<塔ノ岳山頂>
朧の富士山を眺めながら登る丹沢;塔ノ岳(今年37回目)
(単独山行)
2014年7月30日(水) 晴
■明けの明星と朝靄
昨日までの数日は,この時期にしては比較的涼しい日が続いていた.天気予報によると今日からまた蒸し暑い日に戻るとのことである.でも,午前中はまだいくらか涼しいようである.
このところ,私は天気が良くて,他の用事と重ならない限り,水曜日と土曜日には必ず塔ノ岳に出掛けることにしている.誰から強制されているわけでもないが…
“とにかく,塔ノ岳に行くぞ…”
4時10分に家を出る.まずは大船までの山下りである.2キロメートル余りの行程である.東の空には明けの明星がキラキラと光っている.夏至を過ぎて1ヶ月余り,いくらか夜明けが遅くなったようである.
何時ものように,電車の中は居眠りだ.小田原で乗り過ごしそうになりながら小田急電車に乗り換える.そして車窓から富士山と矢倉岳が重なるのを見たいので,眼を皿のようにして,その瞬間を待つ.でも残念.上空は良く晴れているのに,水平線近くには濃い靄が掛かっていて,富士山は全く見えない.
■大倉から歩き出す
渋沢発大倉行のバスは,数名の立ち席が出る.この時期にしてはまあまあの混雑である.乗り合わせた常連は,韋駄天のNMさん,毎日登山のTGさん,三角髭のTDさん,編集長のYKさん,YUさん,KIさん,MTさん,Hさんなど.
バスは,6時59分,大倉に到着する.到着と同時に登山者は三々五々塔ノ岳を目指して歩き出す.
7時06分,私はTGさんと一緒に歩き出すが,TGさんの登山速度には到底付いて行けないことは自明なので,登山道に入って暫く経ったところで,TGさんとお別れして一人旅になる.TGさんの後ろ姿は徐々に遠のいていく.
登山道は全く無風.先週登ったときよりは,いくらか涼しいような気もするが,それでもとにかく蒸し暑い.ただ,登山道の路面は,埃が立ちかねないほど良く乾いている.多分,山ヒルがノコノコと登山道に出てきたら,たちまちの内に干からびてしまいそうだ.
しばらく歩いている内に,今日は何となく体調が良いことに気がつく.
“やっと,身体が夏向きになったかな…”
それにしても,気候への遅すぎる順応能力は呆れるばかりである.これも加齢の結果だろうか.それとも生まれつきの体質なのだろうか.
<常連の後に付いて登山道に入る>
■見晴階段
8時44分,見晴茶屋を通過して,見晴階段に差し掛かる.ここで例によって定点観測用の写真を撮る.階段に沿って,登山者の後ろ姿が点々と見えている.私のすぐ前にも常連お二人の後ろ姿が見えている.
この時期,もっとも気を付けなければならないのは熱射病である.私はときどきハイドレーションシステムに入れた水を飲みながら登り続ける.階段を登り切って,モミジ坂に差し掛かる頃から,前方を歩いていたお二人の前に出る.そこから山頂までは全くの一人旅になる.
モミジ坂も,今日は体調が良いなと思いながら,まあまあの速度で登り続ける.それでも,一本松手前で,YUさんに追い抜かれる.
<見晴階段>
■駒止階段
駒止階段に差し掛かる.
私の前後には人の姿は見当たらない.一本松手前で私を追い越して行ったYUさん達の姿ももう私の視野から消えてしまい,遙か先を歩いているに違いない.
駒止階段の途中で,下山してくるYZさんとすれ違う.相変わらず二本ストックを鳥の羽のように持ったまま俊足で下っていく.
8時16分,駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間09分.蒸し暑いこの時期なら,まあ,こんな所だろう.
<駒止階段>
■堀山の尾根道
堀山の尾根道に差し掛かる.ここまで来ると気温も下がり爽やかになる.相変わらずの一人旅.緑陰を楽しみながらゆっくりと登り続ける.至福の一時である.
富士山が見える場所に到着する.
肉眼では,覗き込むようにして良く見ると,霞の向こうに富士山がうっすらと見えているが,いくら加減しても写真には写っていない.残念.
8時26分,堀山を通過する.このとき素晴らしく背が高い紳士に追い抜かれる.
<肉眼では富士山がうっすらと見えているが…>
■小草平
8時35分,小草平に到着する.杉木立の間に,相変わらず富士山がうっすらと見えている.写真には写っているようないないような感じである.
