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Channel: 中高年の山旅三昧(その2)
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お盆休み特集 昭和を振り返る;第9話;祖母の親心

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   お盆休み特集 昭和を振り返る;第9話;祖母の親心

(2017年8月23日記)

 私の家は長野県小諸町(今は小諸市)にあった.
 父方の祖父母は小諸町の中心から2キロメートルほど離れたところにある隣村に住んでいた.後にこの村は小諸町と合併して小諸市の一部になっている.
 小諸町とこの村の境目に駐在所があった.
 この駐在所で経験した一寸したエピソードが今回の話題である.
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 開戦直後は華々しかった戦況も,次第に険しくなるにつれ,銃後の世相も殺伐としてくる.加えて,食糧難が顕著になり始め,配給米だけではとてもではないが食べていけない.そこで,どうしても闇で食料を確保しなければ生きていけなくなってきた.食糧難は,戦争中よりも,むしろ戦後になっていっそうひどくなったように記憶している.
 戦後は超インフレ,加えて預金封鎖のあおりがあって,食料のない町中に住人は,自分の着物のようなものを農家に持ち込んで食べ物と物々交換をしながら,その日,その日の食べ物を調達していた.こんな状態が続くと,だんだんと身ぐるみがはがれていくので,まるでタケノコの皮をはがすように,だんだんと裸になっていく.こんな生活を揶揄してタケノコ生活と呼んでいた.
 そんな時代のある日のこと,私は祖父母の家を訪れていた.祖父母は農家だったので,まあ,まあ,食べ物には困らなかった.そんな祖父母の目から見ると,町中の息子(つまり私の父)一家が食べ物に困っているのが不憫でならない・
 夕方,私が自宅に戻るときに,祖母が2~3升の精米を私の背中に背負わせる.少々重いが有難く頂戴する.その米を背負って,トボトボと家に向かって歩き続ける.
 やがて,村と町の境界にある駐在所の前に到着する.
 巡査が私を呼び止める.
 「…背中に背負っているのは何だね…」
 私は指図されるままに背負っている荷物を巡査に見せる.
 「何だ! 米じゃないか! 闇米は没収だぞ! 住所と名前は?」
 私は素直に,
 「○○町××番地のFHです…」
と答える.
 巡査は,私の名前が○○町のFHだと知って,うろたえ始める.
 実は私の親は○○町で産婦人科を開業していた.この巡査の子供は私の父が取り上げてやった.
 「う~ん…,しょうがないな.FH先生のお米は没収できないな.お父さんによろしく…」
というこtで無罪放免.今思えばこの巡査の公私混同がひどすぎると思うかもしれないが,これが田舎のコミュニティをささえる大切な要素かもしれない.
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 つい先日,この通在所があった場所に行ってみた.
 通在所があった場所は,拡幅された道路の中に隠れてしまった.今はもう当時の面影は全く残っていない.ただ無機質なアスファルトに埋もれてしまっている.
 そんなことがあったのか知らない人には,ここはたんなる道路の片隅に過ぎないかもしれないが,私には忘れられない思いが残っている場所である.
 私と同じように,何もないところに思える場所に人々の思いが人知れず埋まっているのかもしれない.そう思うと,自分が踏みしめている土地にも多くの祖先の思いが埋まっているんだから大切にしなければ…と,再認識させられる.これも,自然環境保護が必要なことの一要因なのかもしれない.

                                             (第8話おわり)
お断り
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