<登山道に日が射し始める>
北アルプス:常念岳・蝶ヶ岳縦走:第1日目(1);ヒエ平から常念岳を目指して
(アルパインツアーサービス)
2013年9月13日(金)〜15日(日)
<コース地図>
■コース全体図
■第1日目のコース(ヒエ平登山口→常念小屋)
<集合場所の松本へ>
■久々の北アルプスだ
今回の山行は,私にとって久々の北アルプスである.実は,昨年は白内障の手術を受けた事もあって,一昨年の夏に燕岳から常念岳まで縦走したのを最後に,北アルプスからは遠ざかっていた.その間,私の心の中のどこかで,
“もう年なんだから,好い加減に北アルプスに行こうなんて,思わないようにしなさい.他の人の迷惑になるよ…”
という声が聞こえないわけではないが…私は入門的なコースでも良いから,是非,北アルプスに行きたいという気持ちを抑えきれなくなっていた.
私は山登りについては全くの素人.でも,何時の間にか,主だった北アルプズの山には,ほとんど登ってしまった.中には登った回数が直ぐには分からないほど繰り返して登っている山がある一方で,どういう風の吹き回しか分からないが,蝶ヶ岳と乗鞍岳には,未だに登ったことがない.
そんな折,図らずもアルパインツアー社主催の常念岳・蝶ヶ岳縦走コースがあることを知った.
“これはもう,絶対申し込むしかない!”
そんな次第で,今回は常念岳と蝶ヶ岳を縦走するツアーに参加することにした.
そして,ツアー第1日目の今日を迎える.
■早々と新宿駅へ
今日は,10時30分,松本駅改札口前集合である.
私は新宿発7時00分スーパーあずさ1号に乗車することにする.そのために,自宅近くのモノレール駅初電5時26分発の電車に乗って大船に向かう.大船から品川経由で,6時03分に新宿に到着する.まだ,スーパーあずさ1号の発車時間まで小1時間もある.何時ものことながら,目的地に早く着きすぎて,時間を持て余す.いくら何でも早すぎるので,駅構内のコーヒーショップで,200円也のコーヒーを賞味する…が,この店,立ち席だけで座席はない.まだ,ラッシュアワーではないのに,店から出たり入ったりする人が多くて,なんとも慌ただしい雰囲気である.
“こりゃ〜…,たまらん!”
私は,ほんの10分ほどで,アタフタとコーヒーショップを出てしまう.
少々早いが,あずさ号が出発するホームに向かう.私が乗るのは,勿論,自由席である.まだ,十分に早い時間なのに,世の中には,私よりもっとせっかちな方が居るらしく,もう3〜4人の乗客が列を作っている.私もその後に付いて並ぶ.この位置ならば,どこの席でも自由に選んで座れる.
暫くすると,次々に乗客が並び始める.私と同じようにリュックを背負った人達が次から次へと現れる.この人達に行き先は北アルプス? それとも八ヶ岳? 中央アルプス?…そんなことを想像するだけで楽しくなる.
6時45分頃,スーパーあずさ1号が入選する.私は甲斐駒ヶ岳の雄姿でも見ようかなと思って,進行方向左手の窓側の席に座る.
次から次へと乗客が乗り込んできて,座席はたちまちの内に満席になり,発車時刻には立ち席の人も何人か出るほどの混雑になる.
■松本駅到着
7時00分,列車は定刻に発車する.
立川,八王子を過ぎる頃には,沢山の方々が,列車の通路にも溢れるほど乗車している.
車窓から,ごく最近,歩いて巡る甲州街道の旅で,歩いた街道は,どの辺りだろうと思いながら,辺りの風景を興味深く眺める.今月末にも,先日歩いた甲州街道の続きを歩く予定になっている.そんなこともあって,車窓の景色を興味深く見続ける.
列車が甲府に到着すると,沢山の乗客がドッと下車して,車内には空席もチラホラ見えるほどに空いてしまう.
列車が,小淵沢を過ぎて,信濃路に入ると,信州で生まれ育った私の血が,俄に騒ぎ始める.ついつい脳裏に浮かぶのは,
“信濃国は 十州に…”
の歌である.
車窓から中央アルプスの山々を見渡す.ところが雲が垂れ込めていて,折角の稜線は全く見えない.今日は視界の利かない山道をひたすら登ることになりそうな気がしてくる.
列車は9時39分に松本駅に到着する.集合時間は10時30分である,ここでも小一時間の待ち時間がある.駅構内のお店の開店時間は10時である,コンコースに面したコーヒーショップは開いてはいるが,先ほど新宿駅でコーヒーを賞味したばかりである.いくら何でも,そんなに立て続けに何杯もコーヒーを飲んだら,また胃がおかしくなるに決まっている.