今日は平日,残念ながら堀山の家はお休みである.店先のベンチでは,男性2人が休憩を取っている.お二人に軽く会釈をして,小草平を通過する.
あいかわず,今日は自分の足取りが軽いことを感じながら,疲れが出ないように歩行速度を自制しながら登り続ける.こんな登り方をしていると,気分の上でも自然にゆとりが出てくる.周囲の景色をユックリと楽しみながら登り続ける.気分も最高である.
<小草平>
■萱場平
人を追い抜くことも追い抜かれることもなしに,平穏な気分のまま気持ちよく登り続ける.どこからともなくホトトギスの啼き声が聞こえてくる.
気温も蒸し暑いと言ってしまえばそれまでだが,ここ数回の塔ノ岳登山のときと比較すれば,それほどひどい蒸し暑さとはいえない.私は気分良く登り続ける.
8時54分に萱場平に到着する.
真夏の直射日光を浴びて,萱場平にはムッとするような空気が漂っている.木道の間で繁茂するアザミがすっかり大きくなって,木道の上まではみ出るほどになっている.
萱場平には人の気配は全くなく,不気味なほどに静まり返っている.
<萱場平>
■後7分坂(見晴階段)
汗が噴き出ないようにマイペースで慎重に登り続ける.
今日は体調が良いので,もっと早く歩きたいという願望がすぐに頭を擡げる.私は,
”安全第一,安全第一,…流れるような汗をかかないように…ユックリ登れ!”
と絶えず自分に言い聞かせる.
自重して昇る方がずっと楽だし,結果的には速く登れることは何回も経験しているはずだ.…が,それでも,ともすれば焦るように速歩で登りたくなるのは人間の業(ごう)か.
とにかく自制しながら登り続けて,9時08分に後7分坂に到着する.
ここからも富士山が見えている.
“では儀式として富士山を撮ろう”
ということで写したのが下の写真である.富士山が写っていると言えば写っているような気がしてくる.微妙な一枚です.
<後7分坂登り口での富士山>
■花立山荘
後7分坂の真ん中辺りで,下山してくる韋駄天のNMさんとすれ違う.相変わらずの俊足である.率直に俊足が羨ましい.
後7分坂を,ピッタリ7分で登って,9時15分,花立山荘に到着する.ここからも富士山がうっすらと見えているので,性懲りもなく富士山の写真を撮る.
山荘前では登山者お一人が休憩を取っているだけで静かである.
大倉から花立山荘までの所要時間は2時間09分.
“やっぱり,一寸…掛かりすぎだな〜ぁ…いくら蒸し暑くても,せいぜい2時間05分程度で登りたいな…”
というのが私の率直な感想である.
<花立山荘>
■花立山
花立山荘を通過する.
急な階段道が終わって,ガレ場に差し掛かる頃,道端の草むらで胡座をかいて休憩を取っている人が居る.その姿がまるで高僧が座禅を組んでいるような感じである.常連のIIさんである.
私はその端正な座禅姿に思わず見とれて,
「写真を撮らせて下さい…」
残念ながら,ご本人の了承を得ていないので,その写真をここで披露するわけにはいかないが…
「…今日は蒸し暑くて…,山頂には15分ほどしか居なかったです…」
と座禅の高僧が言う.
「そうでしたか…私には1週間前よりは少しはマシのように感じますが…」
「昨日は最高でしたよ…まるで秋のようでした…」
高僧と2分ほど雑談してから,再び歩き出す.
相変わらず富士山がうっすらと見えている.この夏の時期に富士山が見えるのは珍しいので,ついつい写真を撮るのに時間が掛かる.
9時27分,ようやく花立山を通過する.
<花立や過から富士山を望む;うっすら写っている>
■塔ノ岳山頂
9時34分,漸く金冷シを通過する.
ホトトギスの啼き声が聞こえてくる.そういえば,ひとときうるさく啼いていた蝉の声は全く聞こえなくなっている.季節の移り変わりを実感する.
金冷シを通過すれば山頂まで後僅かである.どんな歩き方をしても,もう何分も左派でない.私は随分と気楽な気分で登り続ける.
9時49分,塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温は+21℃.いくらか風が吹いている.
大倉からの所要時間は,2時間43分.何とか3時間を切ったようである.
辺りの写真を一通り写しながら,しばらく山頂で涼んでいると,尊仏山荘から常連のYUさんが出てくる.そして丹沢山の方に向かわれるようである.
