<堀山の家夫人の紅葉>
初冬の紅葉と富士山を愛でる丹沢:塔ノ岳(今年51回目)
(ご常連と一緒に登る)
2013年11月13日(水) 快晴
■朝焼けの富士山
この所,急に寒くなったような気がする.
今朝も何時もの通り,3時半頃目覚めたが,滅法寒くて,なかなか寝床から出られない.毎度のことながら,寝床の中で丹沢へ”行く”,”行かない”の葛藤が波のように寄せては返す.まあ,有り体に言えば,”行く”と”行かない”の比率が51対49の僅差で”行く”が優位になる.
でも今日は水曜日,電車は平日ダイアである…ということは小田原駅で階段2段跳び乗換という煩わしさがある.
この年になると,階段二段跳びのような煩わしいことが,余計に煩わしく感じるようになる.私は,この煩わしさを避けるために,何時もより1時間も早い4時10分に自宅を出て,大船駅まで歩くことにする.私の家から大船駅までの歩程は約2.5キロメートルである.真っ暗な街中を歩くのはいささか心細いが,歩いている内に,次第に気分がシャキッとしてくる.
小田原には6時前に到着する.このまま小田急電鉄に乗り換えたのでは時間が早すぎる.このまま渋沢駅へ行ったのでは,寒い中,手持ち無沙汰になってしまう.そこで,小田原駅で,わざと1電車遅らせることにする.
まだ速い時間なので電車は空いている,それに,今日は久々の良い天気である.例によって,新松田手前で富士山と矢倉岳が出会う写真を撮ろうと思う.でも,ついつい余計なことをあれこれ考えている内に,電車は撮影スポットを通過してしまう.それに気がついて,
”しまったっ!”
でも,朝焼けに赤く輝く富士山が見えているので,機嫌を直して富士山のヤケクソ写真を撮る.下の写真が,このヤケクソ写真である.
車窓から外の風景を眺めていると,辺り一面に霜が降りているのに気がつく.この辺りは,少し内陸に入っているためか,海に近い鎌倉辺りに比較すると,随分寒そうである.
<朝焼けの富士山>
■“陽だまり”の散策路
渋沢発大倉行1番バスは,平日にしては混雑している.ご常連も沢山乗車している.韋駄天のNMさんとSTさん,デイリークライマーのTGさん,俊足のUMさん,TDさん,NMさん,YUさんなどのご常連の顔が見える.
バスは7時前に大倉に到着する.
バスが到着すると同時にNMさん,STさんの俊足組は塔ノ岳に向けて歩き出す.
私は,7時07分に,
“ウオームアップのストレッチが一寸足りないな…”
と思いながら,たまたま居合わせたTGさん,NMさんと一緒に大倉から歩き出す.
私など,このお二人の歩行速度には,到底,及ばないので,
「お先にどうぞ…」
とへりくだるが.お二人とも,
「今日は.ゆっくりのぼりましょう…」
と仰るの.それならば,楽しくご一緒させて貰うことにする.
ご常連のTDさん,MTさん,YUさんは,私たちより先に歩き出したようである.
終始私のスローペースで,8時02分に見晴茶屋を通過する.すぐに,見晴階段に差し掛かる.私は見晴階段のような急勾配の所が苦手だ.苦手な所は,あくまで,スロー,スローである.多分私は,
”スロー,スロー,クイック,クイック,…”
で,お二人に置いて行かれるだろうと予想する.
ところがご同行の皆さんは紳士淑女である.有り難いことに,終始私の“スロー,スロー”ペースにお付き合い頂く.
やがて駒止階段に差し掛かる.ここも私の鬼門のヶ所.多分,ここでもお二人にご一緒して頂く.
8時15分,駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから,1時間08分経過している.
「何時もより,10分ほど遅いですね…」
とTGさんが独り言のように言う.
最近の私の体力では,大倉から駒止茶屋まで,1時間05分程度で歩くのが,穏当な努力目標だろうと思っている.もっとも,4〜5年前までは,駒止茶屋まで1時間で歩くのを目標にしていた.もし,駒止茶屋を1時間程度で通過すれば,塔ノ岳までの所要時間は.2時間15分前後になる筈である.今の私には,到底,無理! 無理!
3人揃って,堀山の尾根に差し掛かる.