“どうにも,こうにも,しょうがないなあ…”
私は仕方なく駅のコンコースを行ったり来たりを繰り返す.それでも,時間は確実に経過して,10時になる.それでは…ということで,開店したばかりの駅構内の売店をウロウロする.
やっと,時間を潰して,10時20分頃,集合場所の改札口前に移動する.
やがて,新宿7時10分発あずさ3号が松本駅に到着する.今日の参加者のほとんどは,この列車の乗車していたらしく,集合時間の10時30分には,参加者全員が揃う.
■今回のツアーは参加者11人
今回の参加者は男性5人,女性6人,計11人.アルパインツアーからのガイドは3人と豪華である.ガイド1人に対して,ツアー客は4人弱のガイドレイショである.私がツアー会社が主催するツアーに参加する理由はただ一つ,「安全」を「お金で買う」のが目的である.だから,仮に参加費が多少高いなと思っても,安全に配慮されているツアーならば,高いとは思わない.
私たちが駅コンコースで初顔合わせをしていると,コンコースの直ぐ隣に,私たちと同じ様な登山グループが集まっている.このグループの中に,山旅スクール5期の同級生,ノシイカさんが居られるので,ビックリする.ノシイカさんとは,つい先日,ノルウェーの旅でご一緒したばかりである.ノシイカさん達のグループの主宰者は「××総合案内所」.私も時々利用させて頂いているツアー会社である.ノシイカさん達のグループは2泊3日で霞沢岳にのぼられるとのこと.
私たちは,受付を済ませてから,直ちに専用車に乗車する.
<松本駅到着> <専用車に乗車>
<ヒエ平登山口から登山開始>
■松本駅からヒエ登山口へ
10時35分,松本駅西口に駐車している専用車に乗り込む.バスは直ちに松本駅前から発車する.暫くの間は,何とも長閑な感じのする安曇野の平野を走っていたが,やがて専用車は山岳地帯に入る.車窓から見ていると,道路は深く切り込んだ谷を高巻きしながら,高度を上げていく.もし,車が谷へ転げ落ちたら,何百メートルも下の谷底まで一気に転げ落ちるだろうなとイヤな想像をする.
走る車内で,3人のツアーリーダーの自己紹介がある.北海道にある某大学のワンゲル部出身の方,鎌倉で人力車の車夫をされたことのある方,植物に詳しくて芸術家肌の方,それぞれ個性豊かな方である.
11時25分,専用車はヒエ登山口駐車場に到着する.
まずは,最初のミーティングである.参加者が1人ずつ自己紹介をする.私の直ぐ脇に,ツアーリーダーのお一人が,参加者名簿を眺めながら,自己紹介の内容をメモしている.
“何を書いているんだろう…”
私は気になって,チラチラとこのメモを斜めから覗き込む.参加者の名前の直ぐ隣に赤いボールペンで,参加者の年令が書き込んである.それを見ると,私の所には,高齢者要注意のようなことが書かれている.私は,それを見て,
“またか!”
とやり切れない気持ちになる.
“年令だけで,烙印を押して貰っては困るよ”
と内心では思うのだが,だからといって,年令以外に客観的な尺度は,そう簡単に見当たらないから,やむを得ないと言えばやむを得ないのだが…でも,一寸でも失敗をやらかしたら,
「年甲斐もなく梁などに登るからだ!」
と言われてしまうに決まっている.
…ま,とにかく,私は自分の自己紹介では年令など言わずに,名前と鎌倉に住んでいることしか披露しなかった.
<ヒエ登山口に到着>
■ストレッチを済ませて登山開始
ツアーリーダーの音頭で,一通りのウオームアップ体操を済ませる.そして,11時53分,私たちは,いよいよヒエ平から常念小屋を目指して歩き出す.
「脚に自信がない方は,前の方に来て下さい…」
とチーフのツアーリーダーが言う.
先頭がチーフリーダー,その後に数名の女性が続く.真ん中辺りにもう一人のツアーリーダーが入る.その後ろに,何となく男性群が続く.最後に3人目のツアーリーダーが付く.
登山口の直ぐ近くに「常念岳登山口標高1260m」と書いた案内標識が立っている.
<登山口の案内標識>
<緑豊かな谷間の登り坂>
■森の中の登山道
私は,なんとはなしに,列の後ろの方に付いて歩き出す.これも,人を押しのけてでも先に出ようとは決して思わない私の消極的な性格の現れだろう.でも,まあ,登っているうちに,だんだんとお互いの力量が分かってくるだろうと思いながら歩き続ける.
先頭を行くツアーリーダーの歩行速度が,何時も一定していて,ゆっくりペースなので,歩き出して直ぐに私は,
“この調子なら,いくらオイボレの私でも付いて行けそうだ”
と安心する.
