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Channel: 中高年の山旅三昧(その2)
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2018第41回神奈美公募展出展作品(2);『蝙蝠岳から富士山を望む』(水彩画;F40)

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              2018第41回神奈美公募展出展作品(2);
             『蝙蝠岳から富士山を望む』(水彩画;F40)
1枚目の記事
  ↓
https://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/6dfa2debbedfb14d9edd1fff012dcd91

▇作品2.『蝙蝠岳から富士山を望む』(F40)
(1)狙い
 私がある程度本気で水彩画を描き始めたのは,今から10年ほど前からである.
 もっとも,大学生の頃,ほんの暫くの間,水彩画に凝っていた時代もあったが,社会人になってからはめったやたらに多忙で,とてもではないが趣味などに興味を向ける余裕もなかった.それに20歳代後半で人並みに所帯を持った私は,子どものためになけなしの時間とお金を優先していたので,水彩画どころではなかった.
 やがて,過ぎ去る歳月は幾星霜.やっと水彩画に没頭するだけの心の余裕ができはじめた.
 そうなると,是非とも書いてみたくなるのが富士山の絵である.
 とはいえ,富士山は古くから信仰の山であり,畏怖の山でもある.したがって,富士山を題材にした詩歌,写真,絵画など今昔ジャンルを問わず沢山の成果物がある.私が所属するこの協会でも,毎回必ずと言って良いほど,富士山を題材にた絵が何枚か出展されている.
 私ももちろん富士山の絵を描いてみたい.でも,自分の絵に常日頃コンプレックスを感じている私は,同じ富士山の絵を描くにしても,雪化粧した秀麗な富士山を遠景にして,桜や海を近景にした典型的な富士山の絵は,どうしても他の方の絵と比較されてしまうので,とてもではないが画く気になれない.
 そこで,何としても富士山の絵を描きたかった私は,ほとんど誰も画いたことのない場所から拝む富士山を画くことにした.それには,
 (1)残雪のない真夏の富士山を題材にする,
 (2)普通に絵を描いている人には,ちょっと行きづらいところから見た富士山を題材にする,
の2点を満足する富士山の絵を描くことに決める.
 ”はてさて~ぇっと!…この二つの条件を満たすスケッチは? なかったかナ!”
 私はPCに溜め込んである旅行記や,旅行中に描きためた雑記帳やメモ帳をあれこれとめくってみる.
 ”あった! あったぞ!”
 ろくに整理もしていない資料類から,もうかれこれ10年も前に縦走したことのある南アルプスの資料から,富士山のスケッチを見つけ出す.
 このスケッチには,幾重にも重なる山並みの向こうに富士山が聳えているところがポンチ絵風に画かれている.このポンチ絵を見た途端に,私はそのときの情景を,まるで昨日のことのように思い出す.
 ”あのとき,私は,畏怖と感動の気持ちを持ってこのスケッチをしたなあ!”
 私は,即座に,このときの感動を一枚の水彩画に託することにした.

(2)状況
 あのとき,私は登山学校の仲間4人と一緒に,南アルプスの塩見岳から蝙蝠岳,徳右衛門嶽を経由して,3泊4日の日程で,椹島まで縦走した.
 第1日目はJR飯田線伊那大島駅からタクシー相乗りで塩川小屋まで.ここで1泊.翌,2日目は本谷山から権右衛門山山麓のトラバース道を経由して塩見小屋泊.3日目は塩見岳西峰,東峰を経由して蝙蝠岳(標高2,865メートル)に到着する.塩見岳西峰までは沢山の登山客が居たが,東峰を過ぎると,登山客は皆無である.
 蝙蝠岳を過ぎると登山道も踏み跡道程度になり,やがてシャクナゲの群生地を藪漕ぎするようにして,稜線を外さないように歩き続ける.夕方,休憩舎の下り坂を下りて二軒小屋に到着する.
 このコースの圧巻は,幾重にも連なる両川の向こうに富士山が聳えている風景である.ただし天気が良ければ之話だが…
 この絵は,蝙蝠岳山頂を通過して,徳右衛門岳(標高2,599メートル)に向かう途中で休憩を取ったときに画いたスケッチを元にしてF40号の水彩がん仕上げたものである.従って目線の高さは約2,500メートルである.
 この日,天気は上々だった.
 南アルプスから見上げる富士山は,山頂の両側に耳が付いているように見える.そして何よりも幾重にも重なり山並みの向こうにどっしりと屹立する富士山がとても良い感じである.富士山の向かって右側の耳が剣が峰(標高3,776メートル)である.私が今見ているところとの高度差は約1,200メートル.丁度,丹沢塔ノ岳の山頂とバス停大倉の標高差とほぼ同じである.
 当日は,この雄大な風景を眺めながらのは縦走で感動の連続であった.

(3)写生した場所
 この絵の本絵になるスケッチは,下に示す2枚の地図で明らかなように南アルプスの塩見岳から徳右衛門岳に向かう途中の稜線である.
 塩見岳から徳右衛門岳までは,景色が良くて実に心地よい稜線が連続する.進行方向右手に富士山をず~っと眺めながらの素晴らしい散策路である.
 下の地図で示したように,スケッチスポットから富士山までの間には幾重にも重なる尾根が重なっている.これがまた,素晴らしい景観を醸し出している.

                  ↓ 拡大図


(4)構図
 さてそこで,構図の工夫である.
 書き殴ったポンチ絵,メモ,写真などを見比べて,下の図のような概念を念頭に置いて,構図を整えた.
 まず,中央にお目当ての富士山を置く.黄金律ではないが,主題の富士山は中央にはおかずにちょっと左上にずらして画くことにする.
 幾重にも重なる稜線は平行線の重なりになる.
 これでは単調すぎるので,左上の富士山とバランスを取って安定感のあるように近景の稜線を置く.この近景の稜線は変化を出すために,他の緑に覆われた稜線とは違って,岩稜の稜線を入れる.これで構図はピンシャンとするだろう.
 でも,岩稜の稜線だけでは単調なので,そこに足許に生えている青い植物を入れる.でもこの植物を余り丁寧に書いてしまうと,目線がこの植物に行ってしまうので,敢えて不明瞭に画く.そして観客の目線が絵の中央からやや左寄りに向かうようにする.
 そしてすぐ前の稜線には,私の影武者である架空の人物を入れて,その人物に自分の気持ちを込めることにする.だから実際にはこの岩稜の稜線には登山道があるのかないのか私は知らない.絵は写真ではないので,この程度の作り話は許されるだろうと思っている.
 こんなことを,ああでもない,こうでもないと考えて,自分の考えに一番近い構図となる場所のポンチ絵を選ぶ.そんなことを考えながらこの絵を書き進めた.
 さて最後にサインをいれることになる.
 絵にサインは必須である.でも,あまり目立つサインをすると,折角の構図が台無しになってしまう.そこで,この絵では右下に黒色を使って余り目立たないようにサインするのが一番と考える.
 まあ,そんなこんなで,出来てみれば単純な絵にしか見えないが,あれこれと迷いがいっぱい詰まっている絵である.


                               (2枚目おわり)
                               (3枚目に続く)

3枚目の記事
  ↓
(執筆中)

「閑話休題;セピア色の画集」の前回の記事
https://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/dd8b7a54bdf7150debc3b65306f4297a

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