閑話休題;胆石症闘病記(9);第4日目;手術予定日が1日ずれる
2016年3月31日(木) 晴
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<4日目の朝>
■朝は蒸しタオル2枚で始まる
昨夜は,まあ,まあ,良く眠れた.
手術の傷口の痛みは全くないが,体調は万全とは言いがたい.
例によって,まだ夜が明けきらない時間から目が覚めてしまう.まだ消灯時間なので廊下以外は真っ暗である.
私は,退屈しのぎに,テレビにレシーバーをつなげて,テレビ番組をボンヤリ眺めながら,夜が明けるのを待つ.
7時頃,看護師が,
「おはようございます…熱いから気をつけて下さい…」
と言いながら.大番の蒸しタオルを2枚置いていく.
蒸しタオルを開いてバタバタさせ温度を下げる.そして頭,顔,身体を拭く.点滴用の針が常時右手に刺さったままなので,例え点滴がない日でも風呂に入ることはできない.したがって,身体を綺麗にする唯一の手段は,毎朝配られる蒸しタオル2枚である.
■今朝もやっぱり不調な「大」「小」
今日お世話になる看護師は,入院初日にお世話になったTNさんである.TNさんはとても腰が低い方で,常に患者にたいして,
「すみませんが…○○させて下さい」
「申し訳ありませんが…○○させて下さい」
と言いながら,血圧,体温,血中酸素濃度などの記録を取ったり,さまざまな世話をしてくれる.とても好感が持てる看護師さんである.
TNさんの働きぶりを見ていると,
”気立ての良い女性の皆様,是非,看護師になって下さい…”
とエールを送りたくなる.
自分が患者になってみると,看護師さんが示す優しさが,どれだけ患者の気持ちを和ませ,治そうとする勇気をあたえるかが,とても良く分かる.
私の排尿が思わしくないことを心配したTNさんが,トイレに一緒に行って小水の出方をチェックしましょうということになる.
私としては少々気恥ずかしいが,トイレに一緒に行ってもらう.そして,一生懸命排尿を試みたが,50立方センチメートルほどしか出ない.「大」も親指の先ほどしか排泄できない.
こんな状態なので,私もますます心配になるが,現段階ではどうしようもない.
■突然の朝食
7時頃,採血.早朝から血液検査である.
8時過ぎに,看護師から,今日予定していたTN先生による内視鏡手術(ECRP)は明日に延期になったと伝えられる.
なぜ,手術が明日に延期になったのか良く分からないが,致し方ない.
暫くすると廊下から,
「○○さん,××さん,△△さん,FHさん(私のこと)の4名,朝食追加です…」
と話している声が聞こえてくる.
8時12分,私のベッドのカーテンが開く.
「はいっ! FHさん,朝食です…」
と言いながら,私の左手首についているタグを照合する.
朝食は例によって,薄味である.
食事がでたので,栄養物の点滴は,今のが終わり次第,一旦中止ということになる.でも,実際に点滴が終わったのは昼過ぎになってからである.しかも,点滴用の針は右腕に刺さったまま.
<午前中の出来事>
■主治医の検診
9時20分頃,主治医のDT先生が見回りに来る.私の手術跡をチェックしてから,
「内視鏡手術は,明日することになりました…」
とのこと.
なお,傷口の回復状態は良好のようである.
当初の計画では,今日,内視鏡手術をする予定だったが,血液検査の結果,膵臓の働きが,手術の影響で,まだ正常に戻っていないので,大事を取って,1日手術を延ばすとのこと.
当初予定より,また,入院日数が増えてしまうのは困りものだが,これまたやむを得ない.
ついでに,病院食に物足りなくなっている私は,DT先生に,
「…売店でセンベイを買ってきて,食べて良いですか」
と伺う.
「FHさん(私のこと)の場合は,糖尿もないし…食べ物は普段通りにして貰って良いです…」
とのこと.
助かった!
■またまた導尿
10時頃,看護師が2人やってくる.
「お小水が大分堪っているようなので,導尿しましょう…」
とのこと.
どうも困ったことになったなと思案しながらも,現状では導尿して貰うしか方法がない.
また,例によって,下半身むき出しになり,エトバスのてっぺんから管が膀胱内に挿入される.ハズカシイやら,やり場がないやらで,導尿中,私はドギマギしっぱなしである.
看護師は,
「随分沢山出ましたよ…」
と言いながら,溲瓶を見せてくれる.
導尿によって出た小水の量は約1500立方センチメートルである.
”ああ…何とか自分で「小」の用がたせるようにならないかナ…このままでは何時退院できるか分からないぞ…”
私は言いしれぬ不安感に襲われる.