今日は上々の天気である.この辺りは,心地よい陽だまりの散策路である.
「…今日は,(折角の天気だから)写真を沢山撮りながらゆっくり登りましょう…」
とTGさんがいう.勿論,異論などあるはずもない.大賛成である.
<心地よい散策路;堀山の尾根>
■富士山に出会えた!
やがて富士山が良く見える場所に到着する.
この頃,“見えない富士山の写真”を毎回撮っている.でも,今日は富士山がバッチリ良く見えている.折角だから,ばっちり時間を取って,富士山の写真を撮りまくる.
私のバカカメラでも富士山がそれなりに写ったので,私は大満足である.
8時25分,堀山を通過する.ここからは,緩やかな下り坂.スピードが出やすい所である.逆に下山のときは,この長い坂道が恨めしくなる所である.
<堀山からの富士山>
■堀山の家
8時31分,堀山の家(小草平)に到着する.
ここからも富士山が良く見えている.
「…ここからの(富士山の)写真を撮りましょう…」
ということで,小草平で1〜2分,休憩を取る.
小草平の紅葉をバックに,同行のお二人の写真を撮る.あまりに格好良かったので…
<小草平で紅葉をバックに…>
■富士山が良く見えているのに…
小草平からの富士山を,実に5〜6枚もの写真を撮る.
デジカメを空に向けたり,森のあわせたり,さまざまな条件で,沢山の写真を撮ってみる.でもろくでもない写真しか撮れない.
“このバカカメラめ!テメエなんか早くぶっ壊れてしまえ…!”
私はヤケクソである.
同行のTGさんのデジカメでは,富士山がとてもよく写っているが.
俗に“飼い犬は主人に似る”という言い伝えがある.これを敷衍すると“カメラは持ち主に似る”ってことかな? 何れにしても,このバカカメラにはお手上げだ.
<富士山が良く見えているのに…>
■紅葉を楽しみながら登る
堀山の家から花立山荘まで,私が目標にしている所要時間は40分である.同行頂いているお二人には“かったるく”感じる遅速に違いない.
「私,花立山荘まで40分掛けてユックリ登ります…お先にどうぞ」
でも,お二人もユックリ登られるとのことなので,さらにこの先もご一緒していただく.
堀山の家を過ぎた辺りの紅葉が見頃で,実に綺麗である.私は,ときどき左右や後ろを振り返りながら,見頃の紅葉を楽しむ.
<堀山の家付近の紅葉>
■萱場平で一休み
私は自分の経済速度で登り続ける.私のすぐ後ろにNMさんが居られる.
“私が遅速なので,(NMさんは)ざぞかしイライラしているだろうな…”
と想像しながら…
8時53分,萱場平に到着する.
「あれ〜っ! TGさんが居ない…どうしたんだろう?」
私たちは,TGさんが居られないのに初めて気がつく.
「少し待ちましょう…」
…ということで,ベンチに座り込んで,TGさんの到着を待つ.
ほんの2〜3分待った所で,TGさんが現れる.
「途中で,30〜40枚の写真と撮っていましたんで,遅くなっちゃいました」
とのこと.
“私も,お付き合いして,もっと沢山写真を撮れば良かったのに…”
休みついでに,NMさんから,オヤツを頂戴する.
振り返って見ると,萱場平は何時も通過していて,ここで休憩を取るのは,それこそ10年ぶりぐらいだろうか.休憩を取りながら,
“途中でユックリ休みながら登るのも,実に良いものだ”
と改めて思う.
私の心の奥底に住み着いているもう一人の私が,
“登山も人生と同じだ.お前さんも,スローライフっていう言葉知っているだろう…お前さんはアスリートではなく,平凡なオッサンだろう.そうしたら,速く登ろうとするのは死に急ぐと同じじゃないか…”
と私を諭す.そんなこと,理屈の上では良く分かっているんだが,目の前に人が居れば追い越したくなるし,追い越されれば癪に障る…こんな「煩悩」が,いくら馬齢を重ねても,ついつい頭をもたげるから,本当に困ったものである.
<萱場平>
■後7分坂の富士山
後7分坂(花立階段)に差し掛かる所で,下山してくる韋駄天のNMさんとすれ違う.何時もは,この坂の階段を3分の2ほど登った所ですれ違うが,今日は坂の“3分の2”だけ遅いところでのすれ違いである.
