<尊仏山荘のミー君>
富士山・樹氷・山ネコとの出会いを楽しむ丹沢;塔ノ岳(今年7回目)
(単独山行;下り常連に同行)
2015年2月4日(水) 晴
■煌々の満月
このところ色々と多忙で,今日の塔ノ岳詣では1週間ぶりのことである.1週間も間が空いてしまうと,果たして山頂まで登れるかどうかが心配になる.こうなるともうラップタイムなどどうでも良い…とにかく無事に塔ノ岳を往復できることが唯一の目標である.
何時ものように,4時10分に自宅から出掛けることにする.2階の自室から廊下に出ると,廊下が何かの光を反射して光っている.
”どこか,切り忘れた照明があったのかな…”
と一瞬思ったが,それは西の空に輝く満月の光が廊下に反射していたのだ.
今朝は風もなく,体感温度もそれほど低くない.私は満月の光を背中に受けながら,大船駅へと急ぐ.
ついこの間,正月を迎えたばかりだと思っていたのに,今日はもう2月4日.そろそろ梅の開花が話題になる季節を迎えている.まさに光陰矢の如しである.そういえば,朝明るくなる時間も少し早くなったような気がする.
渋沢発大倉行1番バスはパラパラと座席が埋まる程度の混雑.乗客は何時もの水曜日よりも少し少ないようである.乗り合わせた常連は,韋駄天のNiMさん,SSKさん,NMさん,TDさん,MTさん,Hoさん,IwIさんなど.
ただ毎日登山のTGさんとYKさんが居られない.画竜点睛に欠くとはこのことか.
バスは7時丁度にバス停大倉に到着する.
■見晴階段
7時06分,たまたま居合わせたSSKさん,NMさんのお二人と一緒に大倉から歩き出す.
歩き出しの速度が,何時もの私の速度より少し高速である.私は付いて行けるかなと不安に思ったが,まあ,暫くの間は観念してお二人に付いていこうかと思う.
7時12分,登山口を通過する.大倉からの所要時間は6分.何時も私は7分掛けて上手居るので,ちょっと速い感じである.
雑談をしながら,7時30分に観音茶屋を通過する.この辺りから本格的な登り坂になる.
7時50分,見晴茶屋を通過する.見晴茶屋からは相変わらず光る海が見下ろせる.
すぐに見晴階段に差し掛かる…が,雑談に気を取られたか,それともNMさんの魅力に惑わされたのか,何時も必ず撮影する見晴階段の写真を撮るのを忘れてしまった.極めて残念である.
先頭を行くSSKさんに付いて坂道を登るのはちょっと大変である.
見晴階段を登り切って,9時05分,一本松を通過する.大倉からの所要時間は59分.シンドイわりにはラップタイムは何時もと1分程度しか変わらない.それにもかかわらず,汗が出始めている.
”これはまずいな…マイペースで歩かなければ…”
■チャンピョンとすれ違う
8時14分,駒止階段に差し掛かるところで,下山してくるチャンピョンとすれ違う.
チャンピョンは,
「…あっ! FHさん…鎌倉案内の…エェ~と,NMさんですね…」
と私達が誰かを確認する.
<チャンピョンが下る>
■駒止階段
駒止階段を登り切って,8時18分に駒止茶屋を通過する.先頭を行くSSKさんとは10メートルほど離れてしまう.ここで私はSSKさんに付いていくのを諦める.
大倉から駒止茶屋の所要時間は1時間13分.疲労度のわりにはラップは全く冴えない.
”やっぱりマイペースで歩くべきだ…”
という基本に立ち返るべきだと,再認識する.
<駒止階段>
■堀山の尾根道
堀山の尾根道に差し掛かる.20メートルほど前にSSKさんが歩いている.平らな尾根道でSSKさんに追い付こうとしたが無理.