私は尊仏山荘に入ろうか,止めようか,少々迷う.どなたか顔見知りの方が居られたら入ろうかなと思って,窓から山荘の中を覗く.
ちょうどそのとき,TGさんが山荘から出ようとしている.他には客は居なそうである.今日の小屋番はオーナーのHDさん.ならば必然的に「みゃ〜君」が客席に姿を見せることもなかろう.私は,
“今日は山荘には立ち寄らずに下山しよう”
と決める.
<塔ノ岳山頂>
■山頂で昼食
私は塔ノ岳山頂のポール脇のベンチに座り込む.そして,辺りの風景を眺めながら,早めの昼食を摂りはじめる.
山荘を出たTGさんが,
「ちんたら,先の下山しています…」
と私に話しかけた後,下山していく.
その数分後に,丹沢方面から戻ってきたYUさんが,
「そんならお先します…」
と私に挨拶して下山していく.
オニギリ1個とヨーグルトを飲んだところで,何となく“お腹いっぱい感”になる.
“…ん,なら,オレも早々と下山しよう…”
■ユックリ下山
10時04分,私も下山開始.
山頂直下の木道で,見晴階段付近までご一緒していたKIさんとMTさんのお二人とすれ違う.
その後も全くのマイペース.
金冷シ手前の階段で三角髭のTDさんとすれ違う.小丸経由で登ってこられたとのこと.相変わらずの俊足である.
私は大倉を12時22分に出るバスに乗りたいなと思っている.そこで私はバスの時間に合わせて,適当に下山速度を調整しながら下り続ける.
今日は平日にもかかわらず,途中で,沢山の若い人とすれ違う.学校が夏休みに入っているので,登山を楽しむ若い人が増えているんだなと思う.中にはチャンチューはメッチェンも沢山居る.彼女らと挨拶を交わしながら下山していると,つい数年前まで,若い学生達と一緒に過ごした日々のことが懐かしく思い出される.
“そう…あの頃,若い人から沢山の「若素」を貰ったから,健康な生活ができているんだ”
私は改めて“若素万歳”と心の中で叫ぶ.
10時46分,萱場平を通過する.その後も淡々と下り続ける.堀山の家近くの階段道で,TGさんに追い付く.
「顔見知りの人たちと雑談していたんで遅くなっちゃった…」
とのこと.
「12時22分のバスに乗りませんか…」
ということで,申し訳ないけれども先に行かせてもらう.
12時05分,予定通りの時間に大倉に到着する.YUさん達,私より先に下山された方々も,同じバスになる.そして,結局はTGさんも同じバスに乗り合わせる.バスの発車間際にTDさんも乗車する.
今日の塔ノ岳からの下り所要時間は2時間01分.速くも遅くもない所要時間である.
バス停には例のユーモラスなネコが居る.早速写真を撮る.
<バス停大倉で出会ったネコ>
■絶好の待ち時間で帰宅
バスは12時34分に渋沢に到着する.
「おつ,12時37分の電車に間に合うぞ…」
私は小走りにエレベーターと階段を駆け下りて,渋沢12時34分発小田原行電車に乗車する.小田原では乗換時間2分で,小田原発13時04分の特別快速高崎行に飛び乗る.そして,13時33分に大船駅に到着.
大船駅前発13時40分のバスに乗車,13時52分には,もう自宅に到着してしまう.大倉から自宅までの賞味の所要時間は1時間30分であった,
<ラップタイム>
7:06 大倉歩き出し
7:44 見晴茶屋
8:16 駒止茶屋
8:35 堀山の家
9:15 花立山荘
9:34 金冷シ
9:49 塔ノ岳頂着(+21.0℃)
10:04 〃 発
10:15 金冷シ
10:27 花立山荘
10:59 堀山の家
11:14 駒止茶屋
11:34 見晴茶屋
11:49 観音茶屋
12:05 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:07
塔ノ岳 着 10:06
(所要時間) 2 時間59分(2.98h)
水平歩行速度 7.0km/2.98h=2.34m/h
登攀速度 1,269m/2.98h=425.8m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:32
大倉 着 12:45
(所要時間) 2時間13分(2.22h)
水平歩行速度 7.0km/2.22h=3.1598km/h
下降速度 1,269m/2.22h=571m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/629d47482f68f3000c83b12f53d92927
「丹沢の山旅」の次回の記事
(なし)
※誤字脱字転換ミスご容赦.
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朧の富士山を眺めながら登る丹沢;塔ノ岳(今年37回目)
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