<大山山頂からの眺望>
新春の丹沢;残雪と泥濘の大山初詣
(山旅スクール5期同窓会)
2013年1月11日(土) 晴
<ルート地図>
<男坂を登る>
■バス停大山ケーブルから歩き出す
山旅スクール5期同窓仲間で,毎年,恒例の大山初詣を行っている.今日は例年通り大山初詣でを行う予定である.
8時30分,小田急線伊勢原駅集合.参加者はノシイカさんことTBさん,動く冷蔵庫のOTさん他3名,私を加えて総勢7名である.私以外全員女性群である.つまり「姦+姦」という凄い組み合わせである.私は内心で,
“怖いったらアリャシナイ…!!”
と恐れおののく(嘘ですよ!).
定刻,全員が揃う.早速,大山ケーブル行のバスに乗車する.新年明けてから,もう11日も経っているせいか,バスは例年より土曜日にしては幾分空いているような感じがする.
バス停大山ケーブル到着後,ストレッチなどを済ませて,9時13分に歩き出す.
<バス停大山ケーブルから歩き出す>
■追分社から男坂へ
商店街を抜けて,9時27分,追分社に到着する.ここで衣服調整.
私たち以外にも,何組かの登山グループがここで休憩を取っている.9時31分,衣服調整を済ませて,男坂に向かう.
私たちのすぐ前を行くグループの男性が,目の前の急階段を見て,
「うわ〜ぁ…(傾斜が)45度ぐらいあるな…」
と言いながら仰天する.
実際の傾斜がどの程度あるか私には分からないがとにかく大変な登り階段が始まる.
<追分社;写真に写っている方々は私たちとは無関係>
■きつい登りの男坂
前を行く男性が傾斜が45度もあるという階段を登り切ると,森林の中を登る長い階段道になる.上を見上げると,登るのがイヤになるほどの階段が見えている.しかも階段の段差が大きいところが多いので,思わず,
“ウンコラショ…!”
という掛け声が出てしまう.
きつい階段道になると,どうしても登攀速度に差があるので,列がばらけてしまう.先頭を行く人たちはときどき立ち止まって後ろの人が追い付くのを待ちながらの登山になる.
<男坂は急階段の連続だ>
<阿夫利神社下社>
■ボンちゃんとチャイちゃん
10時12分,ようやく女坂との合流点に到着する.そして,その先のトイレの前で,トイレ休憩を取る.
そのとき,小さな犬を連れた男性を見掛ける,
“あっ…! チャイちゃんとボンちゃんだ!”
久々の再会である.
ボンちゃんは塔ノ岳のご常連.たまたま塔ノ岳に登られる曜日が私とずれているので,ここ1〜2年,塔ノ岳でお会いすることもなかったが,なかなかお元気そうである.
チャイちゃんは,小さいけどとても利口でお行儀の良い犬である.登山中はトイレに行かないし,むやみに吠えることもない…というより,私は過去に何回となくチャイちゃんに会っているが,いちども吠え声を聞いたことがない.
何とも嬉しい再会である.ちょっとの間,チャイちゃんを抱っこさせて貰う.
<ボンちゃんとチャイちゃん>
■阿夫利神社下社参拝
10時26分,沢山の参拝者に混じって,阿夫利神社下社を参拝する.
どちら側からどう潜るのかは忘れたが,適当に輪を8の字に潜ってから下社を参拝する.心の中で,
“今年も無病息災で過ごせますように…”
と願を掛けるが,同時に,
“それは無理かな…”
という気持ちも交錯してしまう.
折角,大山まで来たのだから,大山名水を持ち帰ろうかと,急に思い立つ.ついでに名水入れのボトルを200円也を志納して入手する.これまでは長い円柱状のボトルだったが,今回入手したボトルは一般の飲料水を入れるボトルと同じ形をしている.ボトルの胴体に「大山名水」と印刷されたラベルが貼ってある.このボトルに水を入れると,なんだかお酒のように見えてくるから面白い.
<阿夫利神社下社参拝;写真に写っている方々は無関係> <大山名水>
■大山山頂を目指して
10時42分,大山山頂を目指して,いよいよ登山道に入る.