やがて富士山が見える場所に到着する.今日は富士山が良く見えている.私はここで写真タイム.富士山の写真を数枚撮る.その間に,SSKさんの後ろ姿は完全に見えなくなる.ここから先,塔ノ岳山頂までSSKさんには追い付けなかった.
<堀山の尾根道からの富士山>
■小草平
8時35分,小草平に到着する.ひょっとしたらSSKさんが休憩を取っておられるのではないかと思ったが,小草平には誰も居ない.今日は平日.堀山の家も休業中である.
小草平からも富士山が良く見えている.
”オレのバカカメラでは,とても,とても,写らないだろう…”
と思ったが,念のため富士山の写真を撮る.その結果が下の写真である.おぼろげながら富士山の姿が申し訳程度に写っている.
小草平を通過して,長い登り坂に差し掛かる.
<小草平からの富士山>
■萱場平
小草平を過ぎると路面が凍結しているところが,だんだんと多くなる.足場が悪いと登攀速度も微妙に変わってくる.今回の塔ノ岳までに1週間のブランクがあったこともあって,私は次第に汗ばんでくる.
”汗をかき始めたぞ…これはいけない…”
ということで,戸沢分岐に差し掛かるところで,私の後ろに居られるNMさんに,私を追い越して先に行ってくれとお願いする.
8時54分,やっと萱場平に到着する.そのときには,つい先ほどまで御一緒していたNMさんの後ろ姿は全く見えなくなっている.私は何となく敗北感のような切ない気持ちになっている.まるで敗残兵のようである.
”でも,まあ,安全第一でしょう…!”
という私の心の中に巣喰っているもう一人の私の囁きに私は少し救われたような気分になる.
<萱場平>
■残雪の階段道
萱場平から先は完全な1人旅である.
萱場平からは路面が凍結した階段道が連続する.いくら登りだからといっても,路面の状態が良くないと自然に歩行速度は遅くなる.
9時05分,坂の上の方から2本ストックのYZさんが快調に下ってくる.YZさんを見送りながら坂の下の方を見ると,次から次へと登山客が登って来るのが見える.
<凍結した階段道>
■韋駄天の方々
大きな岩を迂回する場所に到着する.丁度そのとき,下山してくるKSさんにバッタリ.例によって,
「やあ,やあ…」
と握手して挨拶.私はKSさんから何時ものように元気を頂戴する.
「山頂の気温はマイナス4.3℃,寒いですよ! でも樹氷が見えますよ…」
とのこと.
丁度そのとき,2番バスで来られたFTさんが私に追い付く.ちょっと足場の悪いところで,3人揃って,
「やあ,やあ…」
その後,FTさんは疲労困憊の私を尻目に,グングンと坂を登っていく.そして私との距離が見る見るうちに広がっていく.私ガッカリ.
9時15分,後七分坂(花立階段)に到着する.ここでの富士山の眺めを期待したが,何時の間にか,富士山は雲の中に隠れてしまっている.
後七分坂を途中まで登ったところで,韋駄天のNMさんとすれ違う.私の体調が普通の時にすれ違う場所である.ということは,沢山の方々に置いていかれた私だが,私自身にとってそれほど遅い時間で登っているわけではないことが分かる.
NMさんを見送りながら後ろを振り返ると,雪化粧した堀山がとても美しく見えている.思わず堀山の写真を撮る.
<KSさん,FTさんと3人バッタリ> <後七分坂からの眺望>
■花立山荘
後七分坂を7分で登って,9時22分に花立山荘に到着する.残念ながら富士山は雲の中である.山荘前の広場には誰も居ない.寒々としている.
大倉から花立山荘までの所要時間は,2時間16分.一言で言えば”遅い!”.小草平からの所要時間は47分.こちらも超遅い!
<花立山荘>
■残雪の鍋割山稜
引き続き花立山に向かう.暫くの間,段差が大きい階段道が続く.結構シンドイ.私は,
”急いては事をし損じる…”
と頭の中で繰り返しながら,淡々とした気分で登り続ける.
