<馬の背付近の霧風景>
熱中症が気になる蒸し風呂のような丹沢;塔ノ岳(今年36回目)
(単独山行)
2014年7月23日(水) 晴山頂は霧
■こんな日に何で出掛けるの…!
天気予報では,「今日は猛暑,この夏で一番暑い日になる…」と盛んに報じている.でも今日は水曜日である.このところ水曜日と土曜日には都合が付く限り塔ノ岳に出掛けることにしている私は,
“猛暑か…,熱中症が怖いな.どうしよう…”
と塔ノ岳に出掛けるのを迷うが,私の心の中に巣喰っているもう一人の私が,
“何処に居ても,暑いときは暑いよ…ならば塔ノ岳へ出掛けようぜ…”
と私をけしかける.そこで私も,
“それもそうだな…どうせ何処に居ても暑いんなら,出掛けるか…”
と決心する.
4時10分に家を出る.外には“もわ〜っ…”とした生暖かい昨日の熱気がしぶとく残っている.まだ明け切らない東の空には三日月(かな?)がキラキラと輝いている.
早朝にもかかわらず,大船まで歩いている最中に,体中が汗ばんでくる.
“何でこんな蒸す暑い日に出掛けるの…”
やっぱり私の心の中は,大船駅に向かいながらも,繰り返し,繰り返し,同じことで迷い続けている,
■後悔しながら大倉から歩き出す
渋沢発6時48分大倉行バスは,平日にもかかわらず,10名ほどの立ち席が出るほどの混雑である.でも辺りを見回しても常連は韋駄天のNMさん,三角髭のTDさん,HNさん,植物に詳しいHさんぐらい.大半の常連さんはご不在.多分どこかの山へ出掛けておられるんだろうと勝手に想像する.
7時頃,バスは無事にバス停大倉に到着する.
バス停脇の広場には,沢山の高校生が集まっている.彼らも塔ノ岳へ登るのだろうか.
今日は常連の方がほとんど居られないので,ほぼ完全な一人旅である.すでに渋沢駅でバス待ちの時間に十分にウォームアップストレッチを済ませているので,山支度を済ませた後,早々に歩き始める.大倉歩き始めは7時07分.ベットリと纏わり付くような空気と熱気.
“蒸し暑くて,歩きにくいな…”
というのが歩き始めの第一印象である.
“しまっタな…こりゃ〜ぁ…ダメだ…”
私は,歩き出してすぐに,こんなに蒸し暑い日に,わざわざ出掛けてきたことを後悔する.家でジッとして居れば良かったのに…!
でも,まあ,折角出てきたんだから,ゆっくり気が済むところまで登ろう…登るのがイヤになったら,そこで下山だ…そう思った途端に気分が楽になる.
歩き出しの急坂を超ユックリ登って,7時15分,やっと登山口に到着する.辺り一面の杉林である.東の方から朝の太陽が真横に杉林を射し込んでくる.木々の緑が日光に照らされて明るく光っている.蒸し暑いけれども実に美しい.
ノソノソ歩きをしていると,後ろからザワザワと人が近付く気配がする.どうやら,先ほどバス停近くで集合していた高校生の集団である.私は道を譲って,高校生達に先に行ってもらう.後で伺うと地元の県立SY高校の生徒さん達だと分かる.颯爽と歩く彼らの後ろ姿を眩しく見送りながら,
“若さって良いなぁ〜…”
とつくづく思う.
<登山道入口付近で高校生に追い抜かれる>
■見晴階段
克董窯を過ぎると舗装道路は途絶える.最近,この辺りで雨が降ったかどうか分からないが,路面が水を含んでジットリと濡れている.こんな日には山ヒルが出るかも知れないので,特に丹沢ベースを通過する頃から,山ヒルが居ないかどうかチェックしながら登り続ける.
7時02分,漸く見晴茶屋を通過して,見晴階段に差し掛かる.ここで何時ものように定点観測の写真を撮る.珍しいことに今日は階段を見上げても,一人の登山者も見当たらない.相変わらず日光が横殴りに照りつけている.