後7分坂に到着する.階段の手前から見える富士山の写真を撮る.実に見事で美しい.8合目ぐらいに棚引いている雲の案配もなかなかである.早速写真タイムを取る.
<花立階段下から富士山を望む>
■毎度シンドイ後7分坂
後7分坂を登り始める.
これまで私と一緒に登っていたお二人が俄然速くなる.到底,私はお二人に付いていけない.お二人と私の間の距離が,ジリッ,ジリッと広がっていく.
お二人が花立山荘に到着する頃には,私との間に階段20段ほどの差が付いてしまう.
毎度のことながら,この後7分坂にはウンザリする.
<俄然ピッチが上がる後7分坂>
■花立山荘
9時20分,花立山荘に到着する.
私より一寸前に到着したTGさんが山荘前で富士山の写真を撮っている.まだ登山者の姿は全くなく,付近は静まり返っている.
丁度そのとき,下山してくる韋駄天のSTさんとすれ違う.
今日の大倉から花立山荘までの所要時間は2時間13分.途中で休憩を取った分だけ所要時間が長くなっている.堀山の家から花立山荘までの所要時間は49分.萱場平で休憩を取ったとはいえ,予定の40分を大分超過している.でも,まあ,いいか.
<花立山荘>
■南アルプスも見える
花立山荘から塔ノ岳山頂までの所要時間は30分も見れば十分である.辺りの風景を楽しみながら,何枚も写真を撮る.
9時25分,花立山山頂に到着する.
山頂の空気は冷涼で澄み切っている.ここからは富士山だけでなく,南アルプスの山々もクッキリと見えている.ここでも写真タイム.
足許の辺り一面に霜柱が立っている.随分と寒いが,ここで写真を何枚も撮る.
<花立山からの眺望>
■まるで鳥になったようだ
花立山山頂から,相模湾の方を見渡す.
相模湾,小田原,真鶴半島方面が良く見える.素晴らしい眺めである.山頂に立つ二人のシルエットが実に良いので,思わず写真を撮る.一寸工夫すれば絵になる構図である.
<花立山山頂から相模湾を見下ろす>
■塔ノ岳山頂
9時49分,塔ノ岳山頂に到着する.数名の登山客が山頂で休憩を取っている.相変わらず富士山や南アルプスが良く見えている.反対側を見渡すと,大山を初めとする表尾根の山々から,遠くは東京スカイツリーまでハッキリ見えている.
何時ものように山頂からの写真を撮りまくる.
山頂の気温はマイナス4.0℃.真冬並みの寒い気温である.
大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間は,2時間47分.途中でかなりユックリ遊んでいたので,まあ,こんな所だろう.
<塔ノ岳山頂から富士山を望む>
■尊仏山荘
3人揃って尊仏山荘に入る.先着はYUさんと,MTさん.今日の小屋番はW田さん.ネコは隣の小屋の2階で日向ぼっこをしている.
何時ものように300円也のお茶を所望する.
暫くすると,私たちより30分遅いバスで来られたTTさんが尊仏山荘に到着する.そして,鍋割山を経由して来られたUMさんも到着する.相変わらず俊足である.
雑談に花が咲く.UMさんに,
「…今頃は鹿沼岩山が面白いですよ…」
と紅葉の鹿沼岩山を紹介する.
若い女性が山荘に入ってくる.何だか落ち着かない様子である.常連ばかりで居づらいのかと思って,
「どうぞ,ここへお座り下さい…」
と言いながら席を空ける.すると,この女性は,
「ネコは居ないんですか…」
と小屋番のW田さんに聞く.
「ネコですか,隣の小屋の窓で日向ぼっこしながら昼寝しています…」
ネコは本当に気楽で良いなと思う.オレの理想はネコ的生活かな?
10時35分頃,私たち3人は,そろそろ下山しようと思う.丁度そのとき,つい最近ヒマラヤへ行っていたTZさんが山荘に到着する.
「これ(ネパールで),100円ですよ…」
と言いながら,裏地付きの編上防寒帽子を披露する.
こうして山荘は常連の皆さんで大賑わいになる.
<常連で賑わう尊仏山荘>
■ノンビリ下山
10時40分,塔ノ岳山頂から下山開始.私たちが山頂に到着してから50分ほどの間に,山頂で休憩を取っている登山客が随分と多くなっている.
