<小仏峠を下る>
歩いて巡る甲州道中四十四宿(第4回):(4)小仏峠から美女谷へ下る
(五十三次洛遊会)
2013年6月9日(日) 晴 (つづき)
<ルート地図>
※再掲
<小仏峠を下る>
■杉林の中の下り坂
昼食を終えて,12時00分,小仏峠を出発する.
資料1によると,小仏峠には江戸日本橋から14里目の一里塚があったようである.
登山道というよりは,公園の散策路のような歩き易い土道が続く,杉林の中の緩やかで長い下り坂である.
杉林の中の下草がかなり繁茂しているが,下草の新緑が美しい.
<杉林の下り坂>
■一体,どこを歩いているの?
今回私たちが歩いてきた道を振り返ると,小仏峠までは武蔵国,今の東京都八王子市.そして,小仏峠を越えると相模国である.
私たちは,確かに相模国を歩いているが,今の行政区分では,一体どこの市町村になるのだろうか? その辺りがどうも良く分からない.私が,
「今私たちが歩いているのは,神奈川県のどこの町ですか?」
と周囲の人に伺ってみる.
すると皆さん立ち止まって地図を眺める.
どうやら,ここは相模原市緑区のようである.それにしても,なんと,まあ,相模原市の広いこと.改めてビックリする.
「そういえば,道志村も相模原市?」
「いえ…道志村は山梨県ですよ」
「なるほど!」
<一体,どこを歩いているの?>
■中峠茶屋跡
長い下り坂が連続する.
12時23分,大きな木の洞(うろ)に差し込んである案内杭を見付ける.案内杭には「右小原宿 左小仏峠」と書いてある.
この案内杭だが,もともとこの洞に設置されたものか,誰かが悪戯をして,杭を洞に差し込んだのか分からないが,何れにしても目を引く.
案内杭に大きな字で「中」と書いてあるのが分かる.地図を確かめながら,洞に隠れている文字を推察すると,ここが,多分,「中峠茶屋跡」であろう.
<へんてこりんな案内杭>
■東海自然遊歩道
12時24分,東海自然遊歩道の案内杭の前を通過する.立派な杭である.「底沢バス停2.3km 小仏峠1.2km」と書いてある.
小仏峠から,随分と下ったつもりだが,まだ1.2キロメートルしか下っていない.まだまだ前途は長い.
<東海自然遊歩道の案内杭>
■舗装道路に出る
12時30分頃,下り坂がやや急になり,ジグザグ道になる.仲間のお一人が,“疲れて膝が痛くなりはじめた”という.“さもありなん…”
私は先頭を行くリーダーに,もっとユックリ歩くように進言する.そして,周りの方に,
「自分の後ろの方の様子を見ながら歩いて下さい」
とお願いする.正直なところ,これからが,疲労による転倒事故が興りやすいので怖い.
12時41分,山道が漸く終わって,舗装道路に出る.ここで2分ほど立ち休憩を取る.
下り坂の途中で,私たちを追い越した若い人のグループも,ここで休憩を取っている.
<舗装道路に出る>
<美女谷を下って小原宿へ>
■旧道に拘る
地図を確かめながら,舗装道路を右に曲がる.
私たちのグループの何人かが,若手グループに道を尋ねている.若手グループは別に甲州道中を歩いているわけではないので,旧道には拘っていないだろう.
地図を見ているとはいえ,本当に左折して良いのか自信が持てないので,先に行って正しいかどうか確かめる.
路肩を注意深く見ながら,数十メートル先へ行くと,確かに地図通りに細い下り坂がある.
「お〜〜ぃ…! こっちだよぉ〜っ…!」
と同行者を呼ぶ.
古道は踏み跡程度,道とは言えないほど藪の中で,急傾斜の下り坂,しかも夏草に覆われているので,足許が良く見えない.
“えぇ〜ぃ…構わず降りちゃおう”
先頭の私は覚悟を決める.
でも,暫く下ると,立派なハシゴになる.
“やっぱりこの道で良かったな”
今の道は,旧道のこの急な下り坂を避けるように,S字型に大きくカーブしている.
私たちが旧道を降りて,再び舗装道路を下っていると,大きくカーブした道を辿って降りてきた若手グループにまた追い越される.
<旧道を下る>
■美女谷を下る
高速道路2本の高架を潜ってから,12時53分,道路は墓場を廻り込むように鋭角に左カーブして,美女谷の左岸から右岸に渡る.曲がり角に,「照手姫の手鏡七ッ淵まで550メートル」と書いた案内板と,「照手姫ものがたり」という案内板が立っている.
地図で確かめると,この三叉路を北に数百メートルのぼると美女谷温泉があるはずである.ただ,現在は日帰り客は利用できないようである.
美女谷温泉から,さらに数百メートル遡ると,桂林寺という寺があるようだ.