いきなりの急階段である.足許には残雪が見え始める.滑りやすくなっている階段を慎重に登って,山道に入る.
沢山の登山者に混じって,極,極,低速で登り続ける.それでも列の前と後ろではどうしても距離が開いてしまう.時々立ち止まって後続が確実に登ってくるかを確かめながら登り続ける.
標高が高まるにつれて残雪が次第に多くなる.ところどころ軽アイゼンを装着した方が良さそうなところもあるが,直ぐに日光が当たって雪が溶けた場所になる.そんなことを繰り返しながら,何時アイゼンを装着しようかと思案しながら登り続ける.
<登山道に入ると直ぐに行が見え始める>
■富士見台
11時31分,三叉路のベンチで一休みする.
私たちの直ぐ後を登ってきたグループの男性が,エリアマップを開いて,
「ああ…ここがヤビツからの道との合流点だ…」
と仲間に言っている.黙っていようかと思ったが,
「ヤビツからの道との合流点は,まだまだずっと上の方ですよ…」
と注意する.
ここから先はさらに踏み固められた残雪が増え始める.ところどころ,滑りやすくなっているところがあって,4本爪の軽アイゼンが欲しくなるが,すぐに雪が溶けた場所が出てくる.
11時53分,尾根に突き上げて,富士見台に到着する.
残念ながら雲が多くて,富士山は裾野だけしか見えていない.
富士山の手前には,急傾斜の大倉尾根が見えている.今日の土曜日,私の塔ノ岳詣での定例日である.もし,大山へ来ていなければ,今頃は仲間と一緒に大倉尾根の山麓を下山しているだろうなと想像する.
<富士見台;残念ながら富士山は雲の中>
■ヤビツ峠分岐
富士見台を過ぎると残雪がさらに増え出す.滑りそうでオッカナビックリ下山してくる登山客とすれ違いながら登り続ける.足の速い人と遅い人の差がさらに顕著になる.
12時15分,ヤビツ峠分岐に到着する.ここで暫くの間後続の方々の到着を待つ.
ここまで来たら大山山頂までは後僅かである.多少滑りやすいところもあるが,軽アイゼンを装着するまでもないので,アイゼンなしで登り切ることにする.
<ヤビツ峠分岐>
■山頂前の鳥居
山頂に近付くにつれて残雪はますます多くなる.
12時26分,山頂直下の鳥居を潜る.鳥居の前ですれ違った下山中の女性が,
「この鳥居から先が,とっても長いんですよ…!」
と私にコメントする.
私は,このコメントを聞いて,キョトンとする.
ここから山頂までは後僅かである.私は,山頂までのほんの数十メートルの距離だが,思い切り速度を上げて登らせてもらう.バス停大山ケーブルからここまで足の遅い方と一緒だったので,申し訳ないが私には“遅い”というフラストレーションが貯まっている.だから,ほんの数十メートルでも自分なりの速度で登れば,このフラストレーションも随分と解消される.
12時29分,大山山頂に到着する.
<山頂直下の鳥居を潜る>
<大山山頂>
■大山山頂からの眺望
大山山頂で,ほんの1〜2分,一行が到着するのを待つ.その間に,山頂からの眺望をデジカメに記録する.そして阿夫利神社上社を詣でる…が,数名の登山客が社殿の前で神様に尻を向けて座り込んでいる.私は心の中だけで,
“この罰当たりめ…神様の通り道にお尻を向けてはダメですよ”
と,この人たちを諭す(要するに声に出して諭したわけではないので,なにもしないのと同じことだ).
バス停大山ケーブルを歩き出したのが9時13分,私が山頂に到着したのが12時29分,従って所要時間は2時間16分.その間に登った標高差は1,040メートル.したがって1時間当たり平均で318メートル登っていることになる.これは勿論休憩時間込みの値である.
“ゆっくりかと思ったけど,意外なほどマアマアの速度ではないか…”
と私は納得する.
山頂からの眺望は素晴らしいが,何となく霞が掛かっている.それだけ今日の天気が暖かいのだろう.
