<霧雨の中,車座になって昼食を摂る>
[復刻版]
ルアペフ山・タラナキ山登頂記:第7日目(3):タラナキ山登頂(3)
(山旅スクール5期同窓生)
2006年1月27日(金)〜2月4日(土)
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第7日目;2006年2月2日(木)(つづき) 霧ときどき小雨
タラナキ山から下山
<ちょっとした行き違い>
■バンダナが落ちている
タラナキ山頂で軽く食事を摂った私達は,14時15分に下山開始.
風はそれほど強くないものの相変わらず霧雨が降りしきっている.山頂から岩稜を下って,クレーターの雪渓に降りる.緩やかな下り坂の雪渓を粛々と下る.辺りには物音一つなく静寂そのものである.
雪渓の終わり付近,右側に「サメの歯」が屹立しているところで,突然,妙なものが落ちているのを発見する,
雪渓の上に,丁寧に畳んだバンダナが落ちている.そのバンダナの上にスナック菓子がチョコンと置いてある.
「・・・先ほど,ここを通ったときには,なかったよ・・・このバンダナ,ドッジさんのものだよ・・・」
と誰かが言う.
「これ,一体どういうことだろう・・・」
一同,突然現れたドッジさんのバンダナに困惑する.
肝心のドッジさんは.この辺りに見当たらない.
岩山好きのドッジさんのことだから,「サメの歯」の岩に登っているのだろうか.まさか・・・いくら岩好きでも,脆くて危険な岩を登るはずがない.では,どこかで迷っているのだろうか.一同,困惑.大変心配する.
「・・・ドッジさ〜ぁ・・・ん・・!」
と大声で何回も呼んでみる.
全く反応がない.
バーダーさんが,
「笛を吹いてみようか」
と提案する.
バーダーさんの近くに立っている私の鼓膜がビリビリするほど大きな笛の音が,雪渓に吸い込まれるように響き渡る.もう一度,するどい笛の音が響き渡る.
残念ながら,何の反応もない.
■遅参組と合流
ガイドが,
「ここに留まっていても仕方がない・・・とにかく先へ進みましょう」
と提案する.
雪渓を渡り終えて,岩稜を少し登り,リムに出る.
ここからはガレた露岩帯の下りの急坂が連続する.フクロウとバーダーがどんどんと先に降りていく.下りが苦手な私は,到底,同じ速度では降りられない.私のすぐ後ろから降りてくるビアンコさんやスケルトンさんに,私を追い越して先に進むように勧めるが,お二人ともユックリ降りるという.
私達は,フクロウとバーダーから少し遅れて,降り続ける.
辺りには相変わらず霧が立ち込めている.
やがて,私達の位置から50メートルほど下ったところを,ゆっくりと降りているドッジさんと酋長さんの姿が,霧の中からシルエットになって見え始める。
だれかが,
「ドッジさぁ〜ん・・・」
と声を掛ける.
私達はすぐに2人に追いつく.
「・・・雪渓に置いてあったバンダナ,ドッジさんのものでしょう?」
と誰かが質問する.
「そうよ・・・」
とドッジさんは屈託もなく答える.
「・・・置いてあるバンダナの意味が分からず,戸惑いましたよ・・・どこかへ行ってしまったのかと心配しましたよ・・・まさかいくら岩好きでも「サメの歯」に登るわけはないし・・・」
と何人かが異口同音に話しだす.
「アタシ,ここまで来ましたよという意味で,あそこにバンダナを置いたのよ・・・皆さんが意味が分からなくて迷うなんて,ちっとも考えていなかったですよ・・・」
とドッジさんらしい返事が返ってくる.
やっぱりドッジさんは,ドッジさんである.
<思いがけずお寿司を頂戴する>
■ガイドのご厚意
ここからは「速い足」組と「遅い足」組が一緒になって降りる.
14時55分5,標高2,220メートル地点で,少し平らになっている場所で休憩を取ることになる.
ガイドのジョンさんが,
「・・・みんなタラナキ山の山頂まで登ったから,ご褒美をあげるよ・・・」
と言いながら,リュックの中から大きな包みを取り出す.
包みの中は,なんとお寿司である.ドライアイスで冷やしながら鮮度を保たせている.あまりに突然,お寿司が目の前に現れたので,一同大変ビックリする.勿論,大喜びである.のり巻き,イカ,鮭の握りなどがギッシリと詰まっているパックが一同に回される.
久々のお寿司は何とも美味しい.しかもタラナキ山登頂の達成感で気分が高揚しているときに味わうお寿司である.それにも増して,涙が出るほど嬉しいのが,ジョンさんの心遣いである.しかも,これまでお寿司を持参している気配もなく,いきなり魔法のようにリュックからお寿司が出てくる演出には泣けてくる.
日本を出発して1週間余り.ただでさえ,大分,日本食が懐かしくなっている時だから尚更である.
<ガイド頭から頂戴したお寿司>
■時計が故障
ガイドのジョンさんの粋な計らいで,美味しい寿司をご馳走になった私達は,15時05分に再び下山を開始する.
私たちは濃い霧の中を黙々と下る.相変わらず急傾斜の露岩帯である.転倒しないように注意しながらひたすら下り続ける.
平素から防水がおかしくなっていた私の時計「スント」が,またまたおかしくなってくる.水が侵入していると思われるところにビニールテープを貼り付けて置いたのだが,どうも完全には防水できなかったようである.
