<専用車が泥んこ道にはまる>
[復刻版]
アパチャ山登頂記;第5日目(1);バチェカズェッツ山麓へ移動
(アルパインツアー)
2004年8月10日(火)〜8月17日(火)
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第5日目 8月14日(土)
<ルート地図>
<ベースキャンプの朝>
■素晴らしい夜明け
例によって,私は早朝から目が覚めている.昨日までに念願のアパチャ山登頂に成功したので,今朝は清々しい気分である.今日からのスケジュールは,有り体に言えば,私にとっては余録,どうでも良いが折角だからお付き合いしておこうと思うぐらいの気楽な旅である.
朝食まで,まだ時間がありすぎるので,早朝のキャンプ場を一人で散策する.
蒲鉾テントの外へ出る.外気はヒンヤリとして寒い.上空に多少の雲が湧いているが,今日も天気はまずまずのようである.
蒲鉾テントの近くにあるベンチに行ってみる.昨夜遅くまで,ここでキャンプファイヤが行われていたが,今朝になっても,たき火の跡から煙が上がっている.
空はすっかり明るくなっているが,朝日がまだ当たっていないアパチャ山が聳えている.
アパチャ山の急峻な斜面を見上げながら,あの斜面を登ったんだなと感一入である.
30分ほどで早朝の散歩を終えて蒲鉾テントに戻る.
<早朝のアパチャ山>
■朝食
8時から朝食である.
8時少し前にツアーリーダーの後に付いて,食事棟に向かう.例によって食事棟は沢山の登山客で混雑している.
今朝の朝食のメニューは下の写真の通りである.学校給食のような器で,朝食を美味しく頂く.ちょっと物足りないが…
<ベースキャンプの朝食>
<六輪駆動の専用車で移動>
■ベースキャンプを出発
9時17分,六輪駆動車(以下専用車と表記)に乗車.ベースキャンプを出発する.大きな6輪のタイヤが付いている装甲車のようなゴツイ自動車である.
全員が乗車すると,すぐに発車.現地ガイドの他に鉄砲を持った男性が1人同乗する.彼は万一クマが襲ってきたときのガードマンだという.
クマが襲うと聞いて,えらいところへ来ちゃったなと率直に思う.
<六輪駆動車に乗車する>
■素晴らしい車窓風景
私たちを乗せた専用車は,先日ベースキャンプへ来たときと同じコースを辿って未舗装の山道を下りつつける.専用車は絶えず上下左右にユサユサと大きく揺れ続ける.その度に身体も大きく振られてしまうので,どんなに注意していても,窓際の人は頭を窓枠にぶつけてしまう.
10時35分,専用車はようやく舗装道路に入る.途端にユサユサの揺れは治まる.専用車は見晴の良い平原を走っている.平原の向こうには姿,形の良い三角錐のような山が聳えている.
<平原をひた走る>
■平原のど真ん中で休憩
10時39分,平原の真っ直中で専用車が停車する.ツアーリーダーがトイレ休憩だという.
専用車が停まった近くにある灌木の陰を利用して用を済ませる.この辺りは,冬の間は,多分,大量の雪に覆われているんだろうが,今は夏草が繁茂していて実に爽やかである.
<平原の真っ直中で休憩>
■富士山に似た山が見える
10時50分,休憩を終えて再び専用車に乗り込む.
手許に地図がないので,どちらの方向に走っているのか正確には分からないが,専用車は,ほぼ西南西に向けて走り続ける.
車窓からの景色は雄大である.遠くにアパチャ山が聳えている.そして目の前には山の名前は分からないが,富士山を思わせる三角錐の山が聳えている.この辺りの風景を水彩画で仕上げてみたい気がする.
ノートを取り出して,辺りの風景を素早くスケッチする.
<素晴らしい風景が続く>
■スーパーマーケットで買い物
10時57分,大きなスーパーマーケットに到着する.ここで嗜好品など執拗なものがあったら購入しておくようにツアーリーダーから指示される.
スーパーマーケットの入口の紅白ならぬ紅黄の玉飾りが目を惹く.
店内は少々薄暗く,ちょっと陰気な感じがする.私は特段に買いたいものもないので,ウインドウショッピングに徹する.
日本のスーパーと同じように,日用品,食料品などが売られている.結構品数も多いようである.店内の写真を撮り忘れたので,ここで披露できないのが残念である.
11時37分,スーパーマーケットから発車.
<スーパーに立ち寄る>
<無名の湖畔にて>
■小さな湖に到着
何時の間にか舗装道路は途絶えて,未舗装の悪路に入る.
12時41分,木立に囲まれた美しい湖に到着する.大きさは松原湖ぐらいかな.現地ガイドに湖の名前を伺うが,ハッキリしない.ここでは単に小さな美しい湖としておこう.
専用車から降りる.
雲一つない青空が心地よい.足許の草も柔らか.静まり返った湖は実に魅力的である.ただ,困ったことに,専用車から降りた途端に,ヤブ蚊の大群が押し寄せてくる.ヤブ蚊が出ることが分かっていたら殺虫剤を用意してきたのに…不覚だった!
ヤブ蚊を追い払いながら,草の中を散策する.
<名もない湖の湖畔を散策する>
■パブカジュツ山遠望
湖畔に立って西の方向を見ると,パブカジュツ山が聳えているのが見える.鋭い尖鋒がパブカジュツ山の主峰である.見るからに雄々しく素晴らしい山である.当然のことながら登ってみたいなと思うが,登山道はあるのかな…?