<大山山頂>
■空にはハングライダー
突然,同行者の1人が,
「ほら…あそこを見て.気持ちよさそう〜」
と上空を指さす.
なるほど,上空に1台のハングライダーが,気持ちよさそうに空中を舞っている.とはいえ,高い所が嫌いな私は,ハングライダーを見ているだけで怖くなる.
<青空にハングライダー>
■凛とした丹沢山塊
大山山頂は沢山の登山者で賑わっている.どこかで場所取りをして一休みしようかと思う.そのとき,
「食事の前に,(山頂の)後ろに回って,塔ノ岳を見ましょうよ…」
とTBさんが提案する.
もちろん異論はない.
山頂には沢山の残雪があるので,滑りやすくなっている.滑らないように慎重に山頂の裏手に回る.
目の前にお馴染みの塔ノ岳が見えている.尊仏山荘の屋根に真っ白な雪が積もっている.塔ノ岳の右手には丹沢山に連なる尾根,そしてその先には蛭ヶ岳が顔を出している.実に雄大で凛とした風景である.
丹沢の山々を眺めている内に,無性に塔ノ岳に登りたくなる.
“今日,塔ノ岳に登っていたら,ひょっとしたら樹氷が見えたかもしれないな…”
私にとっては,
“やっぱり,大山よりは塔ノ岳だな”
と胸の内だけで思っている.
<大山山頂から塔ノ岳,丹沢山を望む>
■束の間の昼食
12時40分,大山北尾根の下山口にある建物の軒下に座り込んで,昼食を撮る.
例によって,動く冷蔵庫さんことOTさんから,ネーベンの提供がある.随分と重かったろうなと想像しながら,お裾分けを頂戴する.
その内に,頭上に大きな雲が湧いてくる.これまで太陽の光で暖かかったのに,雲に遮られて,日が陰るとやたらに寒くなる.たちまちの内に手がかじかむほど身に堪え始める.
「こりゃ〜ダメだ! 早く下山しましょう…続きは見晴で食べることにしましょう…」
とノシイカさんが提案する.
<OTさん提供のご馳走>
<見晴で一休み>
■残雪と泥んこの下山道
一同,軽アイゼンを装着して,13時10分,大山山頂から見晴へ向けて下山開始.
山頂から暫くの間は,残雪タップリのジグザクな急階段が連続する.ときどき登ってくる登山者とすれ違う.
山頂から山腹に差し掛かると,雪道と融雪道が向後に現れるようになる.さらに下山し続けると,超泥んこ道が連続するようになる.泥んこで急な下り坂は,アイゼンを装着していた方が歩き易いので,アイゼンは履いたまま下山し続ける.
泥が登山靴にへばり付いて足が重くなる.ぐちゃぐちゃの泥んこ道が,これでもか,これでもかというほど連続する.
<中腹から泥んこ道が始まる;山腹はもっとひどい泥んこ道だ>
■見晴で一休み
14時34分,ようやく見晴に到着する.ここまでのラップが例年より約1時間遅れている.
振り返ると.今下ってきた大山が高い所に見えている.天気が下り坂らしく上空一面を雲が覆っている.
見晴のベンチでは,たくさんのグループが休憩を取っている.私たちも空いているベンチに腰を下ろす.
<見晴から大山を見上げる>
■昼食の続き
ベンチに陣取った私たちは,大山山頂で中断した昼食の続きを始める…が,随分と時間が押している.このままモタモタしていたら,下山し終わる頃には日が暮れてしまう.
昼食はソソクサと切り上げて,14時47分に見晴を出発する.
<見晴で昼食の続きを摂る>
<途中から別行動で家路へ>
■下社広場へ
見晴からトラバース道を下社に向けて歩く.この谷間は雨嵐によってかなり荒れるらしく,あちらこちらに嵐の爪痕が残っている.
15時04分,漸く二重滝を通過する.
私たちのグループの先頭と後ろの方ではかなり距離が開いている.
<二重滝側の神社>
■ケーブルカーで下山
私は,自宅に傷病中の家内が居るので,なるべく早く帰宅したい.