山頂はとにかく寒い.防寒具を着たまま下山し続ける.でも,花立山荘まで下れば暖かくなるのが分かっているので,かなり速い速度で下り続ける.
途中,花立山山頂からの眺望だけは,寒さを我慢して,存分に楽しむ(下の写真).茫洋と光る海が,如何にも冬の到来を実感させてくれる.
<茫洋と光る相模湾>
■重い荷物を背負ったチャンピョンとすれ違う
花立山荘を経て,しばらく下った所で,10分ほど立ち止まる.その間に,後から下山し始めたMTさんとTTさんが私たちに追い付く.
花立階段を過ぎて,ガレ場を下っているときに,重そうな荷物を背負って登ってくるチャンピョンとすれ違う.どうやら荷物は缶ビールのようである.
「やあ,やあ,…皆さんお揃いで…」
とチャンピョンが私たちに挨拶する.
「あら…私がいつも飲んでいる○○ビールだわ.重いの運んでもらって,どうもありがとう」
とNMさんが秀逸な挨拶をする.
下山途中で衣服調整.防寒具をリュックに仕舞い込む.
何時の間にか,雲が沸き上がっている.私たちが堀山の尾根を通る頃には,あれほど良く見えていた富士山も,雲間に見えなくなっている.そして,私たちに追い付いたMTさんとTTさんの後ろ姿も,富士山同様に,何時の間にか見えなくなっている.
こんなに天気が良い日に,急いで下山するのも惜しい.私たちは何時もより少し遅い大倉13時22分発のバスにあわせて下山し続ける.
<チャンピョンとすれ違う>
■塔ノ岳万歳!
予定通り大倉13時22分発のバスに乗車する.MTさんとTTさんも結局同じバスになる.
渋沢駅からは,一人旅.小田原駅での接続は余り良くない.さらに,大船駅からのバスの接続も悪い.しかたなく,大船駅ルミネ1階のコーヒー店に立ち寄る.ここはTポイントが付く行きつけの店である.
15時過ぎに無事帰宅.
ひと息入れてから,近所の掛かり付けの内科医を訪れる.1週間前に受信した後期高齢者健康診断の結果を伺うためである.プライベートなことなので,具体的数値は書かないが,診断結果は,中性脂肪,各種コレステロール,血糖値など全て正常値.ただ,クレアチンとやらが,標準値ギリギリ.これは腎臓の機能を示す数値だという.
「ウン…健康状態に問題はないですね,ただ,クレアチンが一寸高めですね.あなたは,山登りをしているようですが,水分を十分にとって脱水症状にならないように注意して下さい…」
という石のコメント.
いずれにしても,これらの数値は昨年の健康診断のときの値とほぼ同じである.
でも,まあ,この年になって,まずは健康で過ごせるのは有り難いことである.
こうして.健康で過ごせるのは,丈夫な身体に生んでくれた両親に感謝することは当然だが,週に1〜2回登っている塔ノ岳にも大いに感謝しなければならないだろう.
何れにしても,今日も良かった! 良かった!
“塔ノ岳万歳!”
<コーヒータイム>
<ラップタイム>
7:07 大倉歩き出し
7:23 観音茶屋
8:02 見晴山荘
8:15 駒止茶屋
8:31 堀山の家
9:20 花立山荘
9:35 金冷シ
9:49 塔ノ岳山頂着(-4.0℃)
10:40 〃 発
10:50 金冷シ
11:02 花立山荘
11:52 堀山の家
12:08 駒止茶屋
12:30 見晴山荘
12:55 観音茶屋
13:15 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:03
塔ノ岳 着 9:49
(所要時間) 2時間46 分(2.88h)
水平歩行速度 7.0km/2.88h=2.43km/h
登攀速度 1269m/2.88h=440.6m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:40
大倉 着 13:15
(所要時間) 2時間35分(2.58h)
水平歩行速度 7.0km/2.58h=2.71km/h
下降速度 1269m/2.58h=491.9m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f98fbf0c2dadd9b343b05cbf7c019f6d
「丹沢の山旅」の次回の記事
(なし)
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初冬の紅葉と富士山を愛でる丹沢:塔ノ岳(今年51回目)
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