私には植物のことは“からっきし”分からないが,植生が豊かな森の中を緩やかな登り坂が連続する.私は“転ばぬ先の杖”として,ストックを1本持参しているが,平素はストックを使わないので,今日もストックはリュックにくくりつけたままにしている.
今回は2泊3日の山行である.したがって,週に1〜2回登っている日帰りの塔ノ岳詣でのときに比較すると,リュックが若干重くなっている.多分,今日のリュックの重さは8〜9キログラム,何時もの塔ノ岳のときより2〜3キログラム重くなっていると思う.実は,リュックの重さの2〜3キログラムの違いが,実際に山道を歩いてみると,体感的にもかなり違って,しんどいことが良く分かる.
鬱蒼と繁茂する木々の緑の下で,こぼれ日を浴びながら登り続ける.
<森の中の登り坂>
■山ノ神
12時25分頃「,「山ノ神」に到着する.
大きくて立派な鳥居が建っている.その奥に「山ノ神」の社殿がある.
12時37分,山ノ神から少し先へ登ったところで,登り始めてから最初の休憩を取る.
まだ,歩き出していくらも時間が経っていないのに,もう,いくらか汗ばんでいる.温度計を持参していないので,気温が何度あるのか分からないが,出掛ける前に予想していたよりは,大分蒸し暑く感じる.
<山ノ神>
■最初のレクチャー
ツアーリーダーのお一人から,休憩時間を利用して,5分ほど,最初の野外レクチャーを受ける.ヤマブドウなどの試食.
私は信州の山の中育ち.戦後,大人達に連れられて,しばしば,ヤマブドウ採取に出掛けた.でも,ヤマブドウを食べたという記憶はほとんどない.当時は戦後の混乱期.多分,葡萄酒でも密造していたんだろうか.山で催すと,その辺りで,ネーチャーコールスミーでしでかした.そんな経験から,高い所の木の実ならいざ知らず,登山道の周辺に落ちている木の実などは絶対に口にしない.
…で,今回も幼少の頃の記憶から,試食はパス.
とはいえ,ツアーリーダーの博識には脱帽.草木のことはからっきし分からない私には,ただただ,彼の博識がうらやましい.
<最初のレクチャー>
■川の左岸沿いに登る
最初の休憩を終えて,12時51分に再び歩き出す.
列の順番は,休憩前とほぼ同じである.
歩き出してから間もなく,登山道は川岸近くを通るようになる.地図を見るが川の名前は良く分からない.大きな石がゴロゴロと転がっている滝のような川である.私たちは流下する水の音を聞きながら登り続ける.
登山道は,ところどころで,大きな石伝いの歩きにくいところや,どこが登山道かハッキリしないところもあるが,つい先日歩いたノルウェーのガルホビッケン山に比較すれば,まだまだずっとマシな登山道だなと思いながら登り続ける.
<川の左岸沿いの道を登る>
■エボシ沢
13時47分,エボシ沢に到着する.ここで今日2回目の休憩を取る.
エボシ沢の標識を見ると,ここはヒエ平登山口から水平距離2.8キロメートルの地点ようである.常念小屋までは,水平距離で,あと2.9キロメートル.水平距離で見れば,今日の行程の約半分を歩いたことになる.
「水平距離で言えば半分歩いたことになりますが,おしまいの方になると急な登り坂が続くんで,まだまだですよ…」
とツアーリーダーが私たちの気を引き締める.
ここの標高は1,750メートル.ヒエ平の標高は1,260メートル.ここまでの標高差は490メートル.ヒエ平の歩き出しが11時53分だったので,標高差490メートルを休憩時間込みで1時間54分(1.90h)掛けて登ったことになる.したがって,登攀速度は約258メートル/時ということになる.これは,かなりユックリペースである.これならば私でも十分に付いて行けるなと確信する.逆に,もう一寸速く350メートル/時ぐらいでもなんとかなりそうである.
この時点で,私は今回のツアーには間違いなく付いて行けるなと確信する.
休憩時間中に空を見上げる.
依然として,上空には雲が多いが,だんだんと日が射し始めている,どうやら天気は好転しているようである.
<エボシ沢標識> <エボシ沢で一休み>
■笠原沢
13時50分,休憩を終えて,また,エボシ沢から歩き出す.
暫くの間は,単調な登り坂が連続する.
14時24分,笠原沢の道標前を通過する.ここの標高は1900メートル.ヒエ平登山口からは3.5キロメートル,常念小屋までは後2.2キロメートル.エボシ沢から約150メートル登ったことになる.
14時40分,沢の畔で,第3回目の休憩を取る.
川向こうの右岸に,かなり急勾配の階段が2本見えている.
「どっちの階段を登るんですか…?」
とリーダーに伺う.回答は左側の階段を登るとのこと.
<笠取沢を通過> <河原で3回目の休憩>
(つづく)
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