そこで,下社広場で,グループの皆様とはお別れして,大山ケーブルを利用して下山することに決める.女坂を下れないのは残念だし,“かんき楼”での豆腐料理をパスするのも残念だがやむを得ない.
15時15分に大山ケーブル「しもしゃ」駅に到着する.丁度,15時20分発のケーブルの改札が始まったところである.ラッキー.450円也の運賃を支払って乗車.
所要時間6分で,終点の「おいわけ」駅に到着する.さすがにロープウエーである.徒歩で下ったら結構時間が掛かるところを僅か6分で下山してしまう.
<大山ケーブル「しもしゃ」駅>
■大急ぎで電車を乗り継ぐ
私は「おいわけ」からバス停大山ケーブルまでの商店街をかなり速い速度で下山する.途中,道幅一杯に広がってノロノロと歩いているグループをイライラしながらかき分けて下る.
15時35分,バス停大山ケーブル駅に到着する.靴の泥を水洗いできるところがないかなと思いながら辺りを見回すが見当たらない.そうこうしている内に15時42分発伊勢原行のバスの出発時間が迫る.私は道路でバタバタと靴の泥をはたき落としてからバスに乗車する.でも,靴の泥は殆ど取れていない.
私は運良くバスの席に座れたが,瞬く間にバスは登山客で満杯になる.大混雑だ.
16時03分,バスは伊勢原駅に到着する.うまい具合に16時06分発相模大野行急行電車に乗車する.席に座ってからスパッツを外す.スパッツには泥が沢山付いていたらしく電車の床に泥が散乱する.
“参ったナ…でも,どうしようもないな.小田急さんゴメンナサイ…”
ということで,相模大野で快速急行藤沢行に乗り換える.そして,大船駅経由で,17時30分頃,漸く帰宅する.
■家の玄関も泥だらけ
自宅の玄関で登山靴を脱ぐ.玄関が靴から落ちた泥で随分と汚れてしまう.すぐに登山中に着ていた衣類を洗濯する.スパッツが泥だらけなので,洗濯機に入れる前に水洗いをするが,下水管が詰まってしまうのではないかと思うほどの砂が流れ落ちる.これはもう自分で掃除するしかない.
“また,仕事が増えたナ…”
実は家内の怪我の回復がまだ十分ではないので,炊事,洗濯,掃除,買い出しなどのムスケルアルバイトの70〜80パーセントは,目下の所,私が担当している.だから,今日も早く自宅へ帰ったんだ.
帰宅後直ぐに家内の指揮下で夕食の準備をする.
もう,こんなパターンの生活を2ヶ月ほど続けている…が,結構楽しくやっている…と,思うようにしている.今は子供達もとっくに巣立っているので,老夫婦2人だけの生活が続いている.久々に2人で台所に立つ…これはもう,どうみても新婚時代の生活と同じではないか.こうポジティブに思うことにしている.
…と,言うわけで,今日もマア良かった,良かった.
<ラップタイム>
9:13 バス停大山ケーブル歩き出し
9:27 追分社(事小坂を登る)
10:12 女坂と合流
10:26 阿夫利神社下社(10:42まで参拝休憩)
11:53 富士見台
12:15 ヤビツ峠分岐
12:29 大山山頂(13:10まで参拝昼食休憩)
14:34 見晴(14:47まで)
15:15 大山ケーブル「しもしゃ」駅着
[山行記録]
■水平歩行距離 5.9km
大山ケーブル→大山山頂 2.9km
大山山頂→しもしゃ駅 3.0km
■累積登攀高度 1,040m
■累積下降高度 672m
■上り所要時間(休憩時間込み)
バス停大山ケーブル発 9:13
大山山頂着 12:29
(所要時間) 3時間16分(3.27h)
水平歩行速度 2.9km/3.27h=0.89km/h
登攀速度 1,040m/3.27h=318.0m/h
■下り所要時間(休憩時間込み)
大山山頂発 13:10
しもしゃ駅着 15:15
(所要時間) 2時間05分(2.08h)
水平歩行速度 3.0km/2.08h=1.44km/h
下降速度 672m/2.08h=323.1m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/42248975b88d13af206b01faa5c7258a
「丹沢の山旅」の次回の記事
(なし)
新春の丹沢;残雪と泥濘の大山初詣
(山旅スクール5期同窓会)
2013年1月11日(土) 晴
<ルート地図>
<男坂を登る>
■バス停大山ケーブルから歩き出す
山旅スクール5期同窓仲間で,毎年,恒例の大山初詣を行っている.今日は例年通り大山初詣でを行う予定である.