熱中症が何より怖いので,意識してユックリ,ユックリと急坂を登り続ける.いわゆる“頑張らない”登山の実行である.
見晴階段を登りながら,私はいろいろと考えてしまう・・・・・・
’頑張る’と‘努力する’とは違うんじゃないか.
‘頑張る’と‘挑戦する’も,ちょっと違うぞ ‘勝負する’も違うな…
…という訳で,何が何だか違いが良く分からなくなる.でもこれは面白そうなので,あとでもう少し考えてみようと思う.
<見晴階段>
■さわやかな駒止茶屋
モミジ坂をユックリ登る.坂の途中で私と同年配と思われる男性が,立ち止まってしまう.
「暑いですね…ユックリ登りましょ」
と励ます…というより自分自身を励ましている.
8時10分,ようやく一本松を通過する.もう,大倉を歩き出してから1時間を経過している.軽快に歩いていれば,駒止階段をもうすぐ登りきるころである.情けないなと思う一方で,コレデイイノダ!と無理矢理納得する.
一本松を過ぎて平坦な尾根道に入る.尾根に入ると微かに空気が動いている.ほんの少しでも空気が動くと,肌に纏わり付いているベタベタ空気がほんの少し動く.それでほんの一寸涼しくなる.
沿道の青葉が朝日の中で光っているように見えている.
<心地よい尾根道>
■駒止階段
駒止階段に差し掛かる.急で長い階段を見上げるとため息が出てくる.でも,折角ここまで来たのだから…と自分に言い聞かせて,ゆっくり,ゆっくり登って,8時28分,ようやく駒止茶屋に通過する.
大倉からの所要時間は,なんと1時間27分.涼しいときに比較すると20分も余計に掛かっている.この蒸し暑さでは仕方ないなと思いながら,堀山の尾根道に差し掛かる.
丁度そのとき,駒止茶屋で休憩を取っていた高校生が歩き始める.登山口近くで私を勢いよく追い越して行った高校生達である.
<駒止階段>
■堀山の尾根道
堀山の尾根道は高校生に混じって一緒に歩く.歩きながら高校生と雑談.自分の孫と同年代の生徒達との雑談は実に楽しい.
“若さって良いな…”
とつくづく思う.
高校生と一緒に歩いている間は,蒸し暑さを忘れていた.
<高校生と一緒に堀山の尾根道を歩く>
■富士山は雲の中
例によって富士山が良く見える場所で立ち止まる.上空は晴れているが,残念ながら周辺には雲が湧き出ていて,富士山は見えない.見えないけれども,ここからの風景をデジカメに収める.
写真を撮っている内に,高校生グループの後ろになってしまう.どうせ坂道になれば,とても,とても,彼らには付いて行けないので,コレデイイノダ!
<堀山の尾根道で見えない富士山の写真を撮る>
■萱場平
8時45分,ようやく堀山の家に到着する.涼しいときなら萱場平辺りを歩いている時間である.
萱場平までの長い坂道に差し掛かる.私の歩行速度は一段と遅くなる.先ほどまで私のすぐ前を歩いていた高校生グループの後ろ姿は,たちまちのうちに視界から遠ざかる.
相変わらず微風すら吹いてこない.ベトベト空気に纏わり付かれたままの登り道は,とても厳しい.私の歩行速度はますます遅くなる.
9時05分,やっと萱場平に到着する.ここで定点観測の写真を撮る.萱場平には全く人の気配はなく,静まり返っている.
木道を渡っていると,太陽によって熱せられた土から湧き上がる熱気で,蒸し風呂の中を歩いているような気分である.
<萱場平>
■花立山荘
萱場平を過ぎてからも難行苦行の急坂が連続するが,そこは何時もの杵柄.適当に体力を配分しながら,登り続ける.
後7分坂(花立階段)まで,後2〜3分の所で,下山してくる韋駄天のNMさんとすれ違う.
「…今日は風がないので蒸し暑いですね…どうぞお気を付けて…」
とNMさんが私に挨拶する.
NMさんとは,何時も後7分坂の中間ですれ違う.そのことから逆算すると私の塔ノ岳山頂までの歩行時間は何時もより15分程度長く架かるだろうと予想する.
