は,多くの登山者に愛されている尊仏山荘の招き猫である.
私が,
「こいつ…何も考えずにノンビリしていられるんだから,良い身分だなぁ…」
と独り言を言う.すると,私の独り言を聞いた小屋番のW田さんが,
「いえいえ,どうして…(ミャ〜も)いろいろ考えていますよ…」
という,
“はて,考えると言っても…普通は言語を使って考えるんだが…考え中の猫の頭の中は,“ニャー,ニャ−,ニャー,…”という猫語で一杯になっているのかな…なんて妙なことを想像する.こればかりは当の猫君に聞いてみないと分からない.
<一等席のミャ〜君>
■湧き上がる不気味な雲
10時54分,居合わせたご常連とほぼ一緒に,尊仏山荘を出る.山荘前で4本爪の軽アイゼンを装着する.
前方を見ると,大きな雲がモクモクを沸き上がっている,雄大で不気味な雲である.思わず立ち止まって雲の写真を撮る.
<沸き上がる不気味な雲>
■ノンビリ下山
下山もSSKさん,NMさんと一緒である.他のご常連とも付いたり離れたりしながらの下山である.今日は天気も上々.ノンビリと雑談しながらの下山が実に楽しい.無事山頂まで登ったという“ホッとした”感も加わって最高の時である.ちょっぴり下品な話も添えて…
萱場平でアイゼンを脱着する.
登りの時は凍結していた山道も,萱場平から下は,泥んこ道に変わる.靴にへばり付く泥んこに悩まされながらの下山である.
12時40分,見晴茶屋で日向ぼっこをしながら5分ほど休憩を取る.どうせ,大倉発13時22分のバスに乗るんだから…早く下山しても仕方がない.
<見晴山荘にて>
■ちょっと接続が悪かったが無事帰宅
13時15分に無事大倉へ下山する.
バスが途中で少々時間が掛かって,渋沢駅で電車の接続が悪くなる.駅のホームで10分余り待ちぼうけ,さらに小田原でも15分ほど接続待ち,大船でもバスに乗るのに25分の待ちぼうけ.ついていない.
結局,渋沢での僅かの差が,帰宅するまでに小1時間の差になってしまう.
でも,まあ,18日ぶりに塔ノ岳詣でも,時間が掛かったとはいえ無事に終わった.
だから,良かった.良かった.
<ラップタイム>
7:05 大倉歩き出し
7:36 観音茶屋
8:00 見晴山荘
8:22 駒止茶屋
8:41 堀山の家
9:32 花立山荘
9:56 金冷シ
10:07 塔ノ岳山頂着(-5.0℃)
10:54 〃 発
11:05 金冷シ
10:15 花立山
10:26 花立山荘
11:34 萱場平(11:38までアイゼン脱着)
11:55 堀山の家
12:12 駒止茶屋
12:40 見晴山荘(12:45まで休憩)
12:56 観音茶屋
13:15 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:05
塔ノ岳 着 10:07
(所要時間) 3時間02分(3.03h)
水平歩行速度 7.0km/3.03h=2.31km/h
登攀速度 1269m/3.03h=418.8m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:54
大倉 着 13:15
(所要時間) 2時間21分(2.35h)
水平歩行速度 7.0km/2.35h=2.97km/h
下降速度 1269m/2.35h=540.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/cc6b16478cdf39bf7cf2bbecf721e688
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(なし)
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山麓の雪景色と富士山の眺望を楽しむ丹沢;塔ノ岳(今年2回目)
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