2017/12/01
趣味三昧;セピア色の画集;私的絵画論考(3);作品『ピレネー山脈の山小屋』
(2017神奈美会員展出展作品の自己評価)
まえの記事
↓
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c6b61f0978afcf275f3965a173b97227
<作品名;『ピレネー山脈の山小屋』(水彩;F40)>
■この作品の背景
2017年8月18日(金)から8月27日(日)まで,私はアルパインツアー社の「ピレネー山小屋縦走10日間」のツアーに参加した.この度でフランスとスペインの国境近くにあるピックデュミデイとプレッシュローラン越えのトレッキングを楽しんだ.参加者は11名.
旅の3日目,私たちはスペイン辺境の村サビニャニーゴから専用車に乗って国境を越えてフランス側のビオーザルディキュウェ駒で移動する.ここから1泊2日のピックデゥミディドッソオ展望トレッキングに出掛ける.
初日は水平距離約7キロメートル,標高差約710メートルの軽登山である.展望を楽しみながらの旅である.
夕方,そろそろ日が落ちる頃,ようやくアユー湖の畔の小高い丘の上に建つアユー小屋に到着する.
日本を旅立ってからまだ3日目.時差惚けがまだ強く残っていたので,結構シンドイ旅であった.そのためか,山小屋手前の最後の坂道がとてもしんどくて焦れったく感じた.
詳細記録はこちら
↓
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/e982fb31374fcc1a1d2c50a93cc7d960
■この作品の意図
夕暮れ迫る時間に山小屋に到着したときの安堵感,シンドかった道のり,厳しい自然…そんなあれこれを表現したかったので,敢えて対角線の構図の絵にした.目線は画面の下の方に置いて,山を見上げるような感じにした.
残念ながら冒頭の写真では,この絵の色調を正確には再現されていないが,まあ,大体のところはこんな感じである.
私ごとき素人が描く絵なのでたいしたことは表現できない…が,山に対する畏怖の念,山小屋を目の前にした安堵感…そんなものがいくらかでも表現できていれば幸いだと思っている.
<フロワーでの批評会>
■沢山の意見や批評を頂戴する
神奈美展では初めての試みとして,フロアーでの批評会が開催される(正式な名称は忘れた).
幸いにも私の絵がトップバッターになった.私は,予め準備していた資料(下の図をクリック;まえの記事で収録済み)を配布して,この絵の意図など諸々を簡潔に説明する.
←クリック拡大
私の説明に対して様々なご意見を頂戴した.その主なものは次の通りであった.
①光が当たっているところが単調である.
②山の稜線にも光るところを入れればもっと情景が引き立つ.
③左下の近景をもっと細かく描けば,遠近の差がはっきりする.
④空の色が一様なのはおかしい.地平線に近いところと高いところでは空の色が違うはずだ.
⑤登山道をもっとはっきり描いた方が良い.
⑥稜線沿いの尖峰が斜めに一直線に並んでいるのは単調だ.一直線から外れるようにした方が良い.
⑦片流れの構図は不安定なので,左下に近景の山を入れた方が良い.
⑧氷河の部分はもっと名案をはっきり描いた方が良い.
⑨サインはもっと堂々と良く見えるところに書きなさい(サインをして始めて作品が完成する).
等々であった.
←クリック拡大
■批評に対する所感
大部分の批評はいちいちご尤もで,今後の制作に反映したいと思っている.また,このような批評会によって自分では気がつかない点を浮き彫りにすることができたので大変嬉しく有難いなと思う.
その反面,正直なところ,山好きの人間として,どうしても受け入れにくい点もある.たとえば,
①山の風景は,出来るだけ忠実に描きたい.
私が描いた山に登った人が,”ああ,あそこの風景だ”と強い共感を呼ぶ絵を描きたい.そのためにせめて山の形やベースになる色調は出来るだけ忠実に描きたい.したがって,実際にはない近景の山などを書き込むことはしたくない.
②山でしか味わえない事象はそのまま絵に反映したい.
たとえば空の色.平地では空中に塵埃があるので,太陽の光は塵埃に遮られて,地平線付近と高いところでは違った色になって見えるが,塵埃の全くない高い山では快晴の空は一様に濃い藍色に見える.これは高山に登った経験のある人にしか分からないこと.低地における常識にとらわれずに敢えて見たままに描くことにしたい.
■ここが課題だ
絵には素人の私が口幅ったいことを言うようだが,今回の批評会を通じて以下のような課題があるkと尾を実感した.
①前提条件の違いをどうするか
今回の批評会で感じたことは,山固有の現象や美しさを,山に登ったことのない方に伝えるにはどうしたらよいかが余像以上に難しいということである.
絵を見る人は,それぞれが固有の主観で見ていることを再認識させられる.各人の主観はそれそれの人固有の生き方,経験などで形成されているので,ひとそれぞれが固有の”色眼鏡”を掛けている.その色眼鏡を通じて絵を見るので,同じ絵を見ても十人十色の感じ方をしている…こんな当然のことを再認識させられたのが今回の収穫である.
したがって,十人十色の見解を全部取り入れたら,多分,絵はメチャメチャになってしまうだろう.なぜならば二律背反的な意見が必ず包含されるからである.
この課題をクリアするには,主体者である自分自身の主観で,多々ある見解を取捨選択するしかないのかなと思っている.
②前提条件に狂いがあった
悲報を拝聴した結果,前回,投稿した図表が不完全なことに気がついた.
下図はこのシリーズ第1回目に提示した図である.私の考えでは象限Aに属する絵は無条件に象限Bを満足すると思っていた.言い換えれば山の経験が無い方に評価される絵は,必ず山の経験がある人にも評価されると思っていた.
ところがどうもそうではないなと今回の批評会で気がついた.つまり,登山の経験が無い方に評価されても,登山経験者からは評価されない絵もあるということである.気がついてみれば,極めて当たり前のことだった.
”こんな当たり前のことに気がつくのに,なんとまあ七面倒くさい屁理屈を並べたものだ…!”
我ながら自分の愚かさに驚いている.
(つづく)
つづきの記事
↓
(執筆中)
「セピア色の画集」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/9cbc1b336f07f6418715ae4fd63b3073
「セピア色の画集」の次回の記事
(なし)
お断り;
これらの記事は,私の趣味仲間を読者対象としたものであり,一般の読者を対象としていません,したがって,まったく個人的なものです.また十分に時間を掛けて編集していませんので,記事は正確とは言えないし,誤字脱字転換ミスも多々あると思います.このことを前提にしてご覧下さい.
また,当ブログ記事を読んで,不快になられた方は,以後,当ブログへアクセスされないようにお願い致します