後7分坂を登りきる頃,幾分蒸し暑さが和らいできたと肌が実感する・
9時30分,漸く花立山荘に到着する.山荘からすぐ上に霧が掛かっているのが見える.ここから上は,どうやら雲の中のようである.
大倉から花立山荘までの所要時間は2時間23分.堀山の家からは45分掛かっている.最近の私の平均所要時間と比較すると,今日は15分程度余計に掛かっていることになる.
山荘前のベンチでは男性が1人,休憩を取っている.
<花立山荘>
■馬の背は雲の中
霧のガレ場を花立山山頂を目指して登り続ける.晴れていれば見晴を楽しみながら登る所だが今日は殆ど視界がない.ただ黙々と登り続ける.
9時42分,ようやく花立山を通過する.
馬の背に差し掛かる頃から,霧に霞む山の風景が美しいので,思わず立ち止まって写真を撮る.
何というセミか分からないが,辺りから「ギ,ギ,ギ,ギ,…」という啼き声が聞こえてくる.これも季節を表す風物詩には違いないが,耳障りの悪い啼き声である.
9時47分,金冷シを通過する.
<馬の背付近にて>
■塔ノ岳山頂
金冷シから最初の階段を登っている途中で,下ってくる常連のIIさんとバッタリ会う.IIさんが私に,
「今日は誰も登ってこないですね…」
と話しかける.
「大方の皆さんは,どこかの山へ出掛けているんでしょうね…でも,○○さん,××さんなど1番バスに乗っておられましたよ…」
「皆さん,どこか涼しい所へ出掛けておられるんでしょうね…羨ましいな」
IIさんと数分立ち話をしてから,また,ユックリペースで登り続ける.
“ここまで来れば,どんなにユックリでもすぐに山頂だ…”
10時06分,やっと塔ノ岳山頂に到着する.折角の山頂も余り涼しさを感じない.山頂の温度計を見ると,なんと! 30℃.
“あれ〜っ…! 見間違えたかな…”
目をこすってから,もう一度,温度計を見直すが,やっぱり30℃を指している.いくら蒸し暑いとはいえ,30℃はないだろう…ということで尊仏山荘に入ってから,山荘の温度計を見ると28℃.両方の温度計に2℃の誤差があるが,何れにしても飛んでもない暑さである.
さて,今日の記録である.大倉からの所要時間は2時間59分.やっと1分だけ3時間を切っているが,1分は誤差の内.したがって,今日の所要時間は3時間と言うことにしておこう.
山頂では堀山の尾根道で一緒だった高校生グループが昼食を摂り始めている.
今更,霧で何も見えない山頂からの眺望を写真に撮っても仕方がないが,やっぱり儀式なので山頂周辺の写真を数枚撮る.
<塔ノ岳山頂>
■尊仏山荘
尊仏山荘に立ち寄らずにそのまま下山しようか.それとも山荘に立ち寄って,お茶でも飲もうかと迷っていると,山荘の中からご常連の男性が,窓越しに私を見付ける.そして手を挙げて私に挨拶する.この挨拶に応えて,
“よしっ…今日は山荘に入ろう!”
と決める.
早速300円也のお茶を所望する.というのも,余りの蒸し暑さで,登りの間に1リットルほどの水を飲んでしまい,水の残りが少々心細くなっている.山荘のお茶で水分を補給すればバッチリだという計算もある.
今日の小屋番は,WDさん.山荘の山猫華伊達美弥雄さん(「みゃ〜君」のこと)はWDさんに良く懐いている.そのためWDさんが小屋番のときには,実にユッタリとした動作で客室をウロウロしている.
…ま,それはともかく,華伊達美弥雄さんの元気な姿を見て,私も大いに癒される.美弥雄さんが,私の膝に乗りたいのか近付いてくるが,この時期,ネコちゃんの抜け毛がとても多いので,抱っこするのはカンベンして貰う.
お茶を飲みながら,軽く昼食を摂る.ご常連の男性から,
「今日は誰も来ないですね…」
と話しかけられる.