8時30分,小田急線伊勢原駅集合.参加者はノシイカさんことTBさん,動く冷蔵庫のOTさん他3名,私を加えて総勢7名である.私以外全員女性群である.つまり「姦+姦」という凄い組み合わせである.私は内心で,
“怖いったらアリャシナイ…!!”
と恐れおののく(嘘ですよ!).
定刻,全員が揃う.早速,大山ケーブル行のバスに乗車する.新年明けてから,もう11日も経っているせいか,バスは例年より土曜日にしては幾分空いているような感じがする.
バス停大山ケーブル到着後,ストレッチなどを済ませて,9時13分に歩き出す.
<バス停大山ケーブルから歩き出す>
■追分社から男坂へ
商店街を抜けて,9時27分,追分社に到着する.ここで衣服調整.
私たち以外にも,何組かの登山グループがここで休憩を取っている.9時31分,衣服調整を済ませて,男坂に向かう.
私たちのすぐ前を行くグループの男性が,目の前の急階段を見て,
「うわ〜ぁ…(傾斜が)45度ぐらいあるな…」
と言いながら仰天する.
実際の傾斜がどの程度あるか私には分からないがとにかく大変な登り階段が始まる.
<追分社;写真に写っている方々は私たちとは無関係>
■きつい登りの男坂
前を行く男性が傾斜が45度もあるという階段を登り切ると,森林の中を登る長い階段道になる.上を見上げると,登るのがイヤになるほどの階段が見えている.しかも階段の段差が大きいところが多いので,思わず,
“ウンコラショ…!”
という掛け声が出てしまう.
きつい階段道になると,どうしても登攀速度に差があるので,列がばらけてしまう.先頭を行く人たちはときどき立ち止まって後ろの人が追い付くのを待ちながらの登山になる.
<男坂は急階段の連続だ>
<阿夫利神社下社>
■ボンちゃんとチャイちゃん
10時12分,ようやく女坂との合流点に到着する.そして,その先のトイレの前で,トイレ休憩を取る.
そのとき,小さな犬を連れた男性を見掛ける,
“あっ…! チャイちゃんとボンちゃんだ!”
久々の再会である.
ボンちゃんは塔ノ岳のご常連.たまたま塔ノ岳に登られる曜日が私とずれているので,ここ1〜2年,塔ノ岳でお会いすることもなかったが,なかなかお元気そうである.
チャイちゃんは,小さいけどとても利口でお行儀の良い犬である.登山中はトイレに行かないし,むやみに吠えることもない…というより,私は過去に何回となくチャイちゃんに会っているが,いちども吠え声を聞いたことがない.
何とも嬉しい再会である.ちょっとの間,チャイちゃんを抱っこさせて貰う.
<ボンちゃんとチャイちゃん>
■阿夫利神社下社参拝
10時26分,沢山の参拝者に混じって,阿夫利神社下社を参拝する.
どちら側からどう潜るのかは忘れたが,適当に輪を8の字に潜ってから下社を参拝する.心の中で,
“今年も無病息災で過ごせますように…”
と願を掛けるが,同時に,
“それは無理かな…”
という気持ちも交錯してしまう.
折角,大山まで来たのだから,大山名水を持ち帰ろうかと,急に思い立つ.ついでに名水入れのボトルを200円也を志納して入手する.これまでは長い円柱状のボトルだったが,今回入手したボトルは一般の飲料水を入れるボトルと同じ形をしている.ボトルの胴体に「大山名水」と印刷されたラベルが貼ってある.このボトルに水を入れると,なんだかお酒のように見えてくるから面白い.
<阿夫利神社下社参拝;写真に写っている方々は無関係> <大山名水>
■大山山頂を目指して
10時42分,大山山頂を目指して,いよいよ登山道に入る.