<インフォームドコンセント>
■TN医師からのインフォームドコンセント
12時頃,若い男性の看護師が現れる.そして,手術担当のTN先生が私にERCPの説明をするから先生の所に案内しますという.
私はERCPって何のことか気になる,そこでこの看護師に,
「ところで,ERCPって何の略ですか…」
と伺う.
看護師はちょっとしどろもどろになって,内視鏡を使って手術することですと答える.
私は悪いことを聞いてしまったなと反省する.私の聞きたかったのは,手術の内容ではなく.単純にERCPが何の頭文字かというだけだった.つまり.
”What ERCP stands for ?”
ということ.
…ま,ともかく,私は,この看護師の案内で,点滴棒を引きずって,TN先生の医局を訪れる.
「…どうぞ,ここから中に入って下さい…」
部屋の中は書類棚のような什器や机がビッシリと並んでいて,ちょっと狭苦しい感じがする.
TN先生の脇にある椅子に座る.早速インフォームドコンセントが始まる.
先生は,体内の様子が細かく描かれている図絵を使いながら,明日のERCPとやらの手順を詳しく説明してくれる.
膵臓と聞いて,高校時代に受けた生物の授業を連想する.
「…世界で一番小さい島はどこですか…」
と先生が生徒に質問する.
小生意気な生徒は,
「そもそも島って何ですか? 海や湖の中に顔を出している石は島に入るんですか? 一体どのくらいの大きさから島っていうんですか…」
と理屈っぽい.
それに,生物の授業で,島なんて出てくるのは何だかオカシイ.
すると先生は,
「世界で一番小さな島はランゲルハンス島って言います.ランゲルハンス島は膵臓の中にあります」
という.これは,もう,70年も前のことである.
この授業のことが妙に頭の中に残っていたので,私はTN先生の説明を受けながら,茫洋とした昔の生物の授業を連想する.
”あの頃は,何もなかったけれども,毎日が楽しかったな…”
と,ついつい自分の青春時代を懐かしく回想する.
■手術は2回になるかも…
ボンクラ頭の私が,説明内容を正確に把握できたかは,きわめて怪しいが.TN先生のインフォームドコンセントは,およそ次のような内容であった.
(1)胆管に石が幾つかある
MRIの画像からの所見では,胆管内に複数個の石がある.これらの石が胆管を狭めている.
道路に例えれば,もともと2車線の道路なのに,石が一車線をふさいでいる.だから,胆汁が通りにくくなっている.
したがって,このまま放置すれば,多分,1年以内に胆管は完全に詰まってしまう.詰まったら大変なことになる.
今のうちに,これらの石を取り除いた方が良い.
(2)十二指腸と胆管の結合部分を見つける
特殊な内視鏡を胃から十二指腸まで挿入して,胆管との結合部分を探す.使用する内視鏡は.先端の側面にカメラがついている特殊なものである.胆管の結合部分を見つけるには極めて高度な技術が必要である.
胆管との接合部には膵臓からの管も合流していて,大変微妙なところである.
(3)胆管との接合部分に通路を作る
次いで,内視鏡を胆管に挿入して石を取る.そのために,接合部分を数ミリ切開するが,この辺りには血管が密集していて出血しやすい所である.
(4)石の除去が困難な場合がある
胆管内の石は砕きながら取り除く.ただ,完全に取り除けるかどうかは,実際に内視鏡で患部を見ないと分からない.
もし,当病院の設備では取り除けない石があった場合は,設備のある大学病院を紹介する.
(5)手術が数回になるかも知れない
明日の手術で,石が取り除けない場合は,日を改めて,続きの手術をする.
■若い看護師から貰ったメモ
私はTN医師の説明に納得する.もうこうなったら”まな板の鯉”である.主治医のDT先生とTN先生にお任せするしかない.
TN先生のインフォームドコンセントが終わって,自分のベッドに戻る.
暫くすると,先ほどの若い男性の看護師が,私の所に来る.
「さきほどのERCPですが,この紙に書いたとおりの名称です…」
と言いながら小さな紙切れを私に手渡す.
「お忙しいのにわざわざスミマセン…」
私,大いに恐縮する.
その紙には,
「ERCP 内視鏡的逆行性膵胆管造営」
と几帳面な字で書いてある.
自分の妙な好奇心から,若い看護師に余計な手間を取らせてしまったなと深く反省する.私は折角頂戴したメモなので大切に保管しようと思う.
そこで,私は,昼食のお粥を糊にして,このメモを日記帳に貼り付ける.
なお,退院後調べた結果,ERCPはEndoscope Refregrade Cholangiopancreatograhyの頭文字を取ったものだと分かった.何だかやたらに小難しい単語の羅列で,結局の所は素人の私にはチンプンカンプンである.