相変わらず纏わり付くヤブ蚊が鬱陶しいが,素晴らしい山を眺めながら,時間の許す限り,あちこちを歩き回る.
<パブカジュツ山を望む>
■湖畔で雑談
秀麗な風景を堪能しながら,三々五々集まって雑談を交わす.湖の畔で遊んでいる人も居る.
私は専用車近くで,現地案内人の方と,片言の英語で他愛のない雑談を楽しむ.
湖畔での休憩を終えて,12時54分,専用車に乗り込んで出発する.
<現地スタッフと雑談>
<もの凄い泥んこ道>
■泥んこで立ち往生
無名の湖から先は,もの凄い悪路になる.専用車は上下左右に大きくユサユサと揺れ通しである.その度に窓枠に頭をぶつけたり,ときには天井に頭をぶつけそうになる.これはもうトレッキングどころではない.歩兵の野戦訓練のような有様である.反面,日本では絶対に味わえない野趣溢れるサバイバルトレッキングだとも言える.とにかく滅多に味わえない経験である.私は身体を大きく揺さぶられながらも,この不思議な体験を面白がっている.
13時丁度,専用車は深い泥濘にはまってしまう.運転手は必死になってアクセルをふかしながら,車体を前後に揺さぶって泥から這い上がろうとするが,車はますます泥の中に沈んでいく.
“絶体絶命!”
<泥にはまった専用車>
■ワイルドな泥んこ歩き
運転手は泥んこにはまった専用車を必死になって泥から脱出しようと試みる.瞬く間に時間がドンドンと過ぎていく.
13時16分,運転手が,
「ダメだ!…,悪いけど全員車から降りてくれ.車体を軽くしてから,もう一度脱出してみるから…」
と私たちに言う.
これは仕方がない.とにかく専用車が泥の中からタッ出してくれなければ,私たちも先へは進めない.
私たちは泥んこ道の隅っこに下車する.当然のことながら靴からズボンの裾に掛けてたちまちの内に泥んこになる.
このの泥んこぶりは,平素,春先や梅雨時に経験する丹沢馬鹿尾根の泥んこ道の比ではない.とにかくもの凄い泥んこ道である.泥に足を取られながらも,先へ進む.
私たちが下車したので,車重もいくらかは軽くなったのだろう.専用車も何とか自力で泥んこを脱出する.
”良かった! 良かった!”
で再び専用車に乗車する.
■トレッキング開始
13時27分,標高420メートル地点に到着する.
ここで専用車から下車して,名前のない湖を目指して,ショートトレッキングを開始する.暫くの間,泥んこ道を歩いてから,広々とした野原に入る.相変わらずヤブ蚊がしつっこく付きまとってくる.
<泥んこ道を歩く> <原っぱの中を歩く>
■湖畔に到着
14時08分,私たちの歩く方向に先回りしていた専用車に,もう一度乗り込む(標高470メートル地点).トレッキング中に標高差で50メートルほど登ったことになる.
14時40分,私たちを乗せた専用車は再び泥んこにはまって動けなくなる.私は内心で,
”好い加減にしてくれ〜ぃ…”
と悲鳴を上げる.
“オレは戦争の訓練に参加しているんじゃないぞ!”
またまた運転手の悪戦苦闘が始まるが,自力ではなかなか泥沼から這い上がることができない.その内に運良く前方から六輪駆動車が下ってくる.この六輪駆動車にロープで引っ張られ,漸く2回目の泥沼から脱出する.
14時27分,専用車は綺麗な湖の湖畔に到着する.専用車から下車する.
現地ガイドに湖の名前を聞くが,とくに名前は付いていないという.
専用車の車体は先ほどの2回の泥んこ道で,すっかり泥だらけになっている.
<泥で汚れた専用車>
<ピクニック気分の昼食>
■野外食堂
下車した広場の一角に,2脚のテーブルが並べられている.野外食堂である.
現地スタッフの案内で,テーブルに向かう.どうやらテーブルの上には,私たちの昼食が並べられているようである.
いよいよ楽しい野外ピクニックの始まりである.
<野外食堂>
■テーブルにズラリと並ぶ昼食
テーブルの上には昼食弁当がズラリと並んでいる.でも椅子がない.
“あれ〜…,立って食べるの?”
と一瞬戸惑う.
要するに,テーブルの上から1人1皿ずつ受け取ったら,この近くの野原に座って食べろと言うことである.
<テーブルの上に昼食が並んでいる>
■昼食の中味
昼食を受け取る.
そう…
丁度,国際線飛行機の機内食のような感じである.プラスチックの小さなお盆の上に,パン,野菜,果物類が並んでいる.多少バサバサ感があるが,美味しく頂けそうである.
<昼食のメニュー>
■野原に座り込んで昼食
昼食を受け取った私たちは,適当に野原に座り込んで,昼食を摂る.爽やかな日射しが心地よい.日が当たるところでは飛び回るヤブ蚊もほとんど居ないので,実に爽快である.
”これが本当のピクニックだな”
と思いながら,ゆっくりと中食を楽しむ.
でも,今日は快晴だから良かったものの,もし雨だったら悲惨だなと,フト思う.
昼食後は今日のメインテーマであるフラワートレッキングに出かける予定である.
<野原で昼食>
(つづく)
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