閑話休題;胆石症闘病記(11);第6日目;記念すべき日;自力で…
2016年4月2日(金) 晴
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<6日目の朝;遂に自力で…>
■元気なら塔ノ岳だな…
今日は土曜日.
何時もの私なら今頃,塔ノ岳に登るために電車に乗っている時間である.
こうして病院のベッドで横になっている自分を見つめていると,あの塔ノ岳へ出掛けていた自分が,まるで別人のような気がしてくる.
昨夜は,眠れない一夜だった.
ウトウト眠ったり,また目覚めたりを何回も繰り返して,漸く朝を迎えることができた.
折角のウトウト眠りも悪夢ばかり見ている.
…教授会の夢を見る.
学部長が,
「今日から赴任される新進気鋭の○○先生をご紹介します…」
会議室の扉が開く.逆光の中に恰幅の良い○○先生が立っている.
私は,心の中で.
”嗚呼,これでオレもお払い箱だな…”
とガッカリする…ここで目が覚める.
”なんだ,夢だったんか…!”
私は,あまりに"けったい”な夢だったので,一人で思わず苦笑する.
特に尿意はないものの,夜中にトイレに行ってみる.残念ながら「小」は一滴も出ない.
■今朝も,大分貯まっている
外が明るくなり始める.
まだ,病院中が寝静まっていて,シ~ンとしている.
看護師が,そっとカーテンを開けて入ってくる.
「採血します…」
またもや血液検査である.
「今,何時ですか…」
「5時半です.早くてスミマセン.…で,夜,トイレに行かれましたか」
「はい…,行きましたが,相変わらず「小」は全く出ないんです…」
「そうでしたか…ちょっとお腹を見せて下さい…」
私はベッドに仰向けに寝る.
看護師が私のお腹を押してみる.
「やっぱり,大分張っていますね…大分貯っていますよ…一緒にトイレに行ってみましょう」
■やっと出たぞ…
5時40分,看護師に促されて,トイレに行く.
看護師に一部始終を観察されるのは気恥ずかしいが,私も必死である.
看護師が尿を受けるコップを用意する.私は必死になって努力する.すると,何となく何時もの感覚が戻り始める,膀胱から尿道に掛けてくすぐったいような,焦れったいような感覚が戻ってくる.
そして…
遂にエトバスからチョロチョロと尿が出始める.やっと150立方センチメートル程度の量だが…
とにかく自力で排尿できたぞ…!
この喜びは,大変なものである.
「はいっ! 出ました,出ました」
私は大喜びである.
自室に戻る途中で,別の日に私を看護してくれた2人の看護師とすれ違う.
「どう…? 出ましたか?」
と私に質問する.主語のない質問でも意味は完全に通じる.
「はい,やっと150ccですが出ました」
「良かったですね…」
看護師から,トイレの棚に私専用の容器を置いておくから,それに「小」を入れて下さいと言われる.
■4種類の薬
6時丁度に,また看護師が訪れてくる.
今度も,血圧,脈拍,体温,血中酸素濃度を測定する,何れも正常値である.
「今日は,朝だけお薬を飲んで下さい…」
と指示される.
私は,ユニシア,ロキソニン,ハルナール,ウルンテレシコールという舌を噛みそうな名前の薬,4種類を服用する.
今日は朝食は抜きである.でも.昼食から食事が出るとのこと.
なお,土曜日,日曜日は手術はお休みなので,2回目のERCPは月曜日になるとのこと.
■朝ドラ「朝が来た」の途中で…
もう飲み物は自由に摂って良いといわれたので,これ幸いである.
私は,病院からコップを借用して,ナースステーション近くにある給湯室まで,何回も往復して,お茶を味わう.
もちろん,歩き回ることも大きな目的である.
8時から,自分のベッドで,NHKの朝ドラ「朝が来た」の最終回を見始める.
朝ドラを見始めて5分ほど経った頃,急に便意を催す.
「…なにも,こんなタイミングで…」
と思うが,久々の便意である.
本当は朝ドラを見てから「大」に行きたかったが,また便意がなくなってしまうのを恐れる.私は朝ドラを見るのを中断して,トイレへと急ぐ.勿論点滴棒を引きずって…である.
結果は…
「大」がバッチリと出る.自力で!