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看護師から頂いたメモ
<午後のあれこれ>
■昼食
昼前に看護師が,血圧,体温,血中酸素濃度を計る.何れも正常値を示す.
12時15分,昼食.
メニューは次のスケッチの通りである.
<4日目の昼食>
■メールやりとり
入院前に,私が管理人になっているブログに,暫く入院するのでブログをお休みにする旨,掲示した.この掲示を見た五十三次洛遊会のAKさんから,メールを頂戴する.
私は恐縮,4月5日の定例会は,残念ながら欠席する旨,連絡する.
引き続き,私は家内と長女に,今日の予定の手術が,明日に延期されたことと,今のところ退院日が分からないことを,携帯メールで連絡する.
■ベッドの交換
夕方,主治医のDT先生が回診に来る.傷口を見て,順調に回復していることを確かめる.
「…電話で,奥さんに,入院が延びることを伝えておきました…」
とのこと.
続いて看護師が2人現れる.
明日の手術で,酸素吸入が必要になるが,今私が使っているベッドAには,酸素供給に設備がない.ベッドBには設備があるので,ベッドAからベッドBへ移動してくれとのこと.ベッドBの患者さんにも了承と取るという.
勿論,異論などあるはずもない.
”では…”
ということで,ベッドから立ち上がろうとすると,
「そのまま,そのまま…」
看護師は,私はベッドの上に座ったままの状態で,ベッドそのものを移動させる.
ベッドBは,ベッドAと線対称の配置になっている.右左の反対になるので,ちょっと戸惑うが,すぐに馴れる.ただ,ベッドBが出入口に近いためか,ベッドAに比較して,やや狭隘な感じがする.実際には全く同じ広さだが…
それにしても,
”酸素吸入とは…穏やかではないな…”
私は明日の手術について,何となく不安になる.
酸素吸入の装置
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<ベッドBに移る> <酸素吸入の装置>
■院内散策
ちょっと暇になる.
体調も,「小」を除いては,まあ,まあ.
相変わらずブドウ糖と生理的食塩水の点滴が続いている.
点滴の棒を引きずりながらも,少し歩いてみる気になる.自分のベッドのある部屋の周辺をウロウロしてみる.
”そうだ! 売店に行って,もし老眼鏡があれば買おう…”
私はナースステーションに行って,
「A棟の売店まで行っていいですか…?」
と伺う.
勿論,院内を歩くのは構わないけど,売店はもう閉まっているとのこと.残念.
私は自分の足が萎えてしまうのが一番恐ろしい.
そこで少しでも多く歩きまわっておこうと思う.他の方に迷惑にならないように,点滴棒を引きずりながら,自分の部屋の周辺を歩いたり,ベッドの脇で足踏みを続ける.
<4日目の夜>
■娘からのメール
夕方,長女からメールが来る.
「明日,(浜MM寺の)○○ちゃんの所へ行くので,ついでに手術に立ち会おうか」
という主旨のメールである.
MM寺の○○ちゃんは私の次女.
私はわざわざ立ち会う必要はないと返信する.
これ本音である.
■夕食
私はベッドの脇で足踏みを続ける.
18時10分,カーテンが開く.看護師が様子を見に来る.私が足部藻をしているのを見て,
「…やってますね」
とニッコリ.
「明日(4月1日),午後,ERCP検査がありますので,朝8時以降は食べたり飲んだりしないで下さい.」
という指示がある.
ただし,朝の飲むように指示されている薬はごく少量の水で飲んでくれとのこと.
やがて,夕食.
夕食のメニューは,下の絵の通りである.
”う~ん…やっぱり塩気が足りないな,生の野菜が食べたいな…お魚に醤油を掛けたいな…”
<4日目の夜食>
■血圧チェックと導尿
夕方,血圧,脈拍,体温,血中酸素濃度の測定がある.収縮期血圧が少々高めだが,その他は正常.
相変わらず「小」が出ない.
不本意ながら,また,導尿をして貰う.
750立方センチメートルほど採尿する.
相変わらず,自力で排尿できない状態が続いている.私はますます不安になる.
こうして入院第4日目の夜は更けていく.
暫くの間,テレビを見ているが,何となく面白くない.そこで,眼鏡なしで,単行本を読もうとするが,すぐに目が疲れてしまう.
こうなったらヤケクソ…もう,早々と寝るしかない.
こうして,入院第4日目は終わった.
(第4日目終わり)
(第5日目に続く)
つづき(第5日目)の記事
↓
(執筆中)
胆石症闘病記の目次
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「閑話休題」の前回の記事
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「閑話休題」の次回の記事
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