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Channel: 中高年の山旅三昧(その2)
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2018第41回神奈美公募展出展作品(3);『雪雲せまる大倉尾根(丹沢)』(水彩画;F20)

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                       2018第41回神奈美公募展出展作品(3);
               『雪雲せまる大倉尾根(丹沢)』(水彩画;F20)

作品1『グランドキャニオンの谷底を歩く』の記事
https://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/6dfa2debbedfb14d9edd1fff012dcd91
作品2『蝙蝠岳から見た富士山』の記事
https://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/bf64d9557cecaaef359ac74737030322

▇作品3.『雪雲せまる大倉尾根(丹沢)』(F20)
(1)狙い
 私の趣味の一つが登山である.
 私の行きつけの山は丹沢塔ノ岳.雨でない限り,四季を通じて,仮に雪の日でも必ず週に1回は塔ノ岳に登っている.
 塔ノ岳は私の登山の原点となる山であり,また,将来終点にもなる”私の”山である.
 私が上るルートは決まって大倉尾根.通称バカ尾根と呼ばれている尾根道である.
 なぜバカ尾根と呼ばれているか? その由来は私には定かではないが,俗説ではやけにきつくて1回登れば
もう結構.2回以上も登るのはバカだということからバカ尾根と呼ばれるらしい.
 私の周辺には,いわゆる常連と呼ばれるバカ尾根愛好者が数十人居られる.私も常連の端くれ…まあ隅っこの人間に過ぎないが,体力が許す限り何回でも登りたいなと思っている.
 山に登るときには,事前に必ず天気予報をよく調べるようにしている.でも,ときどきは予報が微妙にずれたり,ときには外れたりすることがある.
 冬になると,塔ノ岳付近は2月頃を中心に雪山になる.私は1月が下旬に近づく頃になると,リュックの中に必ず軽アイゼンを入れておくようにしている.でも,最初から雪山に登るぞと覚悟して登っているとき以外は,にわかに雪になると,一刻も早く下山したくなる.
 この絵は,下山途中に予期していなかった雪雲が急に背後から襲ってくるときの様子を画いたものである.眼下に秦野の街と明るい相模湾が見えている.もちろん下界には雪が降る気配もないだけでなく分厚い雲の間から日が差しているところすらある.
 ”あそこまで早く降りたい…”
 でも,足許は岩礫の坂道.なかなか捗らない.
 このときの焦るような,祈るような気持ちをこの絵で表現したかった.

(2)状況
 この絵のモデルとなった場所は花立山付近である.
 大倉尾根から塔ノ岳山頂までの稜線沿いの道を8割ほど登ったところに花立山荘という山小屋がある.
 この山小屋を過ぎると気候が一変する.特に季節の変わり目になると,花立山荘まではまだ秋なのに,山草から上はもう冬ということがよくある.さらに花立山荘から10分ほどガレ場を登ると花立山と呼ばれる小ピークがある.このピークを過ぎるとさらに気候が一歩進んで真冬になる.冬場になると,この花立山で軽アイゼンを装着して山頂を目指すことが多くなる.余談だが花立山から,大体,25分程度登ると塔ノ岳山頂に到着する.山頂は冷たい風が吹いていることが多く,さらに厳しくなる.
 さて,前置きはこの程度にして,この絵を画いたときの状況を説明しよう.
 某年の年明け,まだ残雪はない頃のこと.私は無事山頂まで登って下山を開始する.当日の天気予報は夕方から雪とのことであった.ところが実際は予報より大分早く雪雲が迫ってくる.もちろん雪や雨を覚悟して開き直って下山すれば構わないが,できれば雪か霙か分からないが降り出す前に安全な場所まで下山してしまいたい.
 私は安全を念頭に置きながらも,出来るだけ歩行速度を速めたいが,足許がガレ場なので,そう速くもある得ない.そんな,もどかしい思いをしながら下山し続ける.こんな焦るような焦れったいような気持ちを,この絵で表現したかった.そこで,私はこの絵の中に架空の人物を小さく書き込んだ.そして,この人物に私の気持ちを表現させたかった.
 この絵の中で,人物が居る辺りからちょっと先に,本当は見晴山荘がある.さらに見晴山荘の先には,一部の方々から”階段地獄”と呼ばれている花立階段がある.段差が大きくて長い階段である.
 実は,この絵では花立山荘と花立階段はは省略して描いてない.その理由は,実際に絵の人物が歩いているところから下界を見ると途中が花立山荘と花立階段で遮られてしまい,下界との連続感が薄れてしまうからである.
 絵は写真とは違って,見たそのままを画かなくても良い.画きたいものは適当に書き足しても構わないし,画かない方が良いものは逆に省略してしまう.その辺りは変化自在である(と私は思う).
 ちなみに大倉尾根の始点バス停大倉と塔ノ岳山頂までの累積標高差は1,269メートルある.丁度,北アルプスの3大急登と呼ばれる登山ルートに,ほぼ匹敵する標高差がある.そのために夏の北アルプスを目指すための予行演習として,この大倉尾根を登る人が多い.