昼食を食べ始めた頃から,スントが誤動作を始める.表示が「3」であるべき所が「8」になってしまう.だから,例えば「13:35」は「18:85」と表示されてしまう.その内に,いろいろなモードに勝手に的切り替わって,激しくブリンクするようになる.
こうなると,最早,時計としては全く機能していない.
私は,一刻も早く,電池を時計から取りだして,電池の消耗を防ぎたいと思うが,それもできない.そう言えば,今までも,この「スント」は,雨の中で何回もおかしくなったことがある.その度ごとに,乾燥させると,何とか機能を取り戻していたが.今回は今までおかしくなったときに較べて,どうも重傷のように思える.
それはとにかく,時計が壊れると,肝心のログを記録することができなくなる.
しかたなく,私は休憩の度に,周りの人に,
「今,何時?」
としつこく聞き回ることになる.
<一気に下山>
■まるで富士山の須走だ
砂礫が積もっているガレた急坂になる.丁度,富士山の砂走りのような感じである. ガイドが,
「早く降りたい人は,先に行っても良いですよ・・・」
と,早く降りたくてジリジリとしているフクロウやバーダーに声を掛ける.
そこで,フクロウ,バーダー,私の順に,「砂走り」の斜面を,かなりの速度で下り始める.
登山靴の底がすぐ減ってしまうのが,とても心配だが,
「・・・ザ〜ッ,,・・・ザ〜ッ,・・・・」
と一足ごとに2〜3メートル下ることができる。まことに痛快である.
正確な時間は分からないが,かなりの時間,下りつづける.
そのうちに,登山道の傾斜もだんだんと緩くなり,かなり歩きやすくなる.
ここまで来ると,私達も大分麓まで下ったなという実感が涌いてくる.そして,登りで苦労した「犬がハアハア」の木道を一気に降りる.
降りたところは,深い谷間の露岩帯になっている.登っているときは気が付かなかったが,下ってみると,かなりきつい傾斜である.
気が付くと,辺りの霧が少し薄くなっている。そして,視界もかなり良くなっている.
やがて,眼下にロッジと電波塔が見え出す.ここで,やっとかなり下山したことを実感する.
■ロッジで休憩
岩の間のガレ道を少し下って,無事,ロッジに帰り着く.ビアンコさんに,ロッジへの到着時間を聞く。16時17分である.
一同,小屋に入り小休止する.トイレを済ませ,身支度を整え,16時29分,ロッジを出発する.
ここからは電波塔の運搬道に沿って降りるので,道幅も広くなり,歩きやすくなる.とはいえ,一般道にしてはかなり急な下り坂がつづく.
<山麓からの眺望>
■足の速い人が飛び出す
登山の最終段階,つまり終点に近くなると,ビアンコさんは,何時もことさらに元気である.そして,もの凄い勢いでラストスパートをするのが標準パターンになっている.したがって,最近では,このビアンコさんのラストスパートがないと,何だか気が抜けたような物足りなさを感じる。習慣とは恐ろしいものである.
海外のトレッキングでも同じである.
まずは,フクロウさんとビアンコさんが先頭に飛び出す.その後をバーダーさんと私が追いかける.私の後にスケルトンさんも後に続く.もの凄い勢いで,フクロウ+ビアンコ組が先を急ぐ.それに負けるものかとばかり,バーダーと私が追いかける.ついにはフクロウさんとビアンコさんは小走りになる.それを私は早足のまま追いかける.
いつの間にか,辺りの霧は消えて,下界の見通しが良くなっている.ただ,上空には暗雲がたれ込めている.
標高が下がったために気温も上がっている.そのため,何となく伸びやかな気分になる.私は,下界を眺め,デジカメに風景を撮ったりしながら,相変わらず先行の2人を追いかける.
広いカールのトラバース道を通過する.見通しが素晴らしい.後ろを振り返ると,トラバース道の遙か後方を,私達の仲間が集団となって降りているのが見える.
<もの凄い勢いで下山する先頭組>
<専用バスでホテルに戻る>
■駐車場に到着
17時14分,車止めのゲートを通過する.
私より一足早くゲートを通過したフクロウが,私達がゲートを通過する瞬間の写真を撮る.
バスの運転手が,ゲート近くまで,私達を出迎えに来ている.
「・・・早いね。頂上まで登ったの?」
と私達に聞く.
「勿論,登りましたよ…」
運転手と一緒に駐車場まで下る.
<駐車場に到着>
■ガス入り水で靴を洗う
足下を見ると靴がドロドロになっている.運転手に,
「この辺りで,靴を洗えるところはないですか・・・」
と聞く.運転手は,しばらく考えていたが,
「う〜ん,,,このあたりに,水道はないですね」
と答える.
私は,ふと,ランチボックスと一緒に貰った「ガス入り」の水,0.75リットルが手つかずのままリュックの中に残っているのを思い出す.そこで,その水を使って,靴の泥を洗い落とすことにする.
水を靴に掛けると,水中のガスが程良い泡を立てる.その泡が靴の泥をうまく洗い流してくれるように感じる.
私達先行組が到着してから,10分ほどして,最後尾の方々も到着する.
ガイドが,
「・・・下りは,結構,皆さん速いですね・・」
と感想を漏らす.
■ホテルに到着
17時41分,私達を乗せたバスは,ホテルへ向けて発車する.
往路と同じ道を辿って,18時12分2,無事,ホテルへ到着する.
すぐに部屋へ戻る.そして,何はさておき風呂に入る.心地よい疲労感があって,とても気分がよい.
(つづく)
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(編集中)
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