「1番バスに乗っていた常連は,Hさん他ほんの2〜3名でしたよ…」
男性と話をしている内に,私が一緒になった高校生は,神奈川県立SY高校の生徒だと分かる.神奈川県では県立高校に入れれば立派なものである.
<美弥雄さんが近付いてくる>
■予定のバスを目指して下山
今日は大倉発12時52分のバスに乗ろうと思う.逆算して,10時32分に下山開始.例の高校生より一足先に下山するつもりである.
下山も完全に一人旅である.したがって,外乱条件なしの自由旅.顔見知りと一緒に下山するのみ楽しいが,一人旅も良いものである.ちょっと気になるものがあったら迷わず立ち止まる.何の変哲もないところは急ぎ足で通過する.素晴らしいと思ったら道草をする.遅くなったなと思ったら速歩になる.それでもダメなら走ってしまう.一人旅ならこんな融通無碍な下山が可能である.
金冷シ手前の階段で,登ってくるHさんとすれ違う.さらにもっと下の方で,HNさんとバッタリ.
その後はホタルブクロの写真を撮りながら道草.途中で,またもや軽微な胃痛を感じる.
“この頃,おかしいな…後で病院へ行こう”
と思いながらツムラ17を服用する.数分で胃痛は快癒する.
12時15分,見晴小屋を通過.
“ちょっとノンビリしすぎたかな…”
ということで,フルスピードで下山し続ける.
12時45分,予定通りバス停大倉に到着する.沓の泥を洗い落とす時間を残しながらの到着である.
渋沢,小田原で電車を乗り継いで,14時40分過ぎに無事帰宅する.
<路傍のホタルブクロ>
■今日一日も暑かったな
帰宅後,すぐにシャワーを浴びて,汗を洗い流す.下着を着替えると,実にスッキリした気分になる.
シャワーを浴びてから血圧を測定する.
“ありゃ〜ぁ…,随分低いな…”
胃痛のこともあるので,とりあえずは近くのホームドクターを訪れる.
「先生…血圧がこんなに低いんですが…」
ドクターに血圧を測って貰うと正常値.
どうやら,汗をかいたままいきなりシャワーを浴びたために,血圧が下がったようである.ただ,血圧が下がったからと言って,何の自覚症状はなかったものの,いきなりバタンキューも困りものである.シャワーを浴びる前に,念のため更に水分を補給してから,ユックリとシャワーを浴びるようにしなければ…
さて,ときどきの胃痛は,爪の水虫を治すために飲んでいる薬の副作用だと判明,当分飲む胃薬の処方箋を頂戴する.
その足で,近くの薬局を訪れる.ここも顔見知り.薬剤師から根掘り葉掘り色々な質問を受ける.こうしていろいろな立場の方からコメントを頂戴するのは有り難いことである.
”あ〜ぁ…,私も遂に毎日薬を飲む羽目になったか…年は取りたくないな…”
これ実感である.
それにしても,塔ノ岳詣でが,年寄りの冷や水にならないように,気を付けなければ…
<ラップタイム>
7:07 大倉歩き出し
7:32 観音茶屋
7:52 見晴茶屋
8:38 駒止茶屋
8:45 堀山の家
9:30 花立山荘
9:47 金冷シ
10:06 塔ノ岳頂着(+30.0℃)
10:32 〃 発
10:45 金冷シ
11:06 花立山荘
11:37 堀山の家
11:52 駒止茶屋
12:15 見晴茶屋
12:28 観音茶屋
12:45 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:07
塔ノ岳 着 10:06
(所要時間) 2 時間59分(2.98h)
水平歩行速度 7.0km/2.98h=2.34m/h
登攀速度 1,269m/2.98h=425.8m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:32
大倉 着 12:45
(所要時間) 2時間13分(2.22h)
水平歩行速度 7.0km/2.22h=3.1598km/h
下降速度 1,269m/2.22h=571m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/27dfed216e5a85b20e8360c265cac18b
「丹沢の山旅」の次回の記事
(なし)
※誤字脱字転換ミスご容赦.
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熱中症が気になる蒸し風呂のような丹沢;塔ノ岳(今年36回目)
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