いきなりの急階段である.足許には残雪が見え始める.滑りやすくなっている階段を慎重に登って,山道に入る.
沢山の登山者に混じって,極,極,低速で登り続ける.それでも列の前と後ろではどうしても距離が開いてしまう.時々立ち止まって後続が確実に登ってくるかを確かめながら登り続ける.
標高が高まるにつれて残雪が次第に多くなる.ところどころ軽アイゼンを装着した方が良さそうなところもあるが,直ぐに日光が当たって雪が溶けた場所になる.そんなことを繰り返しながら,何時アイゼンを装着しようかと思案しながら登り続ける.
<登山道に入ると直ぐに行が見え始める>
■富士見台
11時31分,三叉路のベンチで一休みする.
私たちの直ぐ後を登ってきたグループの男性が,エリアマップを開いて,
「ああ…ここがヤビツからの道との合流点だ…」
と仲間に言っている.黙っていようかと思ったが,
「ヤビツからの道との合流点は,まだまだずっと上の方ですよ…」
と注意する.
ここから先はさらに踏み固められた残雪が増え始める.ところどころ,滑りやすくなっているところがあって,4本爪の軽アイゼンが欲しくなるが,すぐに雪が溶けた場所が出てくる.
11時53分,尾根に突き上げて,富士見台に到着する.
残念ながら雲が多くて,富士山は裾野だけしか見えていない.
富士山の手前には,急傾斜の大倉尾根が見えている.今日の土曜日,私の塔ノ岳詣での定例日である.もし,大山へ来ていなければ,今頃は仲間と一緒に大倉尾根の山麓を下山しているだろうなと想像する.
<富士見台;残念ながら富士山は雲の中>
■ヤビツ峠分岐
富士見台を過ぎると残雪がさらに増え出す.滑りそうでオッカナビックリ下山してくる登山客とすれ違いながら登り続ける.足の速い人と遅い人の差がさらに顕著になる.
12時15分,ヤビツ峠分岐に到着する.ここで暫くの間後続の方々の到着を待つ.
ここまで来たら大山山頂までは後僅かである.多少滑りやすいところもあるが,軽アイゼンを装着するまでもないので,アイゼンなしで登り切ることにする.
<ヤビツ峠分岐>
■山頂前の鳥居
山頂に近付くにつれて残雪はますます多くなる.
12時26分,山頂直下の鳥居を潜る.鳥居の前ですれ違った下山中の女性が,
「この鳥居から先が,とっても長いんですよ…!」
と私にコメントする.
私は,このコメントを聞いて,キョトンとする.
ここから山頂までは後僅かである.私は,山頂までのほんの数十メートルの距離だが,思い切り速度を上げて登らせてもらう.バス停大山ケーブルからここまで足の遅い方と一緒だったので,申し訳ないが私には“遅い”というフラストレーションが貯まっている.だから,ほんの数十メートルでも自分なりの速度で登れば,このフラストレーションも随分と解消される.
12時29分,大山山頂に到着する.
<山頂直下の鳥居を潜る>
<大山山頂>
■大山山頂からの眺望
大山山頂で,ほんの1〜2分,一行が到着するのを待つ.その間に,山頂からの眺望をデジカメに記録する.そして阿夫利神社上社を詣でる…が,数名の登山客が社殿の前で神様に尻を向けて座り込んでいる.私は心の中だけで,
“この罰当たりめ…神様の通り道にお尻を向けてはダメですよ”
と,この人たちを諭す(要するに声に出して諭したわけではないので,なにもしないのと同じことだ).
バス停大山ケーブルを歩き出したのが9時13分,私が山頂に到着したのが12時29分,従って所要時間は2時間16分.その間に登った標高差は1,040メートル.したがって1時間当たり平均で318メートル登っていることになる.これは勿論休憩時間込みの値である.
“ゆっくりかと思ったけど,意外なほどマアマアの速度ではないか…”
と私は納得する.
山頂からの眺望は素晴らしいが,何となく霞が掛かっている.それだけ今日の天気が暖かいのだろう.