尾籠な話だが,量はバッチリ.ただ,柔らかくて,ちょっとばかり緑がかった色のような気がするが,とにかく自力で出たのがとても嬉しい.
トイレを終えて,急いでベッドに戻り,朝ドラのつづきを見る.
ドラマの中で,「人の気持ちをおもんぱかる優秀な頭脳」.「柔らかな心」が大切だと言っている.まさに同感! 私もかくありたいなと思う.
■TN医師の回診
テレビを見終わってから,特にすることもないが,医師または看護師から指示があるまで,ベッドを開けることもできないので,ベッドに腰掛けて,静かに読書を続ける.
10時頃,下着を着替えようと思う…が,点滴の管が付いている上半身はままならない.下半身だけ着替えて,上半身は後刻看護師に支援してもらって着替える.
「なるほど…こういうときに付き添いが居ないと厄介だな…」
と実感.
11時30分,TN医師の回診がある.
医師から,ERCPの2回目は,4月4日(月)に実施すると言われる.1回目のERCPの影響で膵臓の機能がちょっと下がっているが,多分,4月4日までには,膵臓も正常に戻っているだろうとのこと.
さらに今日の昼から食事をだしますという有り難いお達しである.
<けだるい午後>
■昼食
11時50分,俄に廊下が騒がしくなる.昼食の配膳が始まる.
最初にお茶が配られる.
「昼食が出ますよ…」
と配膳係から伝えられる.
ほどなく昼食.
メニューは下のスケッチの通りである.メインディッシュはサバ.
「…このサバ,ちょっと醤油を垂らせば,ぐっと美味しくなるんだがなあ~…,残念!」
<4月6日の昼食>
■またもやトイレ
13時15分,またもやトイレに行きたくなる.「大」少々と「小」400立方センチメートルほど.勿論自力である.
これで,今日の「小」の累計は550立方センチメートルになる.飲み薬のためか「小」の色が何時もより多少濃いような気がする.
その後はベッドに座って,NHKの大河ドラマ「真田丸」を見る.このドラマの冒頭で,私の出身校である中学(旧制),高校の校歌が冒頭で披露されたのが縁で,このドラマに何となく親しみを感じている.
14時丁度に看護師が,血圧,体温,血中酸素濃度測定をする.何れも正常値である.
「トイレ,その後,いかがですか?」
私は「大」「小」ともにまあまあ自力で何とか…と,報告する.
「…大は黒い色をしていませんでしたか…?」
と看護師が聞く.
私は直感で腸内で出血があるかどうかを確認しているなと思うが口には出さない.
「…心なしか緑がかっていました…」
と正直に報告する.
「今度,見せて下さい…」
と指示される.
■自主トレ開始
14時45分から15時15分までの30分間,ベッド脇で裸足になって,足踏みをしつづける.点滴棒に繋がれているので,一ヶ所に留まって足踏みを続けるぐらいしか,トレーニングの方法がない.
たった30分間の足踏みでも,だんだんと身体が火照ってきて,体調が良くなった感じがする.
足踏みの唯一の欠点は,すぐに飽きてくることである.私はテレビを見ながら,足踏みを何回も続ける.
何か気配を感じたのか看護師がカーテンを開けて覗き込む.
私が足踏みをしているのを見て,ニッコリ.そして,何も言わずに,そのまま立ち去る.
足踏みをしながらいろいろと考える.
”今,手許にはPCがない,紙も絵の具もないので絵も画けない,山にも出掛けられない”
これでは私の趣味が全部ダメだ.早く病院の外へ出たい.ここはまるでジェイルだ.
さらに私の欲望は広がる.
*センベイをバリバリ食べたい
*ソーセージを食べたい
*香り高いコーヒーを飲みたい
*ピーナッツをボリボリ食べたい
*林檎を囓りたい
*パンとバター,それにハムエッグの朝食が食べたい
*卵掛けご飯が食べたい
*生のキュウリとトマトに塩かマヨネーズを掛けて食べたい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ちょっと体調が良くなると,急に私の欲望が頭をもたげる.
■論文のシナリオを考え始める
ここで具体的に披露するわけにはいかないが,某大学の研究員としての私の任務は,ネットワークに関連する研究をすることである.
