<遠足の行き先を投票で決める>
敗戦前後の余話:何もなかったけど愉快な授業風景
(戦中戦後の思い出)
2020年8月21日(金) 晴・猛暑
今日も蒸し暑かった.連日の猛暑日.
午前中,例によって,”せっせ”と頭の体操を続け,何とか農機内にレポートを提出できる目鼻がついてちょっとホッとしている.そして,例によって13時~15時頃の一番蒸し暑い時間に定番の大船駅周回コースを一回りしてきた.歩数は毎度11,000歩あまり.帰宅後,シャワーを浴びて30分ほど昼寝.極楽,極楽.
8月も下旬になると朝明るくなる時間が随分と遅くなり,夕方もどんどん早まっている.なんだか気分はブルーだな.でも8月中にもう少し「敗戦前後の余話」を続けたいなと思っている.
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さて,それでは舞台を昭和20~21年頃にバックしよう.ちょうど敗戦の翌年,私が中学1~2年頃の授業風景をちょっと振り返ってみよう.
このシリーズで何回も繰り返しているが,昭和20年に日本が無条件降伏したときに私は旧制中学1年生だった.教育内容は,敗戦前後で掌を返したように激変した.ついこの間までは鬼畜米英を喧伝していたのに,急に180度急旋回して,民主主義だの自由主義だのがうるさくなった.今,振り返ってみると肝心の先生方もにわか勉強で実質が良く分からないまま”自由だ民主だ”と言っていたなと思う.
昭和21年だったかと思う.ある日,クラス担任の先生から,
「遠足に行く候補地を,生徒の投票で決めてください・・・」
ということになった.
”何? 投票! しゃらくせー”
一部の悪ガキがひそひそ話.
”面白れえ! オイッ・・・上田公園にしちゃおう・・・”
と言い出す.それを聞いた周囲の席に座っていた悪ガキが,投票用紙に「上田公園」と書いてしまった.
当番2人が投票用紙を集め,黒板に5票ごとに「正」の字が1字作れる標示をつかって集計する.その結果,1クラス約50人の生徒の中で,圧倒的に多かったのが上田公園になってしまった.もともと中学の敷地は上田城主の主屋の跡地である.従って上田公園の入口までの距離はせいせい500メートル程度しかない.
この投票結果には,悪ふざけをした生徒もさすがに参ってしまった.
先生が顔を赤らめながら,怒鳴るようにして生徒を諭す.
「投票結果が,上田公園なら,この結果に従うしかないじゃないか・・・これが民主主義というものだ・・・」
私たちは赤面した.せっかく楽しみしていた遠足の行き先が,目と鼻の先にある上田公園とは・・・情けない!
結局,この投票結果は生徒の総意で無効となった.その後,遠足で何処へ行ったのかは忘れてしまった.
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さて次は,習字の話題である.遠足の話題よりもう少し前の頃だったと記憶している.
当時,週番という制度があった.
生徒2人ずつ1組になって,学校でのできごとを1週間の間,日誌に記帳して担任に提出する.翌週は次の当番に引き継ぐという仕組みである.
多分,紙ひもで綴ったノートだったかと思う.縦書きで毎日2~3行書くようなフォーマットだった.
当時,物資が極度に不足していた.
新聞も,紙不足で,ついにA3ぐらいの大きさの紙1枚になってしまった時代である.
今の人たちには想像もできないだろうが,当時,習字に使う紙は古新聞と決まっていた.半紙などほとんど見たこともない貴重品だった.
ところが,肝心の新聞も紙不足で,だんだんとページ数が少なくなり,ついに1枚になってしまうと,習字に使う古新聞にも事欠くようになる.ついには,習字はしたくても紙がないのでできなくなる.
古新聞がないと習字ができないので習字の授業は自習に切り替える.教師は教壇に座ったまま,生徒は自分の机に座ったまま授業時間が終わるまで自習する,
そんな日にたまたま当番だった私は,同じく当番だった生徒と,
「日誌になんて書こうか…」
と相談する.
すると,その生徒は,
「”紙なき自習”だな.」
と言う.なるほどそうだということで,日誌にうやうやしく「紙なき自習」と記入する.
1日の授業が終わり,日誌を担任に提出する.
担任は,「紙なき自習」の記事を読んで苦笑いする.
当時は,まさに,真の意味でのペーパー・レス時代だった.
今考えると,メチャメチャな時代だったが,当時は別に普通のこと,特段にビンボーだとも感じなかったし,不満でもなかった.
<週番日誌のイメージ>
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当時と比較すれば,今は飽食の時代.それでも人々の不満は鬱積している.当時は何もかも不足していたので不満は当然あったと思うが,満足感も今と同じぐらいだったのではないかと思う.要するに各人のQOL(Quality of Life)は当人が自分の生活にどの程度満足しているかで決まる.この満足度と物質の豊かさとは必ずしも大きな相関はないようなきがしてならない.
(おわり)
「戦中戦後の思い出」の前回の記事
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(なし)
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