<大山山頂>
■空にはハングライダー
突然,同行者の1人が,
「ほら…あそこを見て.気持ちよさそう〜」
と上空を指さす.
なるほど,上空に1台のハングライダーが,気持ちよさそうに空中を舞っている.とはいえ,高い所が嫌いな私は,ハングライダーを見ているだけで怖くなる.
<青空にハングライダー>
■凛とした丹沢山塊
大山山頂は沢山の登山者で賑わっている.どこかで場所取りをして一休みしようかと思う.そのとき,
「食事の前に,(山頂の)後ろに回って,塔ノ岳を見ましょうよ…」
とTBさんが提案する.
もちろん異論はない.
山頂には沢山の残雪があるので,滑りやすくなっている.滑らないように慎重に山頂の裏手に回る.
目の前にお馴染みの塔ノ岳が見えている.尊仏山荘の屋根に真っ白な雪が積もっている.塔ノ岳の右手には丹沢山に連なる尾根,そしてその先には蛭ヶ岳が顔を出している.実に雄大で凛とした風景である.
丹沢の山々を眺めている内に,無性に塔ノ岳に登りたくなる.
“今日,塔ノ岳に登っていたら,ひょっとしたら樹氷が見えたかもしれないな…”
私にとっては,
“やっぱり,大山よりは塔ノ岳だな”
と胸の内だけで思っている.
<大山山頂から塔ノ岳,丹沢山を望む>
■束の間の昼食
12時40分,大山北尾根の下山口にある建物の軒下に座り込んで,昼食を撮る.
例によって,動く冷蔵庫さんことOTさんから,ネーベンの提供がある.随分と重かったろうなと想像しながら,お裾分けを頂戴する.
その内に,頭上に大きな雲が湧いてくる.これまで太陽の光で暖かかったのに,雲に遮られて,日が陰るとやたらに寒くなる.たちまちの内に手がかじかむほど身に堪え始める.
「こりゃ〜ダメだ! 早く下山しましょう…続きは見晴で食べることにしましょう…」
とノシイカさんが提案する.
<OTさん提供のご馳走>
<見晴で一休み>
■残雪と泥んこの下山道
一同,軽アイゼンを装着して,13時10分,大山山頂から見晴へ向けて下山開始.
山頂から暫くの間は,残雪タップリのジグザクな急階段が連続する.ときどき登ってくる登山者とすれ違う.
山頂から山腹に差し掛かると,雪道と融雪道が向後に現れるようになる.さらに下山し続けると,超泥んこ道が連続するようになる.泥んこで急な下り坂は,アイゼンを装着していた方が歩き易いので,アイゼンは履いたまま下山し続ける.
泥が登山靴にへばり付いて足が重くなる.ぐちゃぐちゃの泥んこ道が,これでもか,これでもかというほど連続する.
<中腹から泥んこ道が始まる;山腹はもっとひどい泥んこ道だ>
■見晴で一休み
14時34分,ようやく見晴に到着する.ここまでのラップが例年より約1時間遅れている.
振り返ると.今下ってきた大山が高い所に見えている.天気が下り坂らしく上空一面を雲が覆っている.
見晴のベンチでは,たくさんのグループが休憩を取っている.私たちも空いているベンチに腰を下ろす.
<見晴から大山を見上げる>
■昼食の続き
ベンチに陣取った私たちは,大山山頂で中断した昼食の続きを始める…が,随分と時間が押している.このままモタモタしていたら,下山し終わる頃には日が暮れてしまう.
昼食はソソクサと切り上げて,14時47分に見晴を出発する.
<見晴で昼食の続きを摂る>
<途中から別行動で家路へ>
■下社広場へ
見晴からトラバース道を下社に向けて歩く.この谷間は雨嵐によってかなり荒れるらしく,あちらこちらに嵐の爪痕が残っている.
15時04分,漸く二重滝を通過する.
私たちのグループの先頭と後ろの方ではかなり距離が開いている.
<二重滝側の神社>
■ケーブルカーで下山
私は,自宅に傷病中の家内が居るので,なるべく早く帰宅したい.