照手姫の話は,中山道を歩いているときにも,どこかで見聞きしたことを覚えているが,どこだったかハッキリ思い出せない.気になるので帰宅後調べることにする.
<照手姫の手鏡案内板>
■美女谷の由来
案内板「照手姫ものがたり」によると,照手姫は小仏峠の麓,美女谷の生まれだという.「ものがたり」は下の写真の通りである.
資料2(p.288)によると,吉原の紺屋高尾もここの生まれだという.つまり,美女が多いところだから美女谷と言われたようである.
<照手姫ものがたり>
【余談だが・・】
帰宅後,中山道中五十九次を歩いたときの記録を辿ると,2012年6月24日(日),美濃赤坂付近で,照手姫の井戸を見学している.そこには,次のような記録が残っている.
■照手姫の水汲み井戸
…辺りを見回すと広々とした田んぼが一面に広がっている.その中に集落が点在している.
地図を見ると,中山道から,進行方向左手(南側)に少し離れたところに照手姫井戸があるようだ.折角だから,見学しようといういうことになる.
地図を頼りに,多分この辺りだろうと思われる角で左折して集落の中に入る.ところが集落には地図にない細かい道があって,たちまちのうちに自分たちの位置が分からなくなる.
何度か迷うが,13時28分,照手姫井戸に到着する.井戸の脇に案内板が設置されている.この案内板の説明は少々長いので,要約すると次のようなことが書かれている.
「照手姫は相模郡代の娘で美貌だった.そこへ常陸国司小栗判官正清が強引に婿入りした.悲嘆した照手姫は流浪の旅に出たが最後に青墓の長者に買われ,接客を強要されるが拒む.そこで長者は無理難題を次々に言い付けるが,千手観音菩薩の助けで成し遂げる.一方,小栗判官正清は美濃国役人に任命される.その後,照手姫は正清の妻になり幸せに暮らしたという.この井戸は照手姫が籠で水を汲んだと伝えられる・・」
そういえば,昔,どこかで聞いたような話である.
<照手姫の水汲み井戸(美濃赤坂付近)>
※詳しくは.下記のブログ参照.
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/0ac597cb44d93355c7229618496b2629
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■再び高速道路を潜る
再び高速道路の高架下を潜る.高速道路が,えらく高い所を通っているのに驚く.それにこんなに深い谷間沿いにも民家が点在しているのにも驚く.この辺りに住まわれている方々は,一体何を生業にしているのだろうか?
私たちの前方には,さきほど私たちを追い越していった若手グループの後ろ姿が見えている.
<高い所を通る高速道路>
■馬頭観音(?)
資料1の地図を見ると,2本の高速道路の間に馬頭観音があるようだ.リーダーと2人で注意深く見ながら歩くが,それらしいものは全く見当たらない.
12時58分,高速道路2本目を潜ったところで,大きな石の上に小さな石塔があるのを見付ける.これが馬頭観音なのだろうか? 良く分からない.
<馬頭観音?>
■板橋
12時28分,「板橋」と書いてある案内杭の前を通過する.
資料2(p.288)にも「板ばし」の記述があるが,ここにどんな謂われがあるのか全く分からない.多分ここに「板ばし」という橋が架かっていたのだろう.
<板橋の案内杭>
■中央本線のガードを潜る
13時02分,中央本線長久保のガードを潜る.いよいよ小原宿も間近だ.
<中央本線のガードを潜る>
■底沢橋を渡る
13時06分,底沢橋を渡る.直ぐ近くにバス停底沢がある.
橋の袂に「山峡のいで湯美女谷温泉」という看板が立っている.たまたま,私たちの仲間のお二人が看板の前にいる.なかなか趣のある写真が撮れた.
なお美女谷温泉は,現在,営業しているんだろうか?
インターネットで美女谷を検索すると,日帰り可能という記事も沢山ある.一方では,「…事前にネットで調べて,美女谷温泉の営業時間が11〜15時,料金700円とのことなので,2時前に着いたら大丈夫.しかし,びしょ濡れで到着すると玄関に何やら貼り紙.当館は日帰り入浴はやってません.ウソだろう!あのネットはなんだよ.」という記事もある(資料3).とにかく,美女温泉を利用する場合は,事前チェックが必要なようである.
<底沢橋を渡る>
■小原宿に入る
底沢橋を渡って間もなく,13時20分に「日本橋から63km」という標識を通過する.
どうやら,私たちは小原宿に到着したようである.
<日本橋から63km>
[参考資料]
資料1;完全踏査街道マップシリーズ「ちゃんと歩ける甲州道中四拾四次」五街道ウォーク事務局
資料2;今井金吾,1998,『今昔三道中独案内 日光・奥州・甲州』日本交通公社
資料3;http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-187415.html
(つづく)
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http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/4a1ab8bec40109024e6d2b4dcf364332
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(編集中)
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http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/a622a87fbc7f4454e3e837fc990ece58
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