(3)写生した場所
 下の地図は,この絵をスケッチした場所を示している.
 塔ノ岳山頂から下り始めると,最初は木道,続いて急勾配のジグザグ道,さらにその先に2カ所の階段道を下って,約10分で金冷シを通過する.その先,2カ所のちょっとした登り返しを過ぎると花立山山頂に到着する.金冷シから約5分の道のりである.
 花立山山頂からはガレ場の下り坂になる.前方には秦野の市街地と相模湾が見下ろせる景勝の場所である.
 この絵の題材とした場所は,このガレ場を通過して,そろそろ荒れた階段道に差し掛かろうとするところである.
 もちろん,この場所からも秦野の市街地や相模湾が良く見えているが,その間に花立山荘や花立階段があるので,登山道が続いているというイメージが湧きにくい.そのために通り敢えて省略してしまった(花立山荘さんゴメンナサイ).

←クリック拡大

(4)構図
 こんな状況をできるだけ強く表現したかったので,以下に示す構図を想定した.
 まずこの絵をご覧頂く皆様の目線が下の図の破線の部分に集まるようにしたかった.そのために,逃げる登山者(つまり私)と秦野市街地(人が住むと所)および日光を反射して光り輝く海を点線内に配置した.そして空には迫り来る雪雲で暗くなった空を配置した.
 画面の左右に分厚い雲のために薄暗くなった稜線を持ってきた.そして左右の稜線の間に,私が急いで下山したいルートがある.
 分厚い雪雲に覆われた真っ暗な空の切れ目からちょっとだけ青空が覗いている.この青空は「希望」の象徴でもある.
 さて,こうして描き上げてみると,絵の下半分がやけに暗くなっている.この暗い部分がやや単調な感じを受けるので,絵の右下に敢えて白色でサインを入れた.このサインによって絵の下半分の単調さがなくなる効果があったと思っている.ただ,このサインもこれ以上大きな字にすると,今度はサインが目立ち過ぎてしまい,見る人の目がサインの方へ行ってしまうだろう.そんなことを考えながら,目立たずに,しかも単調さを補うように配慮しながらサインを施したつもりである.

<この絵のデザイン>

(5)自己評価
 今回の展覧会に,私は3枚の絵を出展した.
 最初に紹介した水彩画『グランドキャニオンの谷底を歩く』が,幸いにも秀作賞を受賞した.これは望外の幸いであり大変嬉しい.ただ,贅沢な「欲」を言えば,
 ”どうせ秀作賞を頂けるならば,こちらの『雪雲せまる…』の絵で受賞したかった”
と思う.
 自分が描いた絵は,どんな絵でも同じように愛着を持っている.でも,今回の3枚の絵の中では,この『雪雲せまる…』が自分の心情を一番率直に表現できたのではないかと思っている.
 今回の展覧会には,私の知人,友人,親族など数十人の方々にお越し頂いた.私の絵を見て,皆様がどのような感想を持たれたかを伺ってみると,登山経験のある方とない方とでは,やっぱり見るところに違いがあることがはっきりと分かった.
 結局,誰しも「過去の自分の経験」というフィルターを通して絵を見ているので,同じを見ても,それぞれ違った印象や評価をするので,評価が色々に分かれている.
 このことは,一見,”当たり前じゃないか”と思われるかも知れないが,実はそれは「絵の未熟さ」の証明だと私は思う.その理由は至って単純である.古今東西を問わず名画と言われる絵は,見る人の「過去の経験」にどのような違いがあるにしても,誰が見ても「素晴らしいものは素晴らしい」からである.
 絵の素人の私が,このようなことを言うのは,誠に烏滸がましいことかもしれないが,どなたに見て頂いても”素晴らしい絵だ”と評価される絵を画きたいと思っている.
 ”そのためには基礎となる知識・技術を身につけなければ…”
と自分のロートルさを顧みずに願っている.
                            (2018年公募展の記事おわり)
「閑話休題;セピア色の画集」の前回の記事
https://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/dd8b7a54bdf7150debc3b65306f4297a
「閑話休題;セピア色の画集」の次回の記事
(なし)

お断り;
 これらの記事は,私の趣味仲間を読者対象としたものであり,一般の読者を対象としていません,したがって,まったく個人的なものです.また十分に時間を掛けて編集していませんので,記事は正確とは言えないし,誤字脱字転換ミスも多々あると思います.このことを前提にしてご覧下さい.
 また,当ブログ記事を読んで,不快になられた方は,以後,当ブログへアクセスされないようにお願い致します





 


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