そこで,下社広場で,グループの皆様とはお別れして,大山ケーブルを利用して下山することに決める.女坂を下れないのは残念だし,“かんき楼”での豆腐料理をパスするのも残念だがやむを得ない.
15時15分に大山ケーブル「しもしゃ」駅に到着する.丁度,15時20分発のケーブルの改札が始まったところである.ラッキー.450円也の運賃を支払って乗車.
所要時間6分で,終点の「おいわけ」駅に到着する.さすがにロープウエーである.徒歩で下ったら結構時間が掛かるところを僅か6分で下山してしまう.
<大山ケーブル「しもしゃ」駅>
■大急ぎで電車を乗り継ぐ
私は「おいわけ」からバス停大山ケーブルまでの商店街をかなり速い速度で下山する.途中,道幅一杯に広がってノロノロと歩いているグループをイライラしながらかき分けて下る.
15時35分,バス停大山ケーブル駅に到着する.靴の泥を水洗いできるところがないかなと思いながら辺りを見回すが見当たらない.そうこうしている内に15時42分発伊勢原行のバスの出発時間が迫る.私は道路でバタバタと靴の泥をはたき落としてからバスに乗車する.でも,靴の泥は殆ど取れていない.
私は運良くバスの席に座れたが,瞬く間にバスは登山客で満杯になる.大混雑だ.
16時03分,バスは伊勢原駅に到着する.うまい具合に16時06分発相模大野行急行電車に乗車する.席に座ってからスパッツを外す.スパッツには泥が沢山付いていたらしく電車の床に泥が散乱する.
“参ったナ…でも,どうしようもないな.小田急さんゴメンナサイ…”
ということで,相模大野で快速急行藤沢行に乗り換える.そして,大船駅経由で,17時30分頃,漸く帰宅する.
■家の玄関も泥だらけ
自宅の玄関で登山靴を脱ぐ.玄関が靴から落ちた泥で随分と汚れてしまう.すぐに登山中に着ていた衣類を洗濯する.スパッツが泥だらけなので,洗濯機に入れる前に水洗いをするが,下水管が詰まってしまうのではないかと思うほどの砂が流れ落ちる.これはもう自分で掃除するしかない.
“また,仕事が増えたナ…”
実は家内の怪我の回復がまだ十分ではないので,炊事,洗濯,掃除,買い出しなどのムスケルアルバイトの70〜80パーセントは,目下の所,私が担当している.だから,今日も早く自宅へ帰ったんだ.
帰宅後直ぐに家内の指揮下で夕食の準備をする.
もう,こんなパターンの生活を2ヶ月ほど続けている…が,結構楽しくやっている…と,思うようにしている.今は子供達もとっくに巣立っているので,老夫婦2人だけの生活が続いている.久々に2人で台所に立つ…これはもう,どうみても新婚時代の生活と同じではないか.こうポジティブに思うことにしている.
…と,言うわけで,今日もマア良かった,良かった.
<ラップタイム>
9:13 バス停大山ケーブル歩き出し
9:27 追分社(事小坂を登る)
10:12 女坂と合流
10:26 阿夫利神社下社(10:42まで参拝休憩)
11:53 富士見台
12:15 ヤビツ峠分岐
12:29 大山山頂(13:10まで参拝昼食休憩)
14:34 見晴(14:47まで)
15:15 大山ケーブル「しもしゃ」駅着
[山行記録]
■水平歩行距離 5.9km
大山ケーブル→大山山頂 2.9km
大山山頂→しもしゃ駅 3.0km
■累積登攀高度 1,040m
■累積下降高度 672m
■上り所要時間(休憩時間込み)
バス停大山ケーブル発 9:13
大山山頂着 12:29
(所要時間) 3時間16分(3.27h)
水平歩行速度 2.9km/3.27h=0.89km/h
登攀速度 1,040m/3.27h=318.0m/h
■下り所要時間(休憩時間込み)
大山山頂発 13:10
しもしゃ駅着 15:15
(所要時間) 2時間05分(2.08h)
水平歩行速度 3.0km/2.08h=1.44km/h
下降速度 672m/2.08h=323.1m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
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(なし)