そろそろ階段道が終わりかけるところで,後ろに人の気配を感じたので,その方に道を譲る.YUさんである.
「…なかなか追いつけなくて…」
と言いながら,私を追い越して行く.
登るほどに,残雪は少ないものの,厳しい冬景色に変わっていく.あいにく富士山は雲の中,でも雪化粧した鍋割山稜が厳しい表情を見せている.
<花立山から鍋割山稜を望む>
■花立山山頂
9時33分,花立山山頂を通過する.積雪は少ないものの,一面の銀世界である.上空には雲が低く垂れ込めていて,何とも侘しい感じがする.
花立山山頂を過ぎると,路面は完全に凍結している.軽アイゼンを装着しようかと迷いながらも,もう少し様子を見ようということで,ノーアイゼンのまま歩き続ける.
<花立山山頂>
■樹氷
馬の背付近の下り坂は,アイゼンなしだと少々難儀するが,何とか通過する.金冷シに土か付くと,僅かながら樹氷が見え始める.美しい風景である.
私はときどき立ち止まって,周囲の風景を写真に収める.
9時39分,ようやく金冷シを通過する.
<馬の背付近の樹氷>
■塔ノ岳山頂
金冷シから先はカチカチに凍結した階段道が続く.登りなのでアイゼンは不要だが,下山するときはアイゼンを使った方が良いなと思いながら登り続ける.
滑りやすい階段道を手こずりながら登り続けて,9時57分に塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温はマイナス4℃.無風なのでそれほど寒いという感じはしない.積雪は少ないものの山頂一帯が残雪で覆われている.山頂で休憩を取っている登山者は1人だけ.
<塔ノ岳山頂>
■大山を望む
何時ものように山頂からの眺望をデジカメに収める.
富士山は雲に隠れていて見えないが,近場の大山は良く見えている.表尾根の山々には残雪が見えている.
<塔ノ岳山頂から大山方面を望む>
■茫洋の相模湾
尊仏山荘に立ち寄る前に尊仏山荘の裏手に回ってみる.ちょっと裏手に回っただけで,訪れる人がぐっと少なくなるらしく,余り踏みつけられていない新雪が残っている.雪の上を.歩くと”キュッ,キュツ,…”と雪が締まる音がする.これが楽しい.
ふと振り返ると,淡い冬の日光を受けて茫洋と光る相模湾が見下ろせる.実に美しい風景である.
←クリック拡大
<茫洋と光る相模湾を見下ろす>
■樹氷の森
尊仏山荘裏手に回ると,一段と沢山の樹氷が見られる.残雪も表側に比較すると随分と多い.
私は時間を気にしながら,何枚かの写真を撮る.
<雪と樹氷の森>
■尊仏山荘
10時少し過ぎに尊仏山荘に入る.今日の小屋番はWDさん.300円也のお茶を所望する.石油ストーブ前の一等席で花立美弥雄さん(ネコのミャー君のこと)が暖を取っている.
私は何をさておいても,まずはネコちゃんの写真を撮る(冒頭の写真).
そういえば雑誌『山と渓谷』12月号に,前に居られた小屋番ONさんとネコの記事が掲載されていた.ONさんが小屋番をしていた頃に比較すると,ネコも随分と老けたようだ.
先客は,同じ一番バスに乗っていたのに私より先に到着したMTさん,SSKさん,NMさん,YUさん,それに途中で私を追い抜いたFTさん.綺麗な写真を撮るNMさんも居られる.常連でない方も数名居られる.
お茶を飲みながら暫し懇談.暫くしてHSさんが尊仏山荘に到着する.
■漸く富士山が顔を出す
「そろそろ下山しましょう…」
ということで,10時30分過ぎに,尊仏山荘から外へ出る.風はないけれども,外はヤッパリ寒い.私は,山荘入口で,6本爪軽アイゼンを装着する.
10時37分,塔ノ岳山頂から下山開始.
