閑話休題;胆石症闘病記(7);第2日目(2);知らぬ間に手術が終わった
2016年3月29日(火) 晴
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<ICU室にて>
■切除した石
ふと気が付く.
私は,何時の間にか,薄暗い部屋の片隅に置かれたベッドの上に横たわっている.
麻酔から覚めたのだ.
どうやら知らぬ間に手術が終わったようである.
”今,私はどこに居るんだろう…”
一瞬分からなくなるが,私が知らない間に手術が終わって,どうやら.ナースステーション脇にあるICU室に居るようである.
薄暗い部屋の中に,私と同じように手術を受けたばかりの患者が数名居るのが気配で分かる.
気が付いて間もなく,主治医のDT先生が様子を見に来る.
「…がんばりましたね.こんな大きな石が取れましたよ…石が取れて本当に良かったです」
と言いながら,プラスチックのケースに入れた”私の”胆石を見せてくれる.
手術後間もないこともあって,みぞおち付近に痛みがある.痛み止めの点滴が始まっているようである.正直なところ,痛みはないが,いささか胸苦しい.でも,我慢できる程度だが…
私は自分の体内から取り除かれた石をシゲシゲと見る.
記録として,この胆石の写真をここで披露したいところだが,それも悪趣味というものだろう.止めておこう.
胆石の大きさは,長さ4センチメートル,最大直径2.5センチメートルほどのラグビーボール型.少し赤みがかった黒色の不気味な代物である.胆石が入っている容器を振ると,胆石が容器に当たってカタカタと音を立てる.
容器には封がしてある.封には「医薬用外劇物」というシールが貼ってある.その下に,
「…飲まないで下さい…」
という注意書きが印刷されている.
”オレの胆石は劇薬か!”
これには驚いた.
■胆石瞑想
それにしても,こんな”妙ちきりん”な石が,自分の体内にあったとは…俄には信じがたい.”こんなものが,体内に潜んでいたんでは…そりゃあ,体調が悪くなるのも当たり前だと納得する.
それにしても…
私は不思議である.
あのナントカ貝の中で育った石は見事な真珠になるのに,同じように私の体内で育った石は何でこんなに醜悪で下品な色をしているんだろう.
真珠と私の体内で育った石の組成に違いがあるんだろうか…またまた不思議で気になることが増えてしまう.
それにしても…
この醜悪な石にも,私の半生の歴史,いや四捨五入すれば一生の歴史が詰まっている.何しろウン十年の間,体内で手塩にかけて育てた石である.
この石を真っ二つに割ってみれば,石の中心から外に向かって,私の生き様が記録されているに違いない.
この憎っくき,かつ,愛すべき胆石は,一体,何時頃から出来始めたんだろう.家主の私にも分からない.
仮に,10才代にできはじめたと仮定しよう.
すると,この胆石の中心部には,信州の山野を駆け回っていた頃の農村の香りが詰まっているだろう.
その外側には戦中戦後の食糧難時代の思い出が詰まっている.
さらにその外側には戦後の高度成長時代の記録があるはずだ.この頃は,私もバリバリの企業戦士だった.
それに,そうだ!
この辺りから,甘い新婚生活の歴史も始まる.さらにはケンカが絶えなかった甘辛い所帯の記録も追加される.さらには.高度成長時代の記録も残っているだろう.
その外側は,馬車馬のように働いた記録や,大学時代の研究生活の業績,さらにはあちこちの山々を登り続けた記録などが累々と重なっているはずである.
そして,一番表面には怪我や病気で苦しむ現在の私の姿が記録されているだろう.
まるで走馬燈のように目まぐるしかった私の一生が,この石の中にコンデンスされているんだろう.
こう考えると,この胆石,表面はどす黒いような赤茶けたような醜悪な色をしているが,中心部は真珠のように光り輝いているかもしれない.
私の心の中に巣喰っているもう一人の私が,
”じゃあ…胆石を真っ二つに切り開いて確かめるか”
と私を誘惑する.
”いや,まあ…,この胆石は手を加えずにソッとしておこう…”
胆石の中が光り輝いているかどうかは,永遠の謎にしておいた方が,夢があって良い.
私は手術後のボンヤリした頭の中で,こんな下らないことを連想していた.
<胆石を見ながら馬鹿なことを連想する>
■みぞおち付近が苦しい
.さて,ところで,今,一体,何時頃なんだろう…
手術中,麻酔にかかっていた私には時間的な感覚がすっかり失われている.
今,何時頃かが全く見当がつかない.ただ,辺りの雰囲気から,どうやら長い時間が経過しているように思える.
私は,自分の身体に色々な管が装着されていることに気が付く.多分,何かのデータを連続的に記録しているに違いない.だって,ここはICUだから…
ただ,何を記録しているのか,私には良く分からない.脈拍だろうか,心電図かな,あるいは血中酸素濃度?
とにかく,いろいろなものがモニターされているようである.
程なく看護師が様子を見に来る.
「今,何時頃なんですか…」
「もう夜ですよ…どこか痛いところがありますか…」
「痛いところはありません.ただ,みぞおち付近が重苦しいです…腰が重苦しいので,腰の下にタオルを挟んで頂けないですか…」
麻酔が効いているためか,まだ,何となく意識が曖昧である.
<眠っているような眠らないような夜>
■曖昧な感覚
薄暗い部屋の中で,寝ているような,起きているような不思議な感覚のまま夜を迎える.
全身に虚脱感があって,寝返りをする気にもなれない.
相変わらず腰が痛い.身体をモゾモゾしながら,腰の下に敷いてあるタオルの位置をずらす.
腹バンドをしたお腹のどこからか管のようなものが取り付けられている.
手術前に,4ヶ所に穴をあけて手術をすると聞いていたので,多分,その内のどこかの穴に管が付いているんだろうと勝手に想像する.
”どこに穴をあけたんだろう…”
麻酔のためか,どのくらい時間が経過しているのか,何がどうなっているのか,ボンヤリしている頭では良く分からない.
■何時の間にか朝
苦しいような,苦しくないような,眠っているような,起きているような…曖昧な時間が過ぎていく.
相変わらず経過時間が良く分からない状態が続く.
その内に.次第に周囲がざわざわし始める.
隣のベッドに寝ていた若い男性が,看護師と何事か頻りに話をしている.どうやら,この男性は,今日退院するようである.
やがて私の所にも看護師が来る.
「今,何時ですか…?」
「10時頃ですよ…」
私は曖昧な感覚の内に,入院3日目,2016年3月30日を迎えている.
「そろそろ部屋に戻りましょう…」
と看護師が言う.
看護師は,私の胸部や腹部からいろいろなものを外す.胸部から電極のようなものを何本か外すのを見て,心電図がモニターされていたの確信する.
「管を抜きます…ちょっと痛いかも知れません…」
一寸,熱い感じがするが,無事,管が外される.
「歩けますか…」
「大丈夫です」
私は,点滴の棒を持ちながら,看護師のエスコートで,無事,自分の部屋に戻る.
こうして,麻酔が掛かったまま,入院3日目の朝を迎える.
(第2日目終わり)
(第3日目に続く)
づき(第3日目)の記事
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胆石症闘病記の目次
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「閑話休題」の前回の記事
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「閑話休題」の次回の記事
(なし)
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