<『大日小屋から剣岳を望む』(40 )>
2018神奈美会員展出展作品(1);水彩画『大日小屋から剣岳を望む』(40号)
2018年12月17日(月) 雨のち曇
暮れも押し迫った.
朝の内,冷たい雨が降っていた.
”秋の展覧会に出展した絵の自己評価を,今年中に記録しておかなければ…”
と思いながら,もう随分と月日が流れてしまった.
いよいよ今年もどん詰まりになりそうなので,重い腰を上げて今回の絵の自己評価を記録に留めることにした.
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まずは1枚目,題して『大日小屋から剣岳を望む』(F40)である.
今年の夏,塔ノ岳の仲間と一緒に,2泊3日の行程で大日岳を縦走した.その2日目の夕方,大日小屋から剱岳方面を眺めた景色を水彩画にしあげた.
振り返ると,この縦走は私にとって極めてハードで,四苦八苦の連続だった.そんな辛い思いもこの絵の中ににじんでいるかも知れない.
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この絵の中央屋や右に聳えているのが,山男なら誰でも一度は憧れる剣岳である.その向こうに連なるのが北アルプスの白馬岳,白馬鑓ヶ岳などの名峰である.何れの山にも登ったことがあるので.れらの山々にはチョッピリだが私の足跡も残っているに違いない…と信じている.
私は,大日小屋の庭先にただずんで,これらの秀峯を眺めながら,来し方行く末のことを思い浮かべていた.
そんな情景をこの絵の中に込めたかった.
なお,この絵の黒い輪郭は,油性のフエルトペンを使って描いている.
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さて,ここからは,退屈老人男の独り言である.
ご用とお急ぎの方は
”パス! パス!”
…である.
<私の狙い>
今回は会員展である.公募展ではないので落選することはないので,思い切って勝手気ままな絵を描いてみたかった.だから,通常の公募展なら落選間違いなしのことを,敢えて犯しながらこの絵を描いた.その意図するところは次の通りである.
▇写真とは違う絵を描きたい.
私は,この絵を描くに当たって,
(1)主観的で勝手な理屈を付けた絵によって自分が山に抱く感情を表見したい.
(2)敢えて不都合と思えることを試みてみたい.
①粗野にも思える筆遣いで描く.
②光線の向きの無視する.
同じ場所から長時間山を見ていたので日光が射し込む方向が変化している.
③同じ筆遣い,単調な色調を繰り返す.
④気に入った所だけをバラバラに取り出し,取り出したものだけを元に位置に戻す.
したがって,敢えて描かない空白もできるし,手抜きの所も生じるが,それでも
構わない.
…と,こんなことを覚悟して描いた.
▇構図にも屁理屈がある
私がこの絵に託した構図には,下の図のような屁理屈がある.屁理屈とは自己満足と同義語である.自分だけ理解できて,見て下さる方々には理解不能かも知れない…が,
まず,時間軸.
私の過去から未来を斜めに横切る時間軸で表現したかった.
そして,意識したことは下の図の添え書きの通りである・
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▇この絵の評価
展覧会開催中のある日,千葉に住んでいる親戚の男性二人が私の絵を見に来てくれた.二人とも千葉県展に何回も入選しているアマチュア画家である.
私のこの絵を見ると,開口一番,
「…ありゃ,まあ,…随分手抜きしていますね」
と感想を述べる.
この絵の左下の雲の部分は確かに手抜きをしているに違いない…が,この白い雲海の部分が,この絵のバランスを保つためにとても大事だと自分では思っていたのだが…
つまり,この手抜きに見える場所にも私の意図が詰まっていたのに…それがこの絵を見て下さる方々に上手く伝えられない.そこが私の未熟な所以である.
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絵は不思議なもので,描く人の品格,素養のようなものストレートに絵の中に現れる.そこが面白くもあり,歯がゆさの所以でもある.
絵を見て下さる方には,
”何を大げさな…”
と思われるかも知れないが,私は絵を制作中にこんな些細なことが気になって仕方がない.そのためか,絵の制作途中で,それこそ何回も,何回も,思い通りに掛けない絵を破ってしまいたいという衝動にかられる.
”まあ,そう自棄にならずに,もうちょっと後で破けば良いじゃないか…”
と私の体内に巣喰っているもう1人の私に慰められながら,下手くそな絵を描いている.
いつまでこんなことを続けているのか良く分からないが,まあ,シンドイ,シンドイと言いながらも,絵を描くことを止めないのは,やっぱり楽しさとの相殺値がプラスになっているからかも知れない.
いずれにしても,もう少し芸術全般の幅広い知識と見識がモテるようにしないと感動を伝える絵を描くことはできないなと痛感する毎日である.
(つづく)
つづきの記事
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