丁度その頃.雲間から富士山の中腹が少しだけ見え始める.
←クリック拡大
<富士山が顔を出す>
■花立山荘からの富士山
常連のSSKさん,NMさん,MTさん,Hsさん,YUさんと一緒に下山開始.
山頂直下の階段で,登って来るIwIさんとすれ違う.
10時52分,花立山に到着する.ここでアイゼン脱却.
11時05分,花立山荘に到着する.ここからは富士山の頂上がスッキリと見えている.真っ白な富士山を見て,何か拾いものをしたような気分になる.
<花立山荘からの富士山>
■堀山の尾根道からの富士山
ときどき凍結した道に遭遇しながら慎重に下山し続ける.ときどき凍結した滑りやすい場所を通過する.
11時32分,小草平を通過する.
11時44分,堀山の尾根道で,再び富士山の写真を撮る.山麓は雲に覆われているが,山頂はスッキリと見えている.
<堀山の尾根道からの富士山>
■無事下山
11時54分,駒止茶屋を通過する.
駒止階段を下っている最中に,私は何となく集団の一番前に出てしまう.
”まあ…いいか…”
ということで,そのまま自分の速度で下り続ける.引力に逆らうのもシンドイので…
12時丁度に,一本松を通過する,モミジ坂を名なりの速度で下り続ける.
12時09分,見晴茶屋を通過する.
”この分だと,大倉発12時52分のバスに間に合うぞ…”
私は十分に時間を取って,泥靴や泥だらけのスパッツなどを洗いたかったので,そのまま下山をし続ける.
12時32分,登山口を通過する.ここからは下り坂の自動車道路である.
毎度のことながら,ロウバイが美しい集落に下山すると,私もこの辺りに住みたいな思う.
12時37分,バス停大倉に到着する.
下り所要時間は,休憩時間込みで2時間00分であった.
<美しい大倉の集落>
■小田原を経由して帰宅
私が水場で靴やストックなどの泥落としを終えた頃,先ほどまで一緒に下山していた皆さんもバス停大倉に到着する.
全員が大倉発12時52分発のバスに乗車する.バスに乗り合わせた乗客の殆どが常連である.こんなことも珍しいなと思いながら,今日も無事登山ができて良かったなと思っている.
今回も渋沢駅と小田原駅の接続はそれほどスムーズではなかったが,大船でのバスの接続が良かったので,15時前に無事帰宅する.
終始慎重に登山をしたので,下山後に疲労感が残ることもなかった.むしろ,1週間ぶりの登山で気分は上々.絵を画く気力も漲ってくる.私は改めて適切な登山の効用を再認識した次第である.
…という訳で,今日も”良かった!良かった!”
(おわり)
<ラップタイム>
7:06 大倉歩き出し
7:30 観音茶屋
7:50 見晴茶屋
8:18 駒止茶屋
8:35 堀山の家
9:22 花立山荘
9:39 金冷シ
9:57 塔ノ岳 着(-4℃)
10:37 〃 発
10:54 金冷シ
10:54 花立山(10:58までアイゼン外し)
11:05 花立山荘(11:07まで立ち休憩)
11:32 堀山の家
11:54 駒止茶屋
12:09 見晴茶屋
12:20 観音茶屋
12:37 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1,269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:06
塔ノ岳 着 9:57
(所要時間) 2時間51分(2.85h)
水平歩行速度 7.0km/2.85h=2.46km/h
登攀速度 1,269m/2.85h=445.3m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:37
大倉 着 12:37
(所要時間) 2時間00分(2.00h)
水平歩行速度 7.0km/2.00h=3.50km/h
下降速度 1,269m/2.00h=634.5m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/4e6c38d64417bff11821ce2b72e47bca
「丹沢の山旅」の次回の記事
(なし)
※誤字脱字転換ミスは後刻訂正する.
↧
富士山・樹氷・山ネコとの出会いを楽しむ丹沢;塔ノ岳(今年7回目)
↧