体調が良くなった私は,雑記帳を広げて,このテーマに関連して,あれこれと思いつくことを書き留める.
私の雑記帳は,食事のこと,トイレのこと,この研究のことなどが乱雑に書きなぐられている.でも,こんな状況でなければ思いつかない諸々があることを,新鮮な気持ちで発見する.そうなると作業は急速に進む.私は短時間の間に,ノルマの論文の骨格を何とか仕上げてしまう.
これまでの経験からも思い当たるが,何か斬新な考え方を思いつくのは,決して研究室の机に座っているときではなく,山を歩いているとき,街でブラブラしているとき,あるいは何か別のことに没頭しているときなど,非日常的な局面も居るときに,急に思いつくことが多い.
私は書き殴りの雑記帳を見ながら,
”しめた…! これで退院後,何とか論文を仕上げることができるぞ”
と独りで大喜びである.
”入院も,満更,悪いことばかりではないな…”
これ,私の本心である.
■雄猫ムルもビックリだろう
私は入院中に落書きしている雑記帳をパラパラと捲ってみる.
”なんとまあ! いろいろなことが乱雑に書かれていることよ…”
自分で書いたものなのに,当の本人が,余りのデタラメさにビックリする.これでは人生観を語った雄猫ムルも,私の雑記帳を見てビックリするに違いない.
実は,私が高校生だった頃,姉が買い求めたホフマン著『雄猫ムルの人生観』という奇妙な内容の本を読んだことがある.岩波文庫だったろうか? その辺り今となっては定かではない.
人間語が話せる利口な猫ムルが小説を書く.そのとき主人の蔵書の中から誰か(思い出せない)の伝記本を勝手に持ち出して,引きちぎって下敷きにしてしまう.出版社がムルの原稿と,引きちぎったページ内容をまぜこぜにして出版してしまうという奇妙な本である.
人生経験が少なかった当時の私は,この小説の真髄を理解することができなかったが,今回の入院を機会に,是非,もう一度読み直してみたいなと思っている.
”それにしても,オレの雑記帳,実にゴチャグチャだな…”
私は改めて,ゴチャゴチャ乱雑に書きなぐった自分の日記帳に見入る.
”早々と日記帳を整理しなければ,訳が分からなくなっちゃうな…”
そう考えると,一刻も早く退院したくなる.
この辺りは論文の構想 こっちの上半分は入院記録
↓ ↓
<雄猫ムル的になんでも書いちゃう雑記帳>
<6日目の夕方>
■何でも記録する
18時丁度に,また,トイレに行きたくなる.
結果は「大」少々,ただし下痢気味.「小」約300立方センチメートル.累計850立方センチメートルになる.
私は自分の「小」を,専用のボトルに入れて,
”出たぞ! 出たぞ!”
と独り悦に入る.
今日は自力で「大」「小」ができた記念すべき日である.
”万歳! 万歳!”
これを機会に,私は,入院以来の闘病記録の中締めをしたいなと思い立つ.
ちなみに,今日,夕方までの記録は,以下の通りである.
「大」 「小」(cc) 累計(cc)
5:50 … 150 150
9:00 ○(普通量;やや緑) …
13:15 ○(少量) 400 550
18:00 ○(少量;下痢気味) 300 850
■夕食
夕食前に,例によって,血圧,脈拍,血中酸素濃度の測定がある.何れも正常値.
18時10分,夕食.
メニューは下の絵の通りである.
ヨーグルトと牛乳が出ている.毎食,必ずヨーグルトか牛乳が出てくる.
”なるほど,帰宅してからも,毎日,ヨーグルトか牛乳を飲むことにしよう…”
と思う.
でも,
”う~ん…,やっぱりセンベイをバリバリ食べたいな…”
<4月2日の夕食>
■消灯
夕食後,テレビを見ながら退屈な時間を過ごす.
21時30分,消灯.
相変わらず栄養剤の点滴が続いている.
時々,看護師が様子を見に来る.何時の間にか眠ってしまう.
こうして入院6日目も終わった.
(6日目の終り)
(7日目に続く)
つづき(7日目)の記事
↓
(執筆中)
胆石症闘病記の目次
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「閑話休題」の前回の記事
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「閑話休題」の次